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第三十九話：スマイルッシュルーム

俺はヴェルンドからの条件として、”ヴェルンドと戦って倒す”を達成したことで、仲間になってくれた。

すると早速、ヴェルンドは俺に話しかけた。

「さてと、お前の剣が折れてしまい、せっかく作ったその盾が凹んでしまったな。

これじゃあ、まともに戦えねーだろうな。

相手はあのフリースマイルだからな」

「フリースマイルって、そんなに強いんですか？」

「さぁーな。

まともな連中じゃねーのは確かだ。

そこでだ……俺が鍛え直してやる。

それでいいよな？」

「いいんですか！？」

「あぁ、創造スキルってのは、本で読んだことがあるから知ってるんだが、食べ物、お金、核、新たな生命以外はなんでも作れる特殊なスキル。

この世界全体では僅か数人しかいないレアスキルの一つだ。

確かになんでも作れるのなら、鍛治スキルとかはいらねーとは思うかもしれねーが、実は意外にも大きな落とし穴があるんだ」

「落とし穴？」

「特に武器と防具はな」

「どういうことですか？」

「なんでも作れる代わりに性能がランダムになることだ。

一応他の素材を武器や防具に創造スキルで作り替えれば、その素材に反映されたより強いものがあるが、何も無い状態で作るのなら、ステータスが高くても、場合によっては壊れやすくて使い物にならない時がある。

