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TS異世界転生姫プレイ  作者: farm太郎
第三章 ダンジョンに住まうモノ

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第72話:シャーロットと反省会

 セイラムとの戦いから数日後……。


「ドキドキ! 第一回反省か~い!」

「いえーい!」


 パン! と乾いた破裂音が響く。

 この日のために作ってもらった特性クラッカーをトリシェルと二人で鳴らして、会の開始を告げたのだ。

 場所はトリシェルの部屋。もはや馴染みがある部屋の中に、色紙の帯が舞う。


「……なんだこれは」


 そして、リヴェンはそれを乾いた目で見ている。


「これですか? これはクラッカーと言って、工房に特注で作ってもらいました!」

「シャーロットちゃんの意見を聞いて、私が作らせました」

「違う、そういうことを聞いているんじゃない」


 そう? この世界ではこういうパーティーグッズ見たことないから、構想を伝えて作ってもらった特注品なんだけれど。

 あっ、因みに需要はあるとは思わないけど、発想とかはきちんと売りに出しました。ちょっとだけお金稼ぎになったよ。


「この場は何だと聞いている」

「これは詰問会です」

「なんだと?」

「私が何とかすると言ったのに! どうして二人してセイラムのところに行ってるんですか!」


 そう、これは二人に反省させるための会なのだ……!

 そんな信用無いかなぁ、俺。まあ、ないか。ないな。

 だからと言って、何とかすると見栄切って、いざ準備整ったと思ったらあの惨状だからな。俺だって色々と言いたいことはある。

 俺を待ってくれてれば、俺の命を脅しに上手く行ってたと思うんだよなぁ。


 そんな風に思っていたけれど、どうやら二人の意見は違うらしい。

 リヴェンはもちろん、トリシェルでさえも怪訝な視線を俺へ向けている。


「それに関しては言いたいことがある」

「んー、今回はシャーロットちゃんの味方できないかな、ごめんね」

「え?」


 なんかさらっと見捨てられた?


「聞いたぞ。失血呪を刻んだんだとな」

「は、はい。一番確実な方法がこれだと――」

「馬鹿野郎がっ!」


 部屋全体が揺れたかのような怒鳴り声。

 予想していたトリシェルは耳を塞いでいたけれど、俺はもろに喰らってしまう。


「お前は何を考えている? 失血呪の主人設定をすり替えられたらどうするつもりだった?」

「そ、それはそうならないように対策はきちんと――」

「万が一もなかったと? 確実に十全に紛れもあり得なかったと?」

「……はい、ごめんなさい」


 圧が、圧が凄い。怒ってますって言うアピールではなく、本気で怒ってる。


「裏に行っていたそうだな」

「はい」

「向こうの連中がお前を利用しようと企んでいたらどうするつもりだった?」

「それは、そうとはならないように細心の注意を――」

「払っていたと? 本当にか?」

「…………」


 何も言えない。

 俺としては万全の準備をして、交渉も十全を喫していたつもりだけれど。

 リヴェンの視点から見れば、穴だらけだった可能性も否めない。だって、こいつは俺よりも頭がいいから。俺が見えてないことも見えてそうだし。

 くそうくそう。ハラスメントですよこれは。個人事業主だからどうしようもないけれども。


「一歩間違えれば、お前が誰かの言いなりになっていた可能性も考えるんだ。どれだけリスクの高い選択肢を選んだのか、理解したか?」

「……はい」


 あれ、なんかリヴェンたちを責めようと思って開催した会なのに、俺が責められてないか?

 おかしいな、こんなつもりではなかったんだけれど。


「俺たちの敗北条件はお前の身柄を向こうに確保されることだったんだから、お前が一人で迂闊な真似をするのがどれだけ危険な事か……」

「わかりました! わかりましたよ!」


 これ無理やり流れを変えないと一生責め続けられる!

 なんかはじき返せる要素ないか、ないか、考えろ考えろ考えろ!

 あっ! そうだ!


「というか、リヴェンはなんであの状況で自分の首を切ったんですか!」

「む」

「あれ、血の気が引いたんですからね!」


 そう、セイラムに人質に取られたとき。なんで自分の首を自ら切るだなんて凶行に及んだのか。

 考えてみたけれど、やっぱりわからなかった。


「あれはあれが一番勝算があっての事と判断してだ」

「勝算?」

「ああ。状況を整理してやろう」


 そして淡々としたリヴェンの説明が始まった。

 曰く、状況から判断して、こいつをあの状況で即座に殺さない理由が思い浮かばない。よって、殺したらまずい、あるいは生かしておくことに理由があると考えられる。

 つまり、人質だ。リヴェンを人質として使って効果的に働きそうな相手は? トリシェル相手はそんな意味がないだろう。なら、俺だ。俺の気配はある程度分かったので、それを踏まえて確証を得たとのこと。


 俺がいるなら回復役がいる。セイラムの性格を考えれば、予想外の行動をされれば冷静ではいられない……などなど。

 それっぽい理屈をいっぱい並び建てられて、正直俺はよくわからない。何か最終的にこいつの判断が正しかったんじゃないかって気持ちにさせられる。

 いや、でも、違うだろ! 正しいとかじゃなくてさ!


