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第三十五話:伝説の鍛治師

翌日、俺は創造スキルでまた新たな家などを創造した。


「よし、これだけあれば、もう充分だな!

中にはお店をやりたいという人もいるしな……でも、せっかくギルドがあるしなぁ……」


俺が考えていると、ヒナセとオイランの話し声が聞こえてきた。


「うーん……いるにはいるけど、結構遠いよ?」

「その人はどこにいるの?」

「それもわからない。

あの人は未だに自分の店に相応しい場所を探すための放浪の旅をしている最中だしね。

宿泊代を稼ぐために放浪しながら武器や防具を修理したり、依頼のために作ったりしているからね」

「キャンドルフォンはあるの?」

「あるにはあるけど、あの人は出ないよ。

というか、最近まで一回も連絡は来ていないから心配なの!」


俺はヒナセとオイランに話しかけた。


「なんの話をしていんだ?」

「タツヒサ君じゃない!

商人である彼女に話を聞いてみたのよ!

そしたら、伝説の鍛治師のことを聞いたの!

もしも彼を見つけることができたら、ギルド専属の鍛治師になって欲しいと思っているんだけど……」

「うん、あの人は今も自分の店に相応しい場所を探すための放浪の旅に出ているから、どこで出会えるのかもわからない……私も彼に会ったことはあるけど、最近まで一回も連絡来ていないしね」

「伝説の鍛治師?」


彼女達の話によると、“伝説の鍛治師”と呼ばれる放浪の旅に出ている鍛治職人で、旅の目的は自分が開く店に相応しい場所を探すこと、ディノサウロイド族の男であること以外は謎だらけの存在である。

“伝説の鍛治師”と呼ばれているのは、『ドラゴンと対等に戦えるほどの実力者』、『何十人の勇者のための特別な武器や防具を作り上げたこと』、『伝説の秘宝をいくつか発見したこと』などの彼に関する噂が後を絶えないからで、それらの噂を一つの小説として広まったことで、いつの間にか“伝説の鍛治師”と呼ばれるようになったとのことだ。


「すげぇ……そんな奴がいるのか!?」

「ちなみにディノサウロイド族はどの種族よりも寿命が長いと言われているから、そんな噂が流れるのも無理はないよ」

「最近では既に死亡したのではないかと言われるようになったし、中には小説が生み出した架空の人物を実在すると信じていたからとかで彼の存在を否定する人まで現れるからねぇ!」

「でも私は一度だけ会えたんだからね!

でも最近はどこにいるのかもわからないけど!」


俺はその伝説の鍛治師に興味があった。

すぐに俺はルシファーとメローラ姫に聞いてみることにした。


まずはルシファーからだ。


「伝説の鍛治師ですか?」

「何か知ってるの?」

「勿論、私も彼に会ったことがありますし、弟も彼に世話になってますからね。

ですが残念ながら、彼がどこで何をしているのかはわかりません」

「そうですか……」


次はメローラ姫に聞いてみた。


「私は会ったことはありませんが、父上は昔、その人に武器を作ってもらったと聞いております。

父上の愛剣のエクスカリバーは、彼が作り上げた最高作品と言われているそうです。

ですが父上も寂しそうにしていましたね……多分、私が生まれる前から今までに会えていなかったご様子でした」

「そっか……」


その日の夜、俺は伝説の鍛治師について深く考えた。


(アーサー国王どころかルシファーも会えていないとは……どんな人物なんだ?)


その頃、とある酒場には、一人で酒を飲む男がいた。


「ったく、どこもダメだ。

俺の店を開くには適していねぇ場所ばかりだ。

だが、ここを出たら、ヴァルハラ国になるのか……ヴァルハラ国には確か、かつて俺が訪れたアヴァロン王国があったはずだ。

まぁ、何十年ぶりのアヴァロン王国だ。

アーサーに顔を見に寄り道してみるのもいいだろう」


そんな男に酒場の店主が話しかけた。


「なら、アヴァロン王国にある無法地帯に行ってみると良いぞ。

あそこで新たな国ができていると話題になっている。

なんでも、ククルカンを従魔にした少年が城主としてその国を支配している……ってな。」


それを聞いた男は興味本位で聞いてきた。


「なんだと?

