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第三十六話:リンドルム国王

俺とカミカゼとマーリンの話を聞いたオイランもヒナセもこれに反応した。


「とある宗教団体?」

「確か、フリースマイルっていう宗教団体ね。

表向きは笑顔で幸せになるのを目的とした宗教で、笑顔は平和の象徴とされているわね。

でも、その実態……つまり、裏の顔がヤバいって話!

まさに笑顔の裏に隠された闇が潜んでいるって噂されているわ」


オイランのこの発言を聞いてマーリンはニヤリと笑った。


「ほう?

お嬢ちゃんはよく知っておるのう!

フリースマイルとは、信者は常に笑顔を保ち、笑顔で幸せな毎日を送るのを目的とした宗教団体じゃ!

アドレスという男がその教祖でありながら宗教団体の代表でもあるんじゃ!

じゃが、信者が全員笑顔じゃから、逆に不気味で、明らかに裏があると言われておるんじゃ。

あくまでも噂じゃが、アドレスって男は、実はアンデット連合の幹部ではないかと囁かれてんのじゃ」


それを聞いたカミカゼは不快な表情をした。


「偽善者めが……」

「カミカゼ、どうした?」

「いや、なんでもない」

「お主か……一緒に来てくれるのなら頼もしい!」

「ところで汝は今回もテレポートで行くのか?」

「うむ、ワシはもう歳じゃ!

テレポートの方が便利じゃ!」


というわけで、俺とカミカゼとマーリンで一緒にヴァルハラ国へテレポートした。


ところが案の定……


「うわああぁぁぁぁーーーーっ!!!!」

「逃げろーーーーっ!!!!!」

「デッカい魔物が出たぞ!!!!!」

「兵士を連れて来い!!!!!」


騒ぎになった。


「ですよねー」

「すっかり忘れてた……」

「どうするのだ?

余のせいで騒ぎになっておるぞ?」

「仕方ない。

わしが責任を取る」


この騒動に数多くの兵士達が到着した。

その中の一人が俺達の前に出た。


「貴様、どうやってここへ来た?

よりによってその得体の知れない魔物を連れてくるとは……」


(この人、カミカゼのことを知らないんだ。

どうやって説明すれば……)


その男の前にマーリンが来た。


「お主、わしのことがわかるな?」

「こ、これはマーリン様!

我が国に何か御用でしょうか?」

「うむ、リンドルム国王に会いに来たのじゃ。

この者達はわしの護衛で、あの魔物は神獣ククルカン様じゃ。

勿論、そこの少年がククルカン様を従魔にしておるし、奴も大人しくしておるから、問題はなかろう。

それでも問題があるのなら、ワシが責任を取る」

「わ、わかりました。

では、こちらへ」


俺とカミカゼとマーリンは兵士達に囲まれながら城へ入った。

当然だが、カミカゼは城には入れないので、城の外で待つことになった。

あの後、兵士達は人々にこのことを話してくれたようだ。

マーリンはリンドルム国王との会談をして、俺はそれを見守った。


「それでマーリンよ。

アーサーが本気でアンデット連合を潰すのは本当か?」

「うむ、陛下はメローラ姫を苦しめ、賢者の石の鉱山を乗っ取ったことに怒っていてのう。

既に奴らの本拠地が特定できたから、後はどうするか……それを伝えに来たのじゃ。

今頃、オリュンポス帝国皇帝にもこの話が伝わっているじゃろう」

「なるほどな。

確かにアンデット連合による犯罪は急激に増えているという報告を受けている。

中でも、我が国が誇るヴァルハラ騎士団では今、フリースマイルを“アンデット連合との繋がりがある”と見て、密かに調べている最中だ」

「ならば、陛下とオリュンポス帝国の皇帝による三国会議に出席されるってことで良いか?」

「当然だ。

民が安心して眠れるようにするには、徹底的に悪の芽を抜き取らなければならん」


するとリンドルム国王は俺に顔を向けた。


「若者よ、マーリンから話は聞いたが、あのククルカン様を従魔にしたのは本当か?」

「は、はい……本当です」

「名前は?」

「わ、私ですか?

私はタツヒサと申します」

「タツヒサか……お前の名を覚えておこう。

ついでだが、ククルカン様にも名前を与えておるのだろう?」

「カミカゼと申します」


すると窓からカミカゼが顔を覗かせ、家臣達はそれを見て驚いた。


「うわあぁーーーっ!!」


それを見たリンドルム国王はニヤリと笑った。


「なんて美しい……初めて見た。

勿論、話せるのだろ?」

「勿論です」

「カミカゼと言ったな?

是非とも話をさせて欲しい」


そしてリンドルム国王は家臣達に窓を開けるように命じて、窓を開けさせた。


「ククルカン様……いや、カミカゼ様!

お会いできて光栄です。

私はヴァルハラ国のリンドルム国王と申します」

「汝の名は知っておる。

余と話したいのだろ?」

「あぁ、力を貸して欲しいのです」


するとリンドルム国王は何かを思いついたのか、俺に再び顔を向けた。


「タツヒサよ、頼みがある」

「はい、なんでしょうか?」

「私はこれからマーリンとカミカゼ様で話し合いをする。

お前はその間にフリースマイルのことを調べてきて欲しい。

もしもフリースマイルがアンデット連合側だと発覚した場合、ヴァルハラ騎士団に全員逮捕するように連絡してくれたらそれで良い。

特に教祖のアドレスは怪しい男だ……用心せよ」

「わかりました」


続けてマーリンも話しかけた。


「ついでじゃ!

お主が会おうとしている例の鍛治師を見つけて来るんじゃぞ!

今頃この国にいるはずじゃ!」


それを聞いたリンドルム国王は驚いた。


「なんと!?

あの伝説の鍛治師が我が国に来ているのか?」

「うむ、わしにそう連絡が来たんじゃ」

「是非とも会ってみたい……」


カミカゼは俺に顔を向けた。


「一人で行くのか?」

「うん、フリースマイルについて調べてくるよ」

「……気をつけるんだぞ」


こうして俺はフリースマイルについて調べてみることにした。

まずは聞き込みからだ。


「フリースマイル?

やめとけやめとけ!

あんなイカれた連中の相手になったらお前の心が壊れるぞ!」


「信者は常にニコニコと笑顔ですが、本当に笑っているかどうかも怪しいんです。

近づかない方がいいですよ」


「噂ではアンデット連合との密接な関係があるらしいぞ!

特にあの教祖……実はアンデット連合の幹部なんじゃないかって囁かれているぞ」


「そもそもの話、聖神教と違って、フリースマイルは何を崇拝しているのかもわからない。

いや、そもそも神様を信仰しているかどうかも怪しいんだ。

とにかく笑顔!

笑顔で幸せになるという怪しい宗教だからなぁ……兄さんも興味本位でも絶対に近づくなよ?」


(人々の話を聞いてみた感じ、やっぱりまともな宗教ではなさそうだ)


宗教と言ったら、神を崇拝し、人々が救われるためにあるもの。

だが、中には宗教を利用して悪事を働く人がいる。

特に新興宗教とかの裏にはヤクザまたは暴力団などの犯罪組織が“直接的な繋がりがある場合”と“間接的な繋がりがある場合”がある。

一部の宗教団体が暴力団の資金源となっていたり、暴力団員が特定の宗教を信仰していたりする事例があるし、宗教団体を装って活動する奴らもいる。

となると、フリースマイルは何度もアンデット連合との関係が怪しまれていると言われているから、調べてみないとな。

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