「心配、したんですよ……」

「うっ」

「私、心配して、ボロボロだったのに、いきなり目の前で、死ぬんじゃないかってなって。怖かったのに……」


 あっ、思い返したらちょっと涙出てきた。

 あの時本当に何が起こったのかわからなくなって、頭の中が真っ白になって。

 どうすればいいかわからなくなった結果、全部の怒りの矛先がセイラムへ向いたんだよなぁ。

 八つ当たりみたいになってちょっと申し訳なかったな。


「あーあ。泣かせたー。リヴェンがシャーロットちゃん泣かせたー」

「ぐっ……」


 すかさず煽りに行くトリシェル。ずっと黙っていたと思ったら、こいつはどっちの味方なんだ?


「……いきなりの判断だったのは悪かったさ。だが、相談している余裕はなかったのは理解してくれ」

「それは、わかりますけどぉ」

「ええい! 泣くな! わかった、二度と同じことはしない!」


 あっ、やった。なんか言質取れた。ラッキー。


「まあまあ、ここは両者至らないところがあったってことで、痛み分けにしとかない?」

「……不服ではあるが、わかった。受け入れよう」

「なーにが不服なのさー。まとめてくれてありがとうじゃないのー? ほらほらー?」


 なんか、弟に絡む姉みたいな距離感だな。

 仲良いみたいで何より! 正直俺が離れた後一番不安だったのはこいつらが仲良くするかだったんだよな。

 今の様子見てると、俺がいない間も上手くやってたんだろう。良かった良かった。

 順調に二人は仲良くなってきているな。最初の頃に比べれば素晴らしい進歩だ。


「ふふっ」


 思わず嬉しくて笑ってしまう。

 ……ん? なんか静かになったな。何だろう。

 目を開けてみると、二人してこっちを見てきていた。じっと見つめられて、なんだなんだ。


「……なんか、シャーロットちゃんまた綺麗になったね」

「え? そ、そうですか?」

「うん。雰囲気が凄い変わったわけじゃないんだけれど、笑った瞬間凄い部屋の雰囲気が明るくなったっていうか……」


 うーん? 何が言いたいのかよくわからない。

 何だろう、特に思い当たる節もない。別にいつものだもんな。

 特別な何かを使ってるわけではない。化粧とかも今日はしてないし。

 心当たりがあるとすればクラッカーぐらい? あり得ない話。


「ねぇ、君もそう思うでしょ?」

「むう!?」

「うわ、キラーパス」


 そういうの急に男の人に振るのやめなー。

 コメントしづらいよ。マジでしづらいよ。クラスの陽キャ女子に絡まれたときマジで困ったもん。下手な受け答えしたら散々言われるし、本当に困る。

 リヴェンもほら、困って……ん?


「……まあ、可愛かったんじゃ、ないか?」


 ……んん?

 リヴェンが、俺の見た目を褒めた?

 この男が?


「トリシェル! 連盟に緊急で連絡してください! 明日は槍が降りますよ!」

「おい、それは俺に対して失礼じゃないか」

「だって! 女の子なんて全部同じ見た目してるだろって顔してるのに!」

「お前俺の事をそんな風に思ってたのか?」


 あっ、やべ。言わなくていいこと言っちゃった。

 トリシェルもあーあみたいなリアクションしてる!

 見捨てないで!


「……もう少しばかり、お前とはじっくり話し合う必要性がありそうだな」

「あっ、待って。そういうのやめましょう? ほら、なんだかんだ一段落ついたんですから」

「んー。私もちょっとシャーロットちゃんは話し合いに応じる必要があると思うなーって」

「トリシェルまで! れ、レイナード! レイナード! 助けて! あなたのとこのクラン員が虐める!」

「レイナードはロザリンドにつけられた傷を治すためにまだ不在だよ。ふはは、諦めてお縄につくんだシャーロットちゃん」


 急いで逃げようとしても、即座に腕を掴まれる。

 笑顔が、笑顔が怖いよトリシェル。

 リヴェンも! お前そんなわかるように笑ったりしないじゃん!


 あ、やめ、あ、やめ。

 やだーっ!

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