もし、明智光秀が秀吉の援軍に向かったら? 54 北国編
さすがにもう一度同規模の戦いをおこなってしまった場合、大軍による城攻めを防ぐ手立てはなくなる。
計画されていたさらなる全軍での夜襲は中止した上杉軍であったが、まだまだ包囲は完了していないため、物資はそれなりに入り、間者は続々と情報を持参する。
そして、そのひとつは恐れていたことを伝えるものだった。
信長、信忠親子が率いる織田本隊が安土から越前へ進軍を開始した。
この時点で毛利が領国の大部分を渡し織田に臣従した情報や、その毛利が秀吉の軍とともに四国討伐に参加していることも景勝の耳に届いている。
当然上杉も領国を大幅に割譲したうえ織田に降伏するという選択肢もなくはない。
だが、名門というプライドが景勝の足を縛る。
最後まで戦う。
景勝は家臣の前で改めてその宣言する。
もっともこの時点で上杉側の降伏が認められるかといえば、厳しいと言わざるを得ないのも事実。
すでに越後西部は占領され北部も信長の要請を受けた芦名軍の侵攻とともに形勢は大きく傾き、最初の侵攻は撥ね退けた上野との国境での戦いも周辺の地理に詳しい真田昌幸が加わったことにより防御ラインはは破綻、滝川軍は越後になだれ込んでいた。
つまり、割譲しようにもその地がない。
そうなれば差し出せる者は景勝や重臣たちの首。
もちろん今なら少人数で落ち延びることは可能ではあるが、どこにという問題があるうえ、ここでも名門上杉というプライドが邪魔をする。
落ち武者狩りになど遭うわけにいかない。
そうであれば、最後まで戦うのみ。
最終決定となる。




