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第三十三話:ギルド

俺達はやっと帰って来れた。

あの後俺はルシファーにステインとマンマゴルを紹介した。


「ってことなんだ」

「そうですか……わかりました。

ステイン、マンマゴル、よろしくお願いします」

「こちらこそ、それがしもまたこうしてやり直すことができて光栄でござりまする」

「ルシファー様、こちらこそよろしくお願いします」


ルシファーは俺に顔を向けた。


「ところでタツヒサ、メローラ姫様は昨日から空いている部屋にいます。

あなたの婚約者としていらっしゃっているので、ご挨拶をしてあげてください」

「そうか……メローラ来ていたんだな」


俺はすぐにメローラがいる部屋へ向かった。

すると目の前にメローラがいた。


「タツヒサさん、私は昨日からここであなたの婚約者としてしばらくの間住むことになりました」

「つい先ほど、ルシファー様から聞きました。

よろしくお願いします」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。

それとタツヒサさん、改めて私を自由の身にしてくれてありがとうございます。

私は、あのアンデット連合の支配から逃れることができて今も嬉しく思います。

ですが、父上は相当お怒りの様子で、オリュンポス帝国とヴァルハラ国にそれぞれ手紙を書いて、アンデット連合を潰すための同盟を組もうとしているご様子でした」

「そ、そうなんですね」


俺は心の中で、実はアーサー国王はあの親父以上に親バカなのかと思っていた。

ある意味俺とメローラ姫とは似たもの同士なのかと思った。


「ところでどちらへ行かれるのですか?」

「私は今からあなたが作ったこの国を見て回りたいです」

「そうなんですね……よろしければ私がご案内しますよ?」

「えっ?

いいんですか?」

「勿論です」


というわけで俺はメローラ姫に俺が作った国を案内した。

メローラ姫は俺が創造スキルで建物などを作ったことにかなり驚かれた様子だった。

特に魔物達が仲良くしているのを見て更に驚いた。


「モオォッ!」


ザクッ!


「モットキヲ、キッテクレ!」


そこは今、すっかり傷が癒えたミノタウロスがカイリキ達と一緒に丸太を自慢の斧で斬っていた。


「あの魔物達は大丈夫ですか?

明らかに人間を襲う極めて危険な魔物かと」

「大丈夫ですよ。

ここにいる魔物達は全て、私が従魔にしていますよ」

「まぁ!

すごいですね!」


(あの様子だと、おそらくあのミノタウロス達はすっかりここでの生活に慣れているようだな!)


引き続き案内をしていると、クマゾウが奴隷達を鍛えているのを見かけた。


「いいぞ!!

その調子だ!!

まずは鍛えろ!!

仕事はそこからだ!!」

「は、はい!!」

「き、キツい……」

「頑張れ!!

負けるな!!」

「そっちこそ!!」

「テメーら、口だけじゃなく、筋肉を動かせ!!」


するとクマゾウはチラッと目を動かすと、俺とメローラ姫に気づいた。


「これこれは兄貴!」

「クマゾウ!

連れて帰ってきた闘技場の奴隷達の面倒を見てくれてありがとうな!」

「いや、いいんですよ!

オイラのような元山賊でも、少しだけでも役に立ちたいと思いましてね!

ところでそちらは?」

「彼女は俺の婚約者となったメローラ姫だ。

お前、彼女はめっきとした王族だから、馴れ馴れしくしたらダメだぞ」

「勿論、なるべく王族の方々を怒らせないように心得ていますよ!」


俺は他にも色々な場所を案内した。


「如何でしょうか?」

「楽しそうな国ですね!

眺めるだけでも退屈はしませんね!」

「それはよかったです!」


すると俺はある建物を目にした。


「ここって……まさか、ギルドか?」


その建物は「GUILD」と書いてあった。

それを見たメローラ姫は微笑んだ。


「実はこちらにギルドを設立したんです。

ですがこの国にはまだ名前がないので、ほぼ無名のギルドになりますが、父上はこちらに優秀なお方を派遣されております。

ちょうどあなたにも紹介するところでした」


俺はメローラ姫と一緒にギルドの中へ入ってみると、そこにはシンプルながらもオリュンポス帝国で見たのと同じ構造となっていた。

そこに一人の美人がいた。


「アンタがククルカンを従魔にした少年タツヒサかい?」

「もしかしてあなたが?」

「いかにも!

私はギルド協会からここの担当となったギルドマスターのオイランよ。

よろしくね!」

「こちらこそ、私はここの城主のタツヒサです。

よろしくお願いします!」

「ふふ、アンタは私の好みね!

なんて可愛らしいのかしら?」

「え、えっと……」

「オイラン、私の婚約者を狙わないでくださいね!」

「おや?

メローラちゃんじゃん!

久しぶりね!

前までは無口で無表情だと聞いていたが、その様子だとやっと笑顔を取り戻したみたいだね!」


どうやらオイランとメローラ姫は、子供の頃からの友達のようだ。


「彼のおかげです。

私の大切なものをアンデット連合という悪党から取り返してくれた私にとっての勇者様です!」

「て、照れますよ……」


それを聞いたオイランは一枚の紙を取り出した。


「そういやこれ、こんなのが発行されたわね」


その紙には、あの男の顔写真と一緒にこう書かれていた。


【指名手配犯】

罪人名:サンゾロ(アンデット連合の幹部)

懸賞金:金貨1500万枚

主な罪:賢者の石の鉱山の乗っ取り&アーサー国王の娘メローラ姫を苦しめた罪


「まぁ、父上ったら……」

「賢者の石の鉱山の乗っ取りはわかりますが……」

「まぁ、アーサー陛下もそれだけ怒っているってことよ!

ロオルの帰りを待つほど、あの方は世界で最も家族愛が強い王様と言われていてねぇ……中には“親バカ王”とか“家族想いの権化”と呼ぶ人もいるからね」

「な、なるほど……」

「陛下からは話は全部聞いているよ。

まぁ、陛下は私にここへ来るように伝えたこと、そしてこの手配書を作って、各地のギルドにばら撒くように言うために来たけどね。

まぁ、普通の海賊や盗賊、山賊とかの犯罪者はともかく、よりによっての犯罪組織の幹部だよ?

そう簡単に捕まるとは思えないし、奴が賢者の石の鉱山から姿を消してから行方もわかっていないんだからね!」

「それでこのような手配書が……」


アーサー国王による怒りの制裁を与えるべく、ギルド協会に対して、アーサー国王はギルドのミッションとして、アンデット連合幹部のサンゾロの捕縛を依頼した。

それで発行された手配書は世界各地のギルドへ拡散されることとなり、当然ながらアンデット連合の耳にも届いており、そこにはサンゾロの耳にも入った。


「クソが……」


そう呟いたサンゾロだったが、まだ傷は癒えていない様子だった。

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