第六話:国づくり開始
それから数日後、俺はルシファー、カミカゼ、シンナラ、レオライ、そして俺の城に住むことになった冒険者のヒナセと一緒に互いに助け合いながら暮らしていた。
しかし、ある日になって、ヒナセは城を見つめながら俺に話しかけた。
「こんなに立派な城があるのに、どうして国をつくろうとは思わないの?
ここは無法地帯なんだから、その気になれば、アンタのあのスキルで国を作ることだってできるのに……」
「うーん……でも俺、あんまりそういうのは興味ないかなぁ」
「そんなのもったいないよ!
それに元女王様だったルシファー様がおられます!
政治に自信がないのなら、ルシファー様に任せたら良いんです!」
「……どうしょうかなぁ……」
俺は正直、国とかつくる気になれなかった。
一応ルシファーから俺らが今いる無法地帯では村や町、そして国を勝手につくっても誰も言わないし、その気になれば国として独立することが可能だと教えてくれたが、俺的にはそれで充分だと思った。
だが、そんな俺の様子を見たルシファーは、俺とヒナセの前にやってきた。
「私はヒナセの言う通り、ここを国としてつくるべきだと思います。
こんな立派な城を持ち、しかもあなたには武器などが作れる創造スキルがあります。
それをフル活用しなければ、せっかくの異世界転生をした意味がありません。
平穏な生活を望むのなら、最初からそのスキルを持たなければいいと思います」
「ルシファー……」
「それに、ここには伝説の魔物であるククルカンがいます。
伝説の魔物は滅多に姿を見せないため、今でも伝説の魔物を討伐するためにその伝説の魔物を探している多くの冒険者だっています」
「場合によってはここが伝説の魔物がいるダンションと勘違いされて、襲撃されることだってあるわ!
伝説の魔物がその場所にいる時点でもその場所の近くにある国にとっては戦争以上の大きな脅威と見做しているからね!」
「まぁ、その伝説の魔物が既に従魔契約されていることについては知らない冒険者が多いからですね。
まぁ、ほとんどは全員返り打ちにしていますし、未だに伝説の魔物を倒した冒険者もいません。
寿命で死んだ伝説の魔物の死体を剥ぎ取って、それで高額に取引されることがあるため、探す価値があるのです。
中にはあなたと同じように伝説の魔物と従魔契約をしている王や皇帝がいて、自分の国をその伝説の魔物に守らせている国があります。
ですので、やはりここにククルカンがいるからには、誰から見ても国として認識してもらう必要があります」
「なるほど……」
「政治のことは元女王である私に任せてください」
「私は商人だから、商売ついでに入居者を募集してみるよ!
アンタが創造した武器や素材とかを売りに行く時にね」
「……わかった。
やってみる!」
こうして、俺はこの地で国を作ることを決めた。
魔物はカミカゼが一掃してくれるので、俺は魔物を気にせずに国をつくることにした。
ゴゴゴゴゴォッ!!!!
「汝らは余の敵ではない。
……消え去れ」
そして俺らの国の領土になる予定の場所にはシンナラとレオライが見張りをしてくれている。
「ガルルルッ!」
「ガルルルッ!」
シンナラとレオライの唸り声に近づいてきた魔物達は怯えて逃げ出してしまった。
そして俺は今、ルシファーとヒナセと一緒に外に出て、創造スキルで住宅街を作っていた。
「すごい……たったの数秒で住宅街ができるなんて……いや、どう見ても高級住宅街以上のレベルね」
「しかも家の中もしっかりと家具とかもありますね。
エーリュシオンですらこんな素晴らしい家はありませんからね」
「えっ?
そうなの?
エンジェル族っててっきり高級で美しい建物に住んでそうな感じだったのに」
「いいえ、意外と質素な家で暮らしていますよ。
なんなら人間族やエルフ族とかのレベルの質素さですね」
「そ、そうなんだ……」
「そもそもこの世界で高級住宅街が存在する国なんて、ごく僅かにしか存在しないからね!
仮に高級住宅街があるとむしろ盗賊などの金目当ての犯罪者の襲撃だってあるし、場合によっては戦争とかだったり、ドラゴンなどの大型の魔物の襲撃とかもあるんだからね!
高級な家がその襲撃で壊されるくらいなら、何度でも直せる質素な家の方がいいからね!
まぁ、そもそも家そのものが普通の冒険者が買える値段ではないけど!」
「家がないってことは、ソイツらはどうやって暮らしているの!?」
「基本的には冒険者や商人は旅をしながら暮らしているので、溜まったお金で宿に泊まって行くことが多いし、宿がないなら、野宿だってします。
家を持っている冒険者や商人などは、よっぽどの実力者だったり、王様などに認められた証として家をもらった者だったり、頑張ってお金を貯めてやっと購入できた者だけですね」
「なるほど……」
「家を手に入れて終わり……ではないからね!
税金とか生活費とかも払わないといけないからね!
実際に払えなくなって、差し押さえになった人だっているし、借金してまで払い続けている人だっているからね!」
「まぁ、借金したことが発覚すれば、強制的に差し押さえになって、自動的に奴隷にされてしまうことも……」
「借金しただけで奴隷に!?」
「それがこの世界での基本的なルールですね。
まぁ、中には奴隷にしない代わりに国から追放すると定められた法律を持つ国がありますけどね」
「マジか……」
「……そういえば、まだ法律は作っていませんでしたね。
まぁ、法律は私がつくっておきますが、もしもあなたが法律について何か良い案があれば教えてください」
「わ、わかった……」
そう言った後、ルシファーは城へ向かっていた。
「じゃあ私は、明日商人として仕事に行ってくるから、その時に声をかけてみるね!」
「そ、そうか……それは助かる」
「うん、任せて!
その代わり、いくつか作って欲しいものがあるけど、いけるかな?」
「何を作って欲しいんだ?」
「えっと……」
そう言って、ヒナセはメモ帳を取り出し、何かを書き始めた。
「これとこれと……確か武器とか素材とかも作れるって言ってたね。
まぁ、素材と言っても食べ物やお金、核、そして新たな生命が作れない……ん?
ねぇ、生命が作れないってことは、もしかして植物とかも作れないの?」
「うん、生き物は当然作れないけど、植物も作れないみたいだ」
俺は試しに植物を想像しながら創造してみた。
ところが……
『残念ながら植物の創造は不可能です』
というメッセージが表示された。
「……やっぱり植物も創造スキルの対象外だったか」
「そういうことか……まぁ、植物ってほら、種から育つからある意味生命を持った生き物かな?」
「確かに!
植物は無機物から有機物をつくる生物と言われているらしいから、流石に生物と判定されて創造スキルでは作れないってことになっているな!」
「そっか……」
そう言いながら、メモ帳に何かを書き続けて、それから数分後にメモ帳から紙をちぎって、それを俺に見せた。
「じゃあこれ、頼んだよ!」
そう言って、ヒナセも城へ入って行った。
そして俺はヒナセからもらった紙に書いてある内容を読んだ。
「……ったく、これは大変な作業になりそうだよ!」
そう苦笑いをしながら、その紙に書いてある通りに、あるものを創造した。