マインド伯爵夫人の変化
そんな日々が難なく続いていくはず、だったのだが。
私は目に見えて疲れていた。
理由は寝不足だからだ。
前世の王子妃教育に比べたら厳しいが、そこまでは疲れないはずだ。
じゃあ何故かって?
マインド伯爵夫人が全然私の王太子妃教育に力を入れないのが原因だ。
王妃様がほとんど顔を出さなくなってから、日に日に授業の質が悪くなった。
テストは、範囲の部分を教えられてから復習してやる。それが普通のはずだ。
それなのに、マインド伯爵夫人はテストの範囲だけ教え、内容を教えるの工程を
すっぽ抜かすのよ!!
正直、うろ覚えな部分がほとんどなので、教えてくれなくては困る。
何故教えてくれないのかと理由を聞いてみたら、
『未来の王妃たるもの、これくらい教えなくても自分で予習すれば出来ます
よね?まさか、出来ないんですか?これでは失格ですね。私の娘ならばこれくらい
簡単に出来ますよ』
と、言われてしまった。
全くもって酷すぎる。
誰だって最初は教わらなければ出来ないだろう。
でも、私だってプライドというものがある。
失格と言われてはそう言えないようにするために、必死に寝る間も惜しんで、
勉強(範囲の本探しと予習)をした。
おかげで、テストなどの成績は良いままだ。
だけど、私の体調は悪くなっていった。
殿下にも元気がないと度々心配されるが、大丈夫ですと言ってはぐらかした。
流石にそろそろ限界がきそうだなぁ。
最近、たまに目眩や立ちくらみがくる。
授業中に起こる度に、マインド伯爵夫人が持参している棒で身体を叩かれる。
罰だのなんだの言っているけど、大体こうなっている理由は全部あんたの教え方が
悪いせいだからな?あと、さりげなく娘の自慢すんな?
お前の娘、私より5つ歳上の15歳なんだから当たり前だろ。
負のオンパレードが毎日続いている。
そんな私の唯一の救いは、ジェラルド様や家の皆と話す時間と、寝るときに
使っているぬいぐるみだ。
けれども、私は心身共に疲れ果てていた。(主に寝不足と体罰で)
そんなある日、いつものように王太子妃教育を受ける部屋に行くために王城を歩い
ていたら、ジェラルド様とばったり会った。
「ごきげんよう、ジェラルド様」
「ああ。そうだな、ルリアナ。最近、やけに元気がないし、疲れていそうだが
大丈夫なのか?」
私はなるべく疲れを見せないように、ガッツポーズをとって言った。
「はい、全然大丈夫です。すごく元気なので、気にしないでください。それより、
ジェラルド様こそ大丈夫なのですか?」
「ああ、大丈夫だ。ルリアナの元気がないのは杞憂だということだな」
「はい。きっと気のせいです。気のせいで、、す、、、よ、、、」
気のせいだと言っている途中で、目眩がした。
「ルリアナっ!!」
ジェラルド様が叫ぶのが聞こえた。
身体が傾いていく感覚がする。
あ、これはガチであかんヤツや。
そう思っても、重い身体は素直にいうことを聞かず、傾いていく。
地面にぶつかるかと思ったら、ジェラルド様が寸前で支えてくれたらしい。
「ルリアナ!大丈夫か!やはり、無理をして、、、」
ああ、ジェラルド様、お願いだから、そんな悲しそうな顔をしないで?
私に何かを言う彼の腕の中で、そんなことを思いながら、私の意識は途切れた。
誤字報告、感想、いつでも受け付けています!
下の星もできれば入れてもらいたいです。