第三話:ククルカンとルシファー
翌日、俺はとりあえず弓矢を創造して、その弓矢で魔物を遠くから狩ってみることにした。
(どうせなら牛とかが欲しいかな?
この草原にいそうだしなぁ)
そう思った俺は、魔物を探してみた。
この草原には昨日遭遇したのと同じウサギ、チュパカブラ、アリ、スライム、カエル、ゴキブリ、サソリ、クモ、フラワーなどの草原と遭遇した魔物が出現するようで、中には自転車と同じ大きさのヤモリとカボチャと同じ大きさのピクシーなどの森で遭遇したリスやニワトリ、ハエ、ヘビといった魔物がいて、それらの魔物は全員、俺が知っているのと違って、とてもデカい魔物が多かった。
しかし、弓矢で仕留めると矢が当たった場所には必ずと言って良いほど、クレーターができてしまい、よく見たらクレーターに巻き込まれる形で周囲にいる他の魔物がいた。
「これ、数日後には周囲がクレーターだらけになりそう」
そう呟いた後、次は鎌を創造して作って、それで植物の種などを採取してみることにした。
どうやら雑草から植物の種や繊維といった植物関連のアイテムを入手することができた。
「おぉ、ちゃんと収納スキルでしっかりと俺が倒した魔物からのアイテムも入手できているな」
そう言いながら俺はインベントリの中を確認した。
まぁ、こうやって細々と暮らすのも悪くないと思っていた。
しかし、そうではなかった……何故なら、突然ととんでもない出会いを生み出したからだ。
「……」
何者かが城を見つめており、上空から巨大な鳥が飛んでいたことを俺は気づいていなかった。
「このくらい集まれば、後は畑で種を植えるだけだな!
繊維とか魔物の皮とかは……」
すると俺は考えた。
(そういや、俺は材料がなくても創造でなんでも作れるけど、こういう素材にあたるアイテムってどうなるんだ?)
そう考えた俺は、繊維と魔物の皮に手を当ててみた。
すると、繊維と魔物の皮が光り出した。
「な、何が起きた!?」
そして光が消えた後、繊維と魔物の皮はなく、代わりに立派な服が何着もあった。
「なるほど、と言うことは……」
俺は実験であるものを創造してみることにした。
すると、手のひらからそれが10個も出てきた。
「こう言うものは作れるのか!?
なら、ダイヤモンドなどの宝石を簡単に作れるな!!」
そう、俺は試しにダイヤモンドを想像したら、本当にダイヤモンドが創造された。
そして1個のダイヤモンドを掴んで、今度はダイヤモンドのネックレスを想像してみた。
すると、そのダイヤモンドも光り出し、みるみるとダイヤモンドのネックレスへと形を変えていき、光が消えた後はテレビのショッピング番組で見るような感じのダイヤモンドのネックレスになった。
「なるほど、素材があってもその素材だけでこんなものが作れるのか!?」
俺はそう興奮した。
ところが、ノックをする音が聞こえた。
「……ん?」
俺は玄関のドアを開けてみると、そこには黒い翼、黒い服、そして金色の髪をした女王を思わせるクール系美人がいて、おまけにJカップの巨乳だった。
「だ、誰ですか!?」
俺は驚いて、その美人に聞いてみた。
しかし、美人は息切れをしながらこういった。
「私のことは良い……休ませてくれないでしょうか?」
「えっ?
あ、あぁ……」
俺は彼女を部屋に入れて、休ませることにした。
「水しかないけど……」
「ありがとうございます」
川の水をそのまま彼女に飲ませた。
そして何があったのかを聞いてみることにした。
「あのー、何があったんですか?」
「……私はずっと、放浪し続けていたのですが、先