そのため、創造スキルで作られた武器も防具も鍛え直す必要があるのだ」

「なるほど……」

「勿論、強化すればするほど、ランクも上がるし、素材によってはEランクからAランクまでに変化することもある。

つまり、俺が凹ませたその盾を大幅に強化してやることが可能だ！」

そう言いながら、なんといつの間にか鍛冶場が出現した。

「こ、これが鍛治スキルですか！？」

「あぁ、このスキルがあれば、いつでもどこでも好きな時だけ鍛治仕事ができんだ。

このスキルはマジで面白いからな！」

そう言って、ヴェルンドは鍛冶場に折れた毒剣と凹んだ俺の盾を置いた。

するとここで俺はあることを思いついた。

「あ、あの！

これも使ってください！」

そう言って、インベントリから使っていない毒除けの盾を取り出した。

「これは、毒剣と同じBランクのようだな？」

「ちなみにどちらも八岐大蛇がいるダンジョンで見つけました。

今も装備しているこの防具もそうです」

「なるほどな……わかった。

まぁ、本当は大金を請求するが、今回だけは特別に無料にしてやる。

その防具も脱ぎな」

俺は言われた通りに毒除けの鎧、毒除けの兜、毒除けの靴を脱いで、ヴェルンドに預けた。

「少し待ってな」

そう言うと、あのミスリルミョルニル(MAX)を握りしめた。

「さて、仕事の時間だぜ相棒！」

こうして俺はヴェルンドの鍛治仕事をこの目で見ることになった。

「この折れた毒剣は、毒蛇の王バジリスクの毒液、そして毒液を吸収する性質を持つ変わった金属“ポイアン”でできているようだな。

だがこれだけじゃあ弱すぎる……ダンジョンで見つかるBランクだから仕方ない。

ならば、コイツと相性のいいアレを入れてみるとするか」

そんな独り言を呟きながら黙々と作業をしていた。

やがて、夕方になった。

既に俺は待ちくたびれて、眠ってしまった。

すると……

「おい、起きろ！！！」

「！？」

ヴェルンドが大声で起こしてきた。

「もう完成したんですか？」

「あぁ、もう鍛冶場も片付けたしな！」

確かにさっきまであった鍛治場が消えていた。

そして俺に完成したものを渡した。

「ほれ、完成したぞ」

まるで生まれ変わった武器と防具を改めてステータスを見て確認した。

『オリハルコンポイズンソード』

ランク：S

攻撃力：1215

耐久値：915

固有スキル：毒斬り、毒針、ポイズンクロス

『強化された毒除けの鎧』

ランク：A

防御力：519

耐久値：360

特性：毒耐性付与

『強化された毒除けの兜』

ランク：A

防御力：610

耐久値：450

特性：毒耐性付与

『タツヒサの毒除け最強大盾』

ランク：S

防御力：1705

耐久値：1075

固有スキル：ポイズンシールド、大防御、バリア

『強化された毒除けの靴』

ランク：A

速度：495

耐久値：310

特性：毒のギミック無効化

「防具は単純に強化しただけだが、剣と盾には、Sランクの素材を使わせてもらった。

まぁ、盾は毒除けの盾とお前が創造スキルで作ったあの大盾を一つにしただけだがな」

「あ、ありがとうございます！」

「いいってことよ！

さてと、殴り込みでもするか！」

というわけで、フリースマイルの本拠地へ向かうことにした。

「あの……先ほど“ちょっとした因縁がある”と言いましたけど、フリースマイルのことを何かご存知なんですか？」

「あぁ、知ってるよ。

俺が教えてやるよ……あの宗教団体の正体をな」

「教えてくれるんですか？」

「あぁ、特にフリースマイルの教祖のアドレスって奴との因縁がな」

ヴェルンドは語り始めた。

「……結論から言えば、フリースマイルってのは、ただの宗教団体ではなく、アンデット連合幹部アドレスによる極秘に信者をアンデット連合のための傀儡兵士として洗脳する組織だ。

フリースマイルってのは、信者はニコニコと笑顔になって幸せを得る“幸せのための宗教”って奴だ。

何があっても笑顔で乗り越え、ずっと笑顔になることで永遠なる幸せをあることができるっていうのがフリースマイルの主な教えだ。

だが、実は真相は信者は全員、そもそも“笑顔しかできない体質”にされたんだ」

「！？」

「フッ、そう驚くよな。

まぁ、無理もないが、俺はその真実を全部知ってしまった。

俺のバカ息子がそっちにいてなぁ……俺は一回だけフリースマイルに乗り込んで、バカ息子を連れ出そうとした。

そしたらそこにアドレスが現れて、“彼は私達の大事な仲間です”とふざけたことを言って、そのまま追い出されたよ」

「じゃあ、その息子さんってまさか……」

「これは今から30年前の出来事だ。

既に洗脳済みなのかもなぁ……冒険者として活動していた息子は、このヴァルハラ国で行方不明になったと聞いてな」

「そんな……」

するとヴェルンドはポケットから粉が入った小さな瓶を取り出した。

「それはなんですか？」

「これがフリースマイルの信者達の笑顔の正体だ。

コイツはアベレーションっていう場所で取れる毒キノコ“スマイルッシュルーム”……これを口にすると筋肉に異常が起きて、思考が停止し、名前の通りに笑顔しかできなくなってしまう。

しかも中毒性があって、中にはわざわざアベレーションから持ち帰ったものを極秘に麻薬として栽培している奴もいる」

（麻薬……この世界にもあるんだな。

実際に麻薬で金を稼いでいる一部の暴力団がいるんだよね。

まぁ、ソイツらは俺が生まれる前に親父達に叩き潰したって聞いたことがある）

「特にこの粉はスマイルッシュルームから取れる胞子……これが一番中毒性が高く、一日に一回でもこの瓶に入っているこれを全部飲まないと禁断症状が出てしまうんだ。

今となっては危険アイテムかつ違法素材ってことで、持っているだけでも逮捕されるし、場合によっては持っているだけでも奴隷にされてしまうぞ」

「じゃあ、なんでそれを持っているんですか？」

「これはあのバカ息子から取り上げたものだ。

コイツを証拠に、いつか騎士団に提出しょうと思ってな」

「なるほど……」

すると目の前に兵士達がぞろぞろと歩いているのを見た。

アレはさっき遭遇した兵士達だ。

「ちょうどいいところに来たな。

ヴァルハラ騎士団」

その兵士達の正体がヴァルハラ騎士団だった。

そしてさっきの一人が前に出た。

「これこれは伝説の鍛治師ではないか？

その隣にはさっきのククルカンを連れた少年がいるな」

「ど、どうも」

「それで、フリースマイルについて何かわかったか？」

するとヴェルンドが割って入ってきた。

「いや、今から殴り込みに行くところだ。

それにもう調べる必要がねぇ」

そう言って、あの瓶を見せた。

「コイツが何よりの証拠だ。

30年くらい前、俺のバカ息子を連れ戻す時に取り上げたものだ。

あの時、お前らヴァルハラ騎士団がちょうどどっかの盗賊軍団との戦いに向かっていたから不在だったんでなぁ……まぁ、今回はちゃんとここにいてくれて助かったぜ」

そう言いながら騎士団全員に俺に話してくれたフリースマイルの正体をそのまま全部話した。