第四十話:フリースマイルの本拠地へ
ヴェルンドは全てを話した。
それを聞いて、全員驚いた。
「まさかあの伝説の鍛治師とフリースマイルにはそんな因縁があったとは……」
「やはりフリースマイルはただの宗教団体ではなかったか」
「これは取り締まり確定だな!」
聞いていたヴァルハラ騎士団の兵士達はヒソヒソとそんなことを話していた。
「まぁ、これがフリースマイルの正体だ。
既に俺のあのバカ息子はもう手遅れになっているがな」
ヴェルンドは切ない顔をしながら、ポケットから何かを出そうした。
しかし、ポケットから何も出なかった。
「……そうだった。
葉巻がねーんだった」
やはり葉巻を吸おうとしていた。
すると、先頭に立つ男が一本の葉巻を差し出した。
「これをお探しですか?
よかったら吸ってくれ。
いつも俺が吸っているものだ」
「……悪いな」
ヴェルンドはその葉巻を受け取ると、指パッチンして火をつけて吸い始めた。
フウッ!
「これがねーとな」
そして男は自己紹介をした。
「申し遅れた。
俺はヴァルハラ騎士団の団長フィアナだ。
よろしくな」
そしてフィアナは俺に向いた。
「そういやお前はなんて名前だ?」
「タツヒサです」
「タツヒサと言ったな?
是非とも我々もフリースマイルの調査を手伝わせて欲しい」
こうして、俺とヴェルンド、そしてフィアナ率いるヴァルハラ騎士団によるフリースマイルへの突撃をすることとなった。
そして夜になると、フリースマイルの本拠地と見られる巨大な建物に到着した。
フィアナは騎士団の兵士達に指示をした。
「いいか?
信者が我々の邪魔をするのなら、即刻捕縛せよ。
奴らは洗脳されたのと同じだ。
捕縛こそが信者達の洗脳を解き、そして救出する唯一の方法だ。
勿論、傷一つもつけるんじゃないぞ!」
その間、俺とヴェルンドは小声で作戦会議をした。
「信者どもはあの騎士団に任せてもらうが、バカ息子だけは俺が見つけてやる。
お前はアドレスを見つけてこい……」
「わかりました。
それでアドレスってのは……」
「清楚系の坊主頭の男だ。
見たらわかるが、まるで優しい善意のある僧侶に見えてしまうが、くれぐれも奴の優しさに騙されるなよ?」
「はい……」
一方その頃、長い話し合いが遂に終わった。
「ありがたきお言葉……カミカゼ様。
あなたが力になってくれるのなら、我々はいくらでもカミカゼ様の主人のタツヒサとルシファー様が収まる小さな国を支援しよう」
「うむ、これで話はまとまったな!」
「マーリン、私も改めて会議に参加して、共に打倒アンデット連合同盟を組むことを表明するとアーサー国王に伝えてくれ」
「うむ、承知した」
「……これで話がまとまったようだな。
約束通り、余が汝らの力になってやる代わりにタツヒサ殿への支援を頼む」
「あぁ、約束はちゃんと果たすだけだ」
「後は、伝説の鍛治師を上手く入国してくれたら、それでいいんじゃがな」
「さっき言ってた伝説の鍛治師か……自由すぎて、誰かに着いて行くことがないと聞いたことがある」
「タツヒサ殿なら大丈夫だろう……アーサー国王に認められ、娘のメローラ姫と婚約したほどだからな」
「メローラ姫?
確か無口で無表情の姫君だと聞いているぞ」
「いや、最近は笑顔が増えたぞい!
無口で無表情の姫様になられたのは、アンデット連合に弱味を握られておったんじゃが、タツヒサのおかげでその呪縛から解放され、元の性格に戻ったのじゃ!」
「それはめでたい話だな」
「じゃが、それがアンデット連合を潰すきっかけになったのじゃ」
すると、一人の兵士が慌てた様子で駆けつけてきた。
「何事だ?」
「陛下、申し上げます!
我らヴァルハラ騎士団は、本格的にフリースマイルの取り締まりを開始しました!」
その兵士もヴァルハラ騎士団の一人だった。
その報告を聞いたリンドルム国王はニヤリと笑った。
「そうか……やっと化けの皮を剥がすことができたか!
タツヒサ……でかした!」
「い、いえ……タツヒサが連れてきたあの鍛治師の証言で……」
それを聞いたリンドルム国王は驚いた。
「……何?
