謁見の間
お父様にジェラルド様との婚約を承諾されてから2日がたった。
今日は初めての王太子妃教育の日だ。
私はこの後、登城したら謁見の間に行く予定らしい。
まあ、第一王子と婚約したのだから、ご挨拶は当たり前だろう。
王城に着くと、ジェラルド様が待っていた。
「やあ、一昨日ぶりだね」
「そうですね」
「さあ、父上と母上が待っている。エスコートするよ」
「ありがとうございます。ジェラルド様」
ギイ、と扉が開く。
真ん中まで歩き、頭を下げる。
「頭を上げよ」
ジェラルド様よりやや低い声が聞こえて、頭を上げると、国王陛下がいた。
その隣には、王妃様がいた。
「ブルームーン公爵家長女、ルリアナ・ブルームーンでございます」
「謁見の間とはいえ、一応非公式だ。楽にしてよい。我が息子の婚約者に
なってくれて感謝するよ、ルリアナ嬢」
「そうそう。女の子なんて全然興味がないっていう感じだったのに、どうして
ルリアナ嬢を選んだの?」
え、その話、今ここでする必要ある?
「私にはルリアナ嬢の兄のレオナルドが側近にいます。レオナルドはルリアナ嬢
のことが好きなので、婚約すれば悔しがる顔が見れるのかなと思いました」
うん。知ってた。
「それと、私が単純に興味を持ったからです」
「え」
そんなこと言ってたっけ?
「あれ、伝えたはずだが」
「そ、そうですか」
記憶を遡ると、確かにそれっぽいことを言っていた。
「そういえば、第二王子殿下の婚約者は決まったのですか?」
「ああ、決まったよ。確かエフィリン伯爵家のクローディア嬢だったかな」
「ルリアナ嬢と同い年よ」
クローディア?
ああ、前世でも第二王子のことが好きだった人ね。
なので、私のことを勝手に敵視してた記憶がある。
何もしてないのに。
「仲良くできたら嬉しいです」
「近々顔合わせがあるから、会えると思うぞ」
ふいに、王妃様が私を見た。
「ルリアナ嬢、今日から王太子妃教育が始まります。少しだけですけど、私も教育に参加
するので、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「ええ。では早速、教育を受ける部屋に案内しますので、ついてきてください」
「分かりました。ジェラルド様、エスコートありがとうございました」
「どういたしまして。行ってらっしゃい、ルリアナ」
「はい。行ってきます」
そういう会話をして、私は王妃様と共に謁見の間を出て、部屋に向かうのだった。
……向かうはず、だったのだが,,,
「ジェラルドったら、ルリアナ嬢のことを名前呼び捨てしていたわよね!
もうそんな関係になっているの?ルリアナ嬢、好きな色は?ジェラルドのことを
どう思ってる!?」
まさか、質問攻めを受けるとは思っていなかった。