第八話:八岐大蛇がいるダンジョン
俺は今、ダンジョンへ向かっていた。
「……後少しでダンジョンに辿り着くな」
俺はそのままダンジョンへ向かった。
すると、目の前にオーク達がやってきた。
そのオークは、俺が知っているオークとは違って、俺の2倍の身長で、少しだけ牙が長いモリイノシシのような顔、頭にはシロイワヤギを思わせる短いツノが生え、体はゴリラを思わせるガッツリした体格とその筋肉、毛並みはクマに近い感じ、そして足と尻尾は足は日本で見かけるイノシシ(ニホンイノシシ)そのものだった。
「アレはオークか!?」
俺は武器を構えた。
しかし、オーク達はなぜか戦うどころか、何かを助けを求めている様子だった。
「ブヒブヒッ!」
「ブヒブヒッ!」
「ブヒブヒッ!」
「ブヒブヒッ!」
「な、なんだ?
何か様子がおかしいな」
すると、1匹の大きな体を持つイボイノシシを思わせる顔と長い牙を持ち、ゴリラのような腕で大きな棍棒を持つ個体のオークが俺の前にやってきた。
「オマエ、ニンゲンダロ?」
「しゃ、喋れるのか!?」
「スコシダケ」
なんとそのオークは喋れるようだ。
「オレ、オークキング……ナマエハナイケド、ココニイルナカマタチノリーダー!」
(キングってことは、この群れのリーダーってことか?)
「オマエ、タベモノヲモッテイルカ?」
「食べ物?」
「オレタチ、オナカペコペコ!
ヤツノセイデ、ホカノナカマモ、オークロードサマモ、シンデシマッテ、オレタチシカイナイ!
ソレニ、ニゲルタメノショクリョウガツキタ」
(なるほど、どうやらコイツらは八岐大蛇に襲われてしまったんだな)
「ダカラオネガイ!
タベモノチョウダイ!
コノママダト、ミンナシンジャウ!」
「……わかった。
ただし、俺に危害を加えないことを約束してくれるのなら、食べ物をやるよ!
だけど、そんなにないと思うから、ある分だけ食べてくれ!」
俺は、インベントリに保管してあったアイテムの中からまだ使っていなかった魔獣肉と怪鳥肉、妖虫肉などの魔物から入手した肉類を全部あげた。
すると……
「オニクダ!
ヒサシブリノオニクダ!」
「ブヒブヒッ!」
「ブヒブヒッ!」
「ブヒブヒッ!」
「ブヒブヒッ!」
無我夢中に食べ始めた。
「美味いか?」
「ウン、ウマイ!」
「そうか……それは良かった。
じゃあ、俺はもう行くからね!」
俺は立ち上がって、ダンジョンへ向かおうとすると、オークキングに呼び止められた。
「オイ、ニンゲン!」
「ん?」
「オレタチニタベモノ、アリガトウ!
オレ、コノオンヲワスレナイ!」
「……フッ、死ぬんじゃねーぞ。」
俺はそう言い残して去っていった。
それから程なくして、ようやく辿り着いた。
「……ここか。
まるで巨大な洞窟だな。
しかも洞窟内には所々に石でできた遺跡と思われる建造物もあるな。
ということは、これがそのダンジョンか」
俺はそう言いながらそこへ入った。
その頃、タツヒサを追っていたカミカゼは、飛びながらタツヒサを探していた。
「タツヒサ、どこへ消えた?
見失ってしまった」
どうやら見失ってしまったようだ。
「……ここから向こうにはあのダンジョンがあるはずだ。
タツヒサもそこへ向かっているかも知れぬ……早く見つけねば」
そしてダンジョンへ入った俺は、早速多くの魔物達に遭遇した。
「ゴブリン、インプ、サソリ、クモ、ゴキブリ、ネズミ、ゴーストに加えて、ヤモリ、ムカデ、ゲジゲジ、モグラ、コウモリ、スプリガン、スライム、そして石の姿をした魔物”ストーン”までいるのか……よし、ここはアレだな!」
俺は睨みつけて威圧して、魔物達を一瞬で気絶させた。
「悪いが、ここを通してもらうぞ。
俺は急いでるんでな」
そう言って、俺は奥へと進んだ。
(なんだろうなぁ……久しぶりにヤクザとしての血が騒いだのは……いや、そもそも俺は元々、あの親父の息子だからな。
あの豹狼組の組長であるあの親バカなアイツの血を持っているからなぁ)
俺はなぜかヤクザとしての血が騒ぎ始めた。
それはきっと、あの親父の血を持ってしまったからなぁ……
(思えば俺が生まれた日には、母が出産の時に力尽きて死んでしまったんだったな。
母が死んだ後、あのバカ親父は俺を大切にするべく、あの親バカになってしまったんだったな。
まるで、俺が泣かないようにするために……おもちゃを大量に買ったり、半年くらい旅行に連れてってもらったり、幼稚園に通い始めた頃からしっかりと組員達に護衛されていたよ。
特に若頭だった叔父貴はいつも俺のお迎えに来てくれたんだったなぁ……でも、叔父貴は俺が死ぬ数年前に起きた鬼獄組との抗争で、死んでしまったんだったけ?)
俺はヤクザの息子としての前世の記憶を思い出していた。
しかし、そのせいで無意識に威圧しまくって、自分に襲ってきた魔物達はだんだんと気絶していった。
「……アレ?
