第一王子との婚約
すみません。遅れました。
「僕の婚約者になってくれませんか?」
「,,,,,,え?」
「なぜ、私などと?」
「君に興味が湧いたからだ」
「どこにですか」
ジェラルド様はそうだなぁ、と呟くと、
「君だけ僕達や他の家の子息に媚びを売らず、ただお菓子を楽しんでいたところ」
「!?見ていたのですか!」
「ああ、レオナルドから言われてな」
「そう、ですか」
まさか見られていたなんて、思いもしなかったわ。
でもお兄様に言われたのだったら納得だ。
第一王子との婚約は、人生をも左右する。
なぜなら、王妃となるからだ。
第一王子は、王位継承権が1位なので、王子とその婚約者のどちらも学園の卒業が
終わってから、結婚式を挙げる。そうして新しい王と王妃の出来上がりだ。
責任重大すぎる。
ジェラルド様の前世のイメージでは、いつも無表情で何を考えているのかが
全くをもって分からない、けどでも皆から慕われている、理解不能な王子。
という感じなのだ。
お兄様が側近をしていたが、話したことがあるのは、指で数えられるくらい。
そばにいれば、もっとジェラルド様のことを知れるのだろうか。
前世ではほとんど知らなかった、彼のことを。
「そうだ、僕との婚約、受ける?受けない?」
「ありがたく受けさせていただきます」
「そうか、それは良かった!これからよろしく、ルリアナ」
「はい第一王子殿下」
「あ、ジェラルドって呼んで?」
「ジェラルド様」
「まぁ、今はそれでいいや。公爵家には使いの者を出しておくよ」
私が乗る馬車までエスコートすると、そう言った。
「はい、お願いします。ジェラルド様」
「では、またね」
「ごきげんよう」
挨拶をしたら、馬車に乗った。
会釈をしてから、合図を出して馬車を走らせた。
疲れたわ。まさか、第一王子と婚約することになるなんて。
第二王子では無いだけましな方だ。
となると、これから王子妃教育ではなく王太子妃教育になるのね。
前世の王子妃教育は頭の中に入っているので、多分大丈夫だろう。
馬車を降りて、公爵邸に入る。
「お帰りなさいませ、ルリアナ様」
「ただいま、メリー。お父様はどこにいる?」
「旦那様でしたら、今は執務室にいます」
「分かったわ、ありがとう」
「どういたしまして」
コンコンと、扉を叩く。
少し間を置いてから、扉が開いた。
お父様が開けてくれた。
「おかえり、ルリアナ」
「ただいま戻りました、お父様」
「どうだ、楽しかったか?」
「はい、とても」
「そうか」
すると、コンコンと扉を叩く音がした。
「入れ」
「失礼します。王家から使いの者が来ました」
「分かった。応接室に案内しておけ。後で行く」
パタン、と扉が閉じた。
少しの沈黙の後、
「,,,ルリアナが関係してるのか?」
と聞かれたので、満面の笑みで
「はい!」
と答えた。