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TS異世界転生姫プレイ  作者: farm太郎
第二章 ロザリンドの魔手

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第38話:シャーロットと協力者たち

「あっ。あれじゃないですか? 凄い人が集まってますよ」

「ああ、そのようだな。あの金髪が見える。あれだけの人数に囲まれているとは、この町における冒険者、ひいてはダンジョンの重要度がわかるような集い方だな」


 交流用ホールに移動し、さっそく俺たちはレイナードを見つけた。

 正確に言えば、俺には人ごみしか見えない。リヴェンぐらい視点が高いと、人ごみの向こうが見えるらしい。

 ぐぬぬ……。


「で、どうします?」

「どうするもなにも、話しかけに行くしかないだろう」

「えぇ、ちょっと近づきがたいんですが」


 偉い人たちが話してるところでしょ? 話題の途中ですみませんが~、って言って入ってくの? やだよ怖いよ。下手に目を付けられてこの町にいられなくなるのだけはごめんだからな!

 ただ、リヴェンは俺と違って及び腰ではなさそうだ。普通にあの中に突っ込んでいきそう。

 流石にそれは棘が立ちすぎるんじゃないかと止めようとして……。


「俺は行くぞ」

「私は来たよ」

「ひゃあ!」


 いきなり耳元で声がする。心臓が飛び跳ねた。

 驚きのままに振り返ると、そこにはよく見知った顔があった。トリシェルだ。

 まったく何の気配もしなかった。他のところに集中している時に、いきなり耳元で囁くのはやめて欲しい。本当に心臓に悪い。

 

「びっくりした?」

「びっくりしましたよ、ええ。本当にやめてくださいね今度から」

「あはは、気を付けるね~」


 こいつ……っ。

 まあ、いいや。トリシェルが来てくれたなら、こいつを通じてレイナードに連絡すればいい。手間が省けたと思おう。


「トリシェル。ちょっとレイナード連れ出してきてくれません?」

「んー? ああ、ちょっと今忙しそうだね」

「あいつらは何を話しているんだ?」

「んー、今はオークションへ向けて味方を増やしてるところかな。刀、欲しいんでしょ?」


 トリシェルの言葉に、リヴェンが反応する。


「何?」

「根回しってやつだよ。交換条件とか、今後の繋がりとかをネタに味方を増やしてるのさ」

「えっ。レイナードってそういう器用な事できたんですね」

「あはは。前のパーティではそこらへんさっぱりだったらしいからね。頑張って勉強してたみたいだよ?」


 【緋色の剣】時代では、あんなに騙されまくって偽の依頼とか問題がある依頼とかつかまされてた男が、そんなことを……。

 ごめん。ちょっと感動しそう。

 でも、冷静に考えるとこれで生まれた損って俺に降りかかるんだよな。後払いシステムだし。

 ごめん、ちょっと泣きそう。

 いいけどさ! 別に!


「あっ。こっちに気が付いたみたいだよ? 話を切り上げたみたい」

「え? もしかしてやり取り聞こえてるんですか。この状況で?」


 ホールには大勢集まっていて、レイナードのところ以外にもたまり場が生まれている。

 それらが皆が皆話しているものだから、俺の耳にはごちゃごちゃとした断片的な情報しか入ってこない。それでも聞き取れるものは聞き取っているけど、有用そうなものは何もない。

 というか、レイナードのところとは少し距離もあるから何話してるかなんてわかるわけがない。


「大多数の中で特定の声を聞き分けるのは基本だろう。何を言っている」

「そうそう。できないとこれ以上の仕事は難しいよ~。私はそこまで耳がよくないから、唇見てるだけだけど」

「まさかの読唇術!?」


 何なのこいつら。俺みたいな一般人をお前らみたいなびっくりどっきり人間と一緒にしないでもらえます?

 ほらそこ、何を当然のことをみたいな顔して首を傾げない!


「やあ。来てたんだね。話しかけてくれればよかったのに」

「いや、私に人の壁を超えることを要求しないでくださいよ。無理ですって」

「あはは。シャーロットはそういうのは気にしないかと思ってたよ」

「いや、私はいつだって自分が大切ですよ?」

「ははは」


 おい、なんだその笑いは。

 俺が自己保身をいつもしてるっていうのがそんなにおかしいか。


「ほう、そちらが噂の子ですかな?」


 ふと、レイナードの後ろから出てきた初老の男性が俺に話しかけてくる。うお、結構身長高いな。百八十ぐらいはありそうだ。

 先ほどまでレイナードと会話してた人たちのうちの一人だろう。レイナードはこちらに来たが、集まりは解散したわけではなく、一部の人はそのままレイナードについてきていた。


「ええ。彼女がシャーロットです」

「はじめまして、シャーロット。かの高名な幸運の女神に会えるとは光栄です」

「あ? え? こちらこそ、はじめまして?」


 握手を求められたので、何も考えず手を差し出して握手を交わす。

 にこやかに笑いかけられる。

 裏がある笑みだ。ちょっと怖いけど、ぎこちないながら笑い返すことはできた。


「……おい、レイナード」

「リヴェン、君が言いたいことはわかる。でも、この人たちは今回協力者になってくれたんだから、無下にしてはいけないよ」

「協力者だと? どっちのだ?」

「どっちも、だね」


 どっちも?

