第三十八話:鍛治師からの試練
するとヴェルンドは大きなハンマーを取り出した。
「俺を倒してみろ。
それが俺からの条件だ」
これに思わず俺は驚いた。
「あ、あなたと戦うんですか?」
「あぁ……腕試しだ。
俺はこう見えて負けず嫌いだし、何度もドラゴンを殺したことがある。
誰も俺に勝利した奴はいねぇ……まぁ、俺を倒せたら、お前と手を組んでやってもいいぞ」
「それってつまり、俺が勝ったらいいってことですか?」
「そういうことだ。
勿論、どんなスキルでもどんな武器でも好きにしな。
俺はあえてこのハンマーで行くからな。
だがその前にここだと騒ぎになるから、人目のつかない場所へ行くぞ」
と言うわけで、俺とヴェルンドはだいぶ離れた岩場へ行った。
「ここは低ランクの石を採掘するための場所だ。
ヴァルハラの法律では、この時間は魔物が現れる危険性があるってことで、決められた時間しかここで働いてはいけないことになっている。
つまり、今ならやりたい放題ってわけだし、どれだけ暴れても魔物の仕業ってことにしておけば良いだけの話だ。
さて、お前は俺の試練に挑むか?」
俺は迷わず、毒剣を構えた。
「では、お言葉に甘えて」
俺は迷わず毒剣を振った。
ズバァッ!!!
しかし、ヴェルンドは避け、代わりに後ろの岩が真っ二つになった。
「ほう?
攻撃力は高いな。
お前、レベルは?」
「まだレベル10になったばかりです」
俺は朝起きると常に自分のステータスを確認するようにしているので、今のレベルのことは把握していた。
「低レベルにしては合ってなさすぎる攻撃力……使っている武器はBランクの毒剣のようだが、俺から見たら、Bランクの武器は弱いと思っている。
言っておくが、俺達ディノサウロイド族には毒とかは効かない体質なんでな」
そう言いながらハンマーを振り回した。
「次はこっちのターンだ。
死ぬなよ?」
ハンマーは俺の頭を狙ってきた。
ブンッ!!!
「あっぶね!」
間一髪で避けれた。
ところが……
「甘いわ!!」
ドガァッ!!!
「グハッ!!!」
そのまま背中を叩きつけられた俺は跪いてしまった。
「せ、背中が折れた……」
「どうした?
もう終わりか?」
だが、俺は諦めない。
「いや!
ここからが本番だ!」
俺は回復スキルを使って、全回復した。
更に再生スキルを発動した。
そのおかげで立ち上がることができた。
「何?
一瞬で回復しただと?」
「実は俺の回復スキルは最強なんですよ。
どんなに強烈なダメージを受けてもこの回復スキルのおかげで回復できてしまう……つまり、敵の攻撃を違う意味で無効化することができるってこと!」
俺は毒剣でヴェルンドの腹を狙って攻撃した。
「これならどうだ!!」
ズバァッ!!
ところが……
バキッ!!!
「う、嘘だろ!?
折れてしまった!?」
なんと毒剣が折れてしまったのだ。
これにヴェルンドは冷静に言った。
「言っただろ?
俺から見たら、Bランクの武器は弱いってな。
オーガ族も俺達ほどじゃないが、Bランク以下は皮膚を傷つけることもできん。
それにお前は攻撃力が高すぎるから、ソイツはお前の攻撃力についていけず、こうして折れてしまったんだ」
そう言ってまたハンマーを振り回した。
俺は迷わず時間停止スキルで時間を止めた。
「危ないところだった……にしてもあのハンマーの威力が強すぎる!
見た目はただのハンマーのように見えるが……」
おそるおそる俺は、ハンマーに触れてみて、ステータスを見てみることにした。
『ミスリルミョルニル(MAX)』
ランク:SS
攻撃力:2650
耐久値:6500
固有スキル:大地震、巨大化、木っ端微塵の崩壊
「や、ヤバい……ヤバすぎる!!
しかもこの“MAX”って、もしかして最大レベルにまで強化したってことなのか!?
どうりで攻撃力が強いわけだよ……回復スキルが最強じゃなかったら多分、俺はあっさりとあの世行きだな。
だけど、俺が使ってる毒剣が折れてしまった。
だったら、守りを武器にするしない……そうだ!!
やってみるしかない!!」
俺はすぐにそれを創造してみることにした。
「頼む!!
あのハンマーでも耐えれる強い盾を頼む!!」
俺がそう言うと、明らかにデカい大盾を創造した。
早速俺はステータスを確認してみた。
『タツヒサの最強大盾』
ランク:S
防御力:1500
耐久値:950
特性:大防御、バリア
「Sランクか……でもないよりはマシだ!」
俺は時間停止スキルを解除して、さっきの大盾を構えた。
「ほう?