いつの間にか魔物全員倒れているな……まぁ、いっか!」
そしてダンジョン内へ進み続けた。
その途中で、宝箱を見つけたら、開けて、中に入っているアイテムを入手するようにした。
前のは既にヒナセが取り尽くしたからだから、全部開けっぱなしだった。
だが今回のダンジョンは、前の5倍もの大きさをしていたため、戦利品がめちゃくちゃ取れてしまった。
中には武器や防具などがあり、ある宝箱を開けた時には、明らかに強い武器と防具が手に入った。
「これは……」
それを手にした武器と防具のステータスが表示され、こう記されていた。
『毒剣』
ランク:B
攻撃力:212
耐久値:196
固有スキル:毒斬り、毒針
『毒除けの鎧』
ランク:B
防御力:179
耐久値:182
特性:毒耐性付与
『毒除けの兜』
ランク:B
防御力:164
耐久値:185
特性:毒耐性付与
『毒除けの盾』
ランク:B
防御力:201
耐久値:199
固有スキル:ポイズンシールド
『毒除けの靴』
ランク:B
速度:99
耐久値:123
特性:毒のギミック無効化
「毒関連の装備だな。
まぁ、ないよりはマシか!
八岐大蛇って確か、猛毒の息を吐きそうなイメージをしていたし、実際にゲームでも毒関連の攻撃をしていたからな!」
そう呟きながらそれらを装備した。
(……これなら、毒攻撃でも大丈夫そうだな!)
それからも宝箱を見つけたり、魔物を倒したりしているが、武器が強かったのもあったが、魔物を倒す時には必ず部屋ごと真っ二つとなって、周囲にいる魔物も瞬殺していった。
そしてそのまま進んでいって、最終的には奥の部屋へ辿り着いた。
「……ここが最終エリアになるのか?」
俺はそう呟いて、入ってみた。
するとそこには、大きな傷跡があった巨大な蛇の魔物……つまり、八岐大蛇がいた。
「……人間か。
わしに傷をつけたのも、貴様だな?」
「傷?
何の話ですか?」
「惚けるな……どこからか、大きな斬撃がやってきてなぁ……部屋はそれで真っ二つにされ、おかげでこのわしに深い傷を負わせた。
そんなことができるのは、たった今来たそこの人間、貴様しか考えられん。
まぁ、こんな傷などわしには痛くもないがな」
そう言いながら、再生スキルと思われる能力で、傷を綺麗に治した。
「再生した!?」
「それより、よくもわしの縄張りをめちゃくちゃにしおって……貴様を丸呑みするだけでは済まぬ。
わしが持つ最強の猛毒で貴様をその毒で苦しみ続けるが良い!」
その頃、ダンジョンの前に何人かの冒険者達がやってきた。
「ここか?
あの八岐大蛇がいるのは……」
「こんなデカい洞窟があるんだ。
しかも中には遺跡らしき建造物があるってことは、そこがダンジョンで間違いない」
「八岐大蛇って、俺らだけで倒せるのか!?」
「でも、あのルシファー様からの褒美のためだ!
夢のマイホームのためにな!」
「私、死ぬ覚悟ができました!」
「私も必死に戦う!
家族のために……」
すると、冒険者の前にククルカンが現れた。
そう、そのククルカンがカミカゼだった。
「な、なんだアレ!?」
「まさか、ククルカンなのか!?」
「なんで奴がここに!?
ま、まさか!?」
「人間ども、落ち着け。
余は野生の魔物ではない……タツヒサという人間との従魔契約を結んでおる。
汝らに危害を加えぬ」
「マジかよ!?」
「す、すげぇ……タツヒサっていう奴に会ってみてーよ!」
「彼奴は今、この中のどこかにいる。
おそらく、既に八岐大蛇の目の前におるかも知れぬ……汝らの実力では奴を倒すことはできぬ」
「そんなことはわかっているんだ!!」
「でも褒美のためだ!!」
「なんて愚かなことを……そのためにその命を無駄にするのか?」
「いいえ、違います!
ルシファー様がヒナセさんを通じて、八岐大蛇を討伐してくれたら、褒美として家をもらえることになっているんです!」
「家?」
カミカゼは俺が作った住宅街があることを思い出した。
「……そうか、あの場所のことか。
それなら話は別だ……約束を果たすことは約束する。
ただし、余からの条件に応じてもらう」
「条件?」
「な、なんでしょうか?」
「……八岐大蛇の討伐は余が引き受けよう。
その代わり、奴を外へ引き摺り出す策を手伝って欲しいのだ」
「引き摺り出す!?」
「それって、ダンジョンから追い出せってことか?」
「いかにも……余でもこのダンジョンには入れぬ」
「な、なるほど……」
「確かにその巨体だと……」
「入れないものですよね」
「……まぁ、八岐大蛇の死体から自由に素材などを剥ぎ取ってくれたら、それで良い。
それで金になるのなら、尚更……そして見事にここへ追い出してくれたら、望み通りに褒美となる家をくれてやる」
「……わかった。
その条件は飲んだ!」
「フッ、良かろう。
これで交渉は成立だ」
「よっしゃ!!
でも待てよ?」
「どうやって外へ引き摺り出したら良いんだ?」
「……言われてみれば確かに」
その時、何者かがやってきた。