第三十一話:刺青の効果
ステインとマンマゴルは、力を合わせて、アルゲンタヴィスの翼を斬りつけた。
ズバァッ!!!!
「斬り捨てごめん」
「後は任せな」
両翼を失っても嘴と足の爪で攻撃をしょうとするアルゲンタヴィスに対し、マンマゴルは剣で首を斬りつけた。
ズバァッ!!!!
ドサッ!!!!
「アルゲンタヴィスは翼さえ斬れば、怖くないわ。
でも、翼は筋肉の塊だから、そう簡単に斬れない……私とステインで力を合わせないと倒せない相手だよ」
こうして、アルゲンタヴィスを倒したのでした。
「マンマゴル、見事でござる」
その頃、俺は奴隷達全員の回復を終えた。
「一応全員に再生効果を与えておいた。
しばらくは自動回復になると思うけど、無理はするなよ」
「あ、ありがてぇ!!」
「俺、アンタについて行くよ!」
これを見た司会者は興奮した。
「まさかあのアルゲンタヴィスをあっさり倒してしまうなんて……素晴らしい!!
ですが、ここまでが朝飯前……いよいよ次で最後になるこの戦いこそが真の本番!!
さぁ、オーナー様のお気に入りのボスモンスターの降臨です!!!」
そういって、闘技場に姿を現したのは、真っ黒な巨大タコ”海坊主”だった。
「これが最後に戦ってもらう相手は、まさに”海の魔王”という遺命に相応しい魔物……あのクラーケンがさらに進化したと言われているあの海坊主!!!!」
海坊主の姿を見た全員が絶望し、これにはマンマゴルもステインも青ざめた。
「いかん!!
アレは流石に勝てぬ!!」
「初めて見たよ……まさかこんなのを闘技場の奥に隠していたとはね。
確かにここにいる私達を瞬殺するにはうってつけね」
これには奴隷達も全員逃げ出した。
しかし、試合中は闘技場から出ることが許されないため、10人の奴隷達は壁に縋り付くしかなかった。
「た、助けてくれ!」
「アレは流石に無理だ!」
「本当におしまいだ…」
俺は決心した。
「……仕方ない。
俺が戦う。
コイツを倒せば、俺達の勝利だ」
それを聞いたマンマゴルとステインは驚いた。
「お主、正気か!?」
「アンタ、わかってんのかい?
海坊主はあの八岐大蛇と互角に渡り合った”海の魔王”と恐れられている最強クラスのボスモンスターだよ。
アンタでも無理だと思うよ!」
しかし、それでも俺は死ぬ覚悟はできていた。
「……二人は休んでてくれ。
俺一人で相手する」
そういって、俺は上半身だけ服を脱いだ。
バサッ!
背中には、ルシファーに描いてもらったバハムートがちょうど輝き始めた。
「すごい……力がみなぎる!
これが刺青スキルの力か!
これならやれる!!」
俺は剣で海坊主に攻撃を仕掛けることにした。
「ぐうぅおおおぉぉぉ〜〜〜!!!!!」
海坊主は8本の触手で暴れ出したが、俺はそれに反応するように触手を一瞬で斬った。
ズバァッ!!!!
しかし、すぐに触手が生えてきた。
「ぐううぅぅおおおおおぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!!!!」
この攻撃に激怒した海坊主は口から視界を悪くする暗黒の息を吹きかけてきた。
(く、クソ……見えない……)
ところが……
ピカァッ!!
刺青が光り出したことで、刺青から飛び出してくるようにバハムートのオーラが出現して、遠吠えで暗黒の息を消した。
(な、なんだこれは!?
これもあの刺青の!?)
頭の中でそう思っても、海坊主がまた攻撃を仕掛けるべく、触手を構え出したのを見た。
(そうだ!!
タコは確か……あの場所が弱点!!)
俺は本で読んだタコの弱点を思い出し、すぐに剣を海坊主に投げ出した。
「おりゃっ!!!」
シュッ!
ドスッ!!
「ぐううぉぉ!?」
まるで手裏剣のような速度で一瞬で狙い通りに刺せたようだが、かなりダメージがあったようだ。
そう、タコの弱点とは、目と目の間の少し下、眉間のあたりにある硬い部分で、そこがいわゆる「タコの急所」で、そこにナイフなどで刺すとタコを締めることができると本で書いてあった。
「ぐぐぐうううぅぅ……ぐううぅぅおおおぉぉぉ〜〜〜!!!」
しかし、タダでは死なず、完全に怒って、俺を殺そうとしてきたようだが、やはり相当なダメージなのか、動きが鈍くなった。
ところが…
「ギャアオオォーーーッ!!」
なんと、刺青のバハムートが実体化され、口から光のブレスを放ったことで、海坊主はその光のブレスを真正面から受けてしまったことで、海坊主はそのまま溶けてしまった。
そしてその同時に実体化されたバハムートは消滅した。
「な、何が起きたんだ?」
俺は驚きすぎて、口から出てしまった。
ところが、闘技場内では……
パチパチッ!
パチパチッ!
パチパチッ!
パチパチッ!
パチパチッ!
観客達からの大きな拍手が聞こえてきた。
それに続いて……
「なんと!!
あの海坊主を倒してしまうとは……生まれて初めて見た試合です!!
感動しました!!
というわけで、この闘技場の勝者は、13人の奴隷達で、特に海坊主を撃破できたMVPはそのうちの一人の挑戦者です!!!」
という祝福の声が聞こえた。
「俺が倒したってことでいいの?」
俺がそう驚くと、マンマゴルとステインが駆けつけた。
「奇跡の勝利でござるな」
「心配いらないよ。
刺青スキルなどのバフ効果も認められているからね」
他の奴隷達も喜んだ。
「やったぜ!!」
「ありがとう!!
これで俺達は自由だ!!」
「俺、お前についていくぜ!!」
すると、闘技場にあの男が姿を現した。
「タツヒサ、まさかあの刺青の力に頼るとは思わなかったけど、どれも素晴らしい戦いぶりだよ。
そこの奴隷達とのチームワークもよかったしね!
それに、この戦いで君の真の力がここで証明されていることに安心したよ!
勿論、刺青以外のね!」
そしてミカアニはマンマゴルとステイン、そして10人の奴隷達を見つめた。
「アンタ……」
「お主……」
ステインとマンマゴルは警戒していた。
しかし、ミカアニは微笑んだ。
「まぁ、約束はちゃんと果たさないとね!
約束通りに、ここにいる奴隷全員は君のものだ!
それと、資金援助もしてあげるね!
ただし、流石に他の負け犬君達にバレたら困るので、極秘に少量ずつ資金援助してあげるよ」
俺はそれを聞いて、頷いたが、ミカアニというアンデット連合の幹部なので、こう言った。
「約束を守ってくれるのなら嬉しいですよ。
ですが、ちゃんと守ってくださいね」
それを聞いたミカアニは真顔になった。
「勿論。
約束通りに話してあげよう。
ただし、このことを誰にも言わないでね」
こうして、闘技場は俺達の勝利として幕を閉じた。




