エデンの雫
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
銀貨三十枚って、今のレートだとどれぐらいなのでしょう? でも絶対、千円では無いですよね。
宗教上に置いて、盲目的なまでに見返りのない崇拝を行う者を、狂信者と定義する。だが何も狂信者というのは、宗教だけに留まらない。人であったり、物であったり、様々ではある。
そして彼奴はとある純喫茶の狂信者であった。
――好みの合わない子をあの場所に連れていく訳にはいかない。
――出す物は常に完全無欠。落ち度を感じるなら此方に非がある。
――私自身が認知される事自体、おこがましい。神が下々の人間を区別するはずが無い。故にただ、有象無象の一人として、あの場所に訪れたい。
今まで様々な純喫茶の案内をしてくれた。何処も店内で熱く語る事はせず、ただ背筋を伸ばして、洋菓子と珈琲を嗜む。何時も瞳も言動も穏やかだった。それは聖母とさえ感じる程。
そうして両手で数える程の店に連れ出して、通い詰めた後、彼女はとある喫茶店へと導いた。
「……初めて来るな」
「ん……うん。君とは好みが合いそうだったからね」
俺の不安を他所に、彼女はにこやかに返す。そうして地下聖堂へと続く、赤い、赤い階段をただゆっくりと降りたった。慎ましやかな会話が音を重ね、一つの旋律を生み出す。
そうして席に案内されると、彼女の目が変わった。今のこの光景を焼き付ける様に、瞳が爛々と輝き出す。それは夜に輝く星よりも、獲物を見付けた飢獣に近かった。
注文時、それは一時也を潜め、ただ恍惚とした光を宿す。信者が神を崇める様に。そして口は品名を歌う。祈りを唱える様に。
この時、彼女が真っ当では無いことに気が付いた。彼女が行っているのはただの信仰ではなく、狂信なのだと。自らの全てを差し出すつもりで、この場所を崇めているのだと。
そうして内心怯えていると、願いの品が目の前に出された。彼女はただ何も言わず、鼻先までカップを近付ける。其れから黙って浅く口を付けると、静かに啜る。
その時の、その表情、その空気、今までの彼女ではなかった。
僅かに口角が上がった口元、世界を知る為に閉ざされた眼、其れに再度変化が訪れる時、聖母の表情はそこになかった。居たのはただただ、その味に狂う、獣だった。
「……エデンの園は善悪の基準さえないの。だから今の私なら、きっと還る事ができる。けれども支払う対価は銀貨三十枚にさえ及ばない。余りにも安すぎる」
あぁ、今の彼女なら、神の為に神を裏切れるのだろう。それ程までの狂信者。
「……世界を買い上げる為に、それでは余りに安すぎる」
「その通り、その通りなのよ。あぁ、余りに慈悲深い」
あとがきまでお読みの方が、どれ程いらっしゃるかは分かりません。
ただ変わり者という印象は持たれている事でしょう。
人間、普段は平常ですけれど、ある限界を突破すると、何処までもおかしくなれるんですよね。
精神の限界超えて、メンヘラとかヤンデレになるのと同じです。
真っ当な方々は、極致に行ってないだけです。
ここからはキリスト教にわかがお話するので、信者の方々は流していただけると。
今回の子は珈琲に味覚の概念を壊された子の話。
神と崇める程の味だからこそ、人間性を捨て去ってます。
だから既に人間じゃなくて、獣なんです。
狂信者とは、果たして何処まで人と言えるのか。
という私の疑問。
なんでもエデンの園は善悪の基準がないそうで。
そうしてこの珈琲は、それを曖昧に出来ます。
良いも悪いも分からない。
教祖様を売った裏切り者さえも、銀貨三十枚支払ってる。けれども私が出した金額は其れに遠く及ばない。
天国見せる為の対価が、余りにも安すぎる。
俗な言い方すると
この一杯飲んだら、天国見えちゃうよね〜。
でもそれにしては安すぎだよ〜。
これを作った神様はまじで優しい。
となります。