どういうことだ?」
「我々も知らなかったのですが、まさか彼にはフリースマイルとはそのような因縁があるとは……タツヒサが彼と一緒に行動しているところで、我々と合流を果たしたのです」
「……奇跡とでも言っておこうか?
いや、そうなる運命なのか?
よくわからんが、タツヒサもあの伝説の鍛治師にも報酬をやらねばならん。
ファアナにこう伝えよ……私も我が軍を引き連れて、フリースマイルの本拠地へ駆けつけるとな」
「へ、陛下?」
「詳しい話は後で聞くが、あの不気味な宗教団体に対し、私が直接解体処分を下してやる。
それ以上奴らの好きにさせるなよ?」
「ハッ!」
その間、俺達はフリースマイルの本拠地へ殴り込みに行った。
特にヴェルンドは血走った目で、自分の息子を探し出した。
「おいゴラァ!!!
30年ぶりに迎えに来たぞ大馬鹿野郎!!!
お前は情けない奴だ!!!
さっさと出てこい!!!
この俺が元に戻してやるぜ!!!」
そう叫びながらヴェルンドは走り続けた。
(うちの親父みたいだな……本当に親父はこんな感じだったよ)
その間、ヴァルハラ騎士団は着々と信者達を捕まえていた。
「ここは話し合いましょう!」
「私達は平和主義です!」
「お互いに笑顔になれば、わかりあえるはずです!」
信者達はそう訴えるが……
「心配するな。
お前らはとっくにその笑顔で全てがぶっ壊れてんだ」
「いい加減に目を覚ましな!」
「大人しくうちに来い!」
ヴァルハラ騎士団の兵士達は冷静に信者達を捕まえていた。
その間俺は襲撃されないように、時間を停止した状態で教祖のアドレスを探してみることにした。
しかし、全体が広すぎてどこから探したら良いのかもわからない。
あちらこちらの部屋を見ては何もなかった。
(まるでダンジョンみたいな広さだな……さっきのヴェルンドさんとの試練で少しだけ使ってしまったが、今の時点で止められる時間は、残り45分しかない。
早く見つけないと……)
探しているうちにとある部屋にたどり着いた。
その部屋を開けてみると、そこにはオレンジ色とピンク色の縞模様の傘と黒い柄が特徴の巨大キノコがあった。
その近くには何個かの小さな瓶があり、キノコの付近にはブラシがあった。
(ま、まさか……)
俺は思わずそのキノコのステータスを見てみることにした。
『スマイルッシュルーム』
分類:レア素材(レア度★★★★★)
入手先:アベレーションの洞窟ダンジョン
特徴:アベレーションでしか見ることがない珍しいキノコ。
実は極めて強烈な毒性があり、特に胞子を吸い込んでしまうと、筋肉に異常が起きて、思考が停止し、笑顔しかできなくなってしまう危険性がある。
しかも胞子には中毒性があり、一日に一回でも適切な量を吸い込まないと禁断症状が出てしまう。
危険性:★ ★ ★ ★ ★(MAX)
警告:キノコ全体が非常に強い毒性があり、特に胞子には中毒性を引き起こす危険性があり、胞子を所持しているだけでも逮捕される危険性があるので、危険物として慎重に取り扱ってください!
(ここまで詳しく教えてくれるとは……でもやっぱりそうか。
これがあのスマイルッシュルーム……ここで胞子を栽培していたとはな)
俺は決心して、スマイルッシュルームを引き抜いて、アイテムとして入手した。
「……よし、後はコイツをどっかに処分すればいいだけだ。
見た感じ、この1つだけのようだな。
他の部屋にもあるかもしれない……探してみよう!
勿論、時間を止めたままでな!」
俺はそのまま時間停止を継続して、探し続けた。
ところが……
バキッ!
「えっ!?」
パリーンッ!!!
なんと、あの時の八岐大蛇と同じように、勝手に時間停止スキルが解除されてしまった。
すると背後から……
「珍しいですね。
まさか本当に時間停止スキルを使う者がいるとは……」
振り返ると、そこには坊主頭の男がいた。
普通に健全で清楚な僧侶で、見た目は善意がありそうな優しそうな人物だった。
しかし、騙されてはいけない!
俺は思わず聞いてみた。
「もしかして、フリースマイルの教祖のアドレスですか?」
すると彼も俺に質問で返してきた。
「そういうあなたが、ククルカンを従魔にしたタツヒサさんですね?
サンゾロさんから聞いていますよ?」