その盾はどっから出た?
しかもお前、やっぱりあのスキルを使っていたようだな?」
「俺の武器はさっき折れたあのBランクの毒剣だけだ。
でも、この盾はSランクだ!
たった今作ったけどな!」
「なるほどな……よし、俺が当ててやろう!
お前には、最強レベルの回復、材料なしで作れる創造スキル、そして時間を一時的に止められる。
そうだろ?」
「なぜわかったんですか?」
「その盾はSランクだろ?
それに作ったと言ったな?
Sランクを作るには、鍛治スキルを最大まで極めること、Sランクのレアアイテムが必要になる。
だが今のお前がすぐにそれを用意するとは考えられん」
確かに今の俺は装備以外は全てオリュンポス帝国のギルドで売却したからな。
唯一インベントリには、使っていない毒除けの盾だけが入っている。
だが毒避けの盾もBランクだから、流石にそれで防御するのはやめておいた。
「それに、チラッとステータスを見てしまったが、お前の名前が入っていた。
となると、創造スキルという珍しいスキルで作ったのは間違いないだろう。
それに一瞬でその盾を用意できたのなら、時間を止めて用意したと思っている。
さっきのクソ野郎どもにあの毒剣で黙らせたのだろう?
俺は、時間を止めているのではと思ったが、その盾が証拠となった。
俺の推理は合っているだろ?」
「あぁ……正解だ」
「フッ、お前はやっぱり面白い奴だ。
よし、気合いを入れ直していくぞ!!」
そう言って、ハンマーことミスリルミョルニル(MAX)を持ち直した。
「お前も既にこのハンマーがただの武器じゃねーことはわかってんだろ?
コイツは俺の仕事の相棒で、武器として使えるように鍛え直されたんだぜ?
なんせMAXだからなぁ!」
そしてミスリルミョルニル(MAX)を思いっきり振り回した。
俺はすぐに新しく作ったあの盾で攻撃を防いでみることにした。
ドガァッ!!!
なんと凹んでしまった!
でも、アレはSSランクだから仕方ない。
でも、今がチャンスだ。
「おりゃあぁ!!!」
俺は盾を思いっきり力尽くで押してみた。
「うおおおぉぉぉぉーーーっ!!!!」
「!?」
ボガァッ!!!!!
力いっぱい押したことで、まるで攻撃が自分に返ってきた勢いで、ヴェルンドは盾に押し倒され、その勢いでミスリルミョルニル(MAX)が吹き飛んでしまった。
そしてミスリルミョルニル(MAX)は回転しながらヴェルンドの頭に直撃して倒れた。
「いってぇー!!!」
「や、やりすぎたか!?」
俺は鼻から血を出しながら頭を押さえているヴェルンドに回復スキルで回復させた。
「いててて……ん?
アレ?
痛くなかったぞ?」
「す、すみません……やりすぎてしまいまして……」
俺がそういうと、ヴェルンドは黙って睨みつけた。
「え、えっと……その……」
すると、ヴェルンドは笑い出した。
「フフフッ……フッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!
これは一本取られたぜ!!!
まさかこの俺が自滅してしまうとはなぁ……そのSランクの盾が発動したバリアスキルによってなぁ!!!」
「えっ?
バリアスキル?」
「無意識に使ったようだが、バリアは自動的に敵の攻撃を一時的に跳ね返してくれる特殊なスキルだ。
とは言ってもほとんどの盾にはないがな」
確かに新しく作ったあの盾には、特性として“バリア”が含まれていた。
するとヴェルンドは立ち上がって、手を差し伸べた。
「お前の勝ちだ。
予想外な結末になったが、しっかりと俺を倒した。
これでお前は俺からの条件をクリアした」
すると、目の前にこんなのが出てきた。
『ヴェルンドがあなたの仲間になりたそうにこちらを見ています。
仲間にしますか?』
その下には、”はい”か”いいえ”が表示された。
でも、俺は迷わず、すぐに”はい”を押した。
すると、”ヴェルンドがあなたの仲間になった”と表示され、すぐにヴェルンドのステータスが表示された。
『ヴェルンド』
種族:ディノサウロイド
レベル:145
通常スキル:異常効果無効、戦闘強化
固有スキル:鍛治、ブレス、炎(普通)、水(普通)
攻撃力:3160
守備力:4512
速度:512
体力:3000
しかし、明らかに速度以外のステータスがルシファーよりも高い。
「どれもステータス高いですね……」
「まぁーな。
だが俺はこう見えて走るのが苦手でなぁ……」
「そうなんですね……」
こうして、ヴェルンドが仲間になってくれた。
つまり、ヴェルンドは俺に力を貸してくれることになった。