あの無法地帯に国だと?」

「あんな危険な魔物だらけの無法地帯に突然と城ができたんだってよ。

その周囲には家が着々と簡単にできてしまっているし、しかもご隠居中のルシファーもいるって話だ。

最近では、アーサー国王に認められ、娘のメローラ姫と婚約したようだ。

まぁ、まだ結婚はしていないがな」

「ほう?

それは面白そうな話だな。

ならば、そこに寄り道してみるとするか」

「もしかしたら、アンタが探していたものがようやく見つかるかもな?」

「あぁ、そのためにこうして旅をしていた。

どんな場所か楽しみにしておくとしょう」


翌日、俺はギルドにヒナセとオイラン、クマゾウを呼び出し、伝説の鍛治師について話し合うことにした。


「ってことで、俺は伝説の鍛治師を探そうと思っているんだ」

「いいの!?

でもどこにいるかはわからないのよ!?」

「そうよ!

そう簡単に会える人じゃないよ!」

「兄貴、流石に無理だとオイラはそう思います!

オイラは兄貴と出会うだいぶ前にそのおっさんを略奪するために襲いかかったが、あっけなく返り討ちされましたよ!」

「そんなに強いんだ」

「うん、ドラゴンと対等に戦える程の実力者と噂されているからね!」

「それで、ギルドマスターの私にどうしたらいいの?」

「伝説の鍛治師をここで働いて欲しいんだろ?

なら、彼のための仕事場を用意しておいた方がいいかなと思うし、ここで冒険者達のための修理場として機能したらいいなと思う」

「なるほどね……でもそれは私達が決めることではない。

彼の意思を尊重してあげないとね……未だに自分がここで店を開くと決めた場所さえ決まっていないご様子だしね」

「それにここは元々は危険な無法地帯だから尚更来てくれるかも怪しいしね!」

「うーん……」


すると、ギルドにマーリンがやってきた。


「どうやらお困りのご様子じゃな」

「ま、マーリン様!?

いつの間に!?」

「姫様から話は書いてあるぞ。

タツヒサ、お主は伝説の鍛治師に興味があるのじゃろ?」

「もしかしてご存知なんですか?」

「うむ、彼とは古い友人じゃからのう!

定期的にどこに行っているかの連絡もワシのところに来るんじゃ!

ソイツは今、ヴァルハラ国へ入ろうとしておるぞ。

もしも会いたかったら、ヴァルハラ国に行くが良い」

「じゃあ、会わせてくれるんですか!?」

「うむ、姫様から話を聞いたワシはすぐにアイツに連絡したんじゃ。

今からヴァルハラ国へ入るところってな。

タツヒサ、わしと一緒に来るかい?」

「是非、お願いします」

「よかろう……そちらは?」

「わ、私は今から掲示板にクエストを貼っていく予定で……」

「私もオイランのお手伝いを!」

「そうか……では行くとしょう」

「今からですか?」

「うむ、わしもヴァルハラ国に用があってなぁ……できれば従魔を一体だけ同行してくれたらそれで良い」


するとギルドにカミカゼが顔を覗かせた。


「ぎゃああぁぁぁーーーーっ!!!!

デカい魔物ーーーーーっ!!!!」


目があったオイランは驚いた。


「お、落ち着いて!

アイツはククルカンで、タツヒサの従魔!

名前はカミカゼっていうの!」

「えっ?

じゃあ、あの噂は本当ってこと?

八岐大蛇を倒したククルカンを従魔にした少年って……まさか、タツヒサ君なの!?」

「う、うん……聞いてなかったの?」


その様子を見たカミカゼは呆れながらも話しかけた。


「やれやれ……オイランと言ったな?

どうやら汝は余の姿を初めて見たようだな」

「は、はい……その…よ、よろしくお願いします……後、私を食べないでください!」

「人間は不味いから食わんから心配する必要はない」


そしてカミカゼは俺とマーリンに向けた。


「ところで、今からヴァルハラ国に行くのであろう?

そこに訪れる伝説の鍛治師とやらを会いに……余も同行しょう。

何か嫌な予感がする」

「えっ?

嫌な予感?」


カミカゼのこの言葉にマーリンは心当たりがあることを思い出した。


「そういえばあの国では今、とある宗教団体が問題視されておったわい……」

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