 握手を交わした手はそのままで、再度目の前の男性を見る。

 にこやかに笑っているその眼は、こちらを見定めるように仄かに光っている。


「我々は彼とは長い付き合いでしてね、今のクランを立ち上げる前からの付き合いなのですよ」


 そんな期間も? てことは、崩壊騒ぎがあった少し後ぐらいにはもうレイナードに接触してたのか。


「彼とはよくしてもらってましてね。その彼直々の頼みだというではありませんか。受けないわけにはいかないでしょう?」

「そう言って、シャーロットに顔を売るのが目的なんだろう? 前々から興味を示してたじゃないか」

「ははは。噂の新進気鋭パーティーを崩壊させた御仁がどのような方か、下世話ですが興味があっただけですよ」

「それは何度も言うけれど、彼女のせいではないと――」

「ええ、ええ。わかってますとも。ですが、噂に違わぬ見目麗しさですな」


 【緋色の剣】崩壊の詳細まで知られているのか。情報には通じているみたいだ。 

 少し怖さはあるけれど、情報通が味方になってくるのなら心強い。

 ところで、この握手はいつまでしていればいいだろう。そろそろ手が疲れてきたんだけど。


「具体的には何をしてくれるというんだ」

「そうですね。まずは、オークションの根回しで我々はあなたに協力します。具体的には、我々の仲間うちで、価格のつり上げと最終値の打ち合わせをしましょう」


 ふむ? どういうことだろうか?


「オークションというのは集団戦もできるのですよ。より多くの人々が欲しがれば、大してほしくもない人物はそれだけで手を引くというものです。つまり、形だけでも多くの人々が価格を吊り上げるふりをすれば、結果的に安く競り落とすことも可能になります」

「……なるほどな。理解した」

「事前に限度額を教えていただく必要はありますがね。ああ、もしも必要ならば先行投資としてお金を融通することも考えておりますよ?」


 なんと!? 金の貸し借りまでしてくれるとは、相当破格の提案だ。

 流れ者の俺らに金を貸すのは、明日にでも町を出て行方が追えなくなるリスクがある非常に危険な行為だ。それをしてくれるというのは、随分とレイナードは信頼されているらしい。


「いや、申し出はありがたいが、それはやめておこう」

「ふふふ、賢明ですね。わかりました、では限度額を後で彼に伝えておいてください。我々のうちで信用できるうちで共有し、その範囲内での競り落としを狙いましょう」


 なぜ断るのか。と思ったが、すぐに当然だと気づく。

 前借ほど怖いものはない。特に、今日あったばかりの相手に借りるのは恐ろしい。後で何を要求されるのかわかったものじゃない。

 レイナードとの付き合いという事で一定の信用はあるけれど、それだけなのだ。


「それで、どっちもと言う事なら調査にも手伝ってくれるという事か」

「そうだね。正直、僕たちより彼らの方が歩ける範囲が広いんだよ」

「連盟も、冒険者の皆さまより我々の方が融通を利かせてくれることでしょう。出資者特権ですな。探るのは任せてください」


 確かに。一見部外者の彼らの方が向こう側に悟られる心配も薄いか。


「悟られるなよ?」

「ははは、腹芸の一つもできなければこの場にはいられませんよ」

「そのようだな。揃いも揃って信用ならない目をしている」

「誉め言葉として受け取っておきましょう」


 これはこれは……中々に心強そうだ。

 レイナードもこんな人たちと付き合いがあるだなんて、いや、きっといつもの人たらしを発動させただけなんだろうな。深いことは何も考えてないだろう。

 ……ところで、あの。


「そろそろ手を放していただくことって、できますかね……?」

「おおっと! これは失礼しました。つい、先に幸あれとあやかろうとしてしまいました」

「ははは、はは」


 こうなると笑うしかない。どこまで広がってるんだろう、俺の幸運の女神説。


「おっと、楽しい話をしていると時間はあっという間に過ぎてしまいますね」

「うん? 本当だ、そろそろオークション開催の時間だね」


 おっと。そんな時間か。

 結局レイナード本人から情報は聞けなかったけれど、この場で言わないということは緊急性が高いことは何もなかったという事だろう。

 一旦オークションを終わらせてから、続きかな?


「うーん。まあ今日は大丈夫だと思うよ?」

「うん? どういう意味ですかトリシェル」

「ちょっとね。色々と細工して、大規模魔法使おうとしたら感知できる様にしたんだ。今のところ予兆はないから、多分大丈夫って話」


 ……んん?


「ああ、魔道具だよ。ちょっと埃被ってて使えそうなものを持ってきたんだ」

「あー、なるほど。どういう魔道具なんですか?」

「周辺の魔力量を感知するだけの魔道具だよ。儀式魔法の類は、準備自体に結構な魔力が必要だからね。何かあれば反応するはずだよ」


 なんだ、そういう事か。びっくりした。こいつも魔法を新しく開発する類の変人かと思った。

 魔道具。魔道具かぁ。俺も幾つか身につけてきたけれど、これらが役に立つのかさっぱりわからない。

 首飾りに指輪だから、ちょっとしたアクセサリー程度。効果もさほどのものではないから、皆に見逃されてるぐらいのものだ。


 ……トリシェルは気づいてて口にしてなさそうだけど、リヴェンとレイナードは全く気づいてなさそうだな。気持ちはわかるけれどさ。


 まあ、いいや。不満は終わったあとにしよう。

 とりあえずオークション二日目だ。せっかくだから、楽しんでいこう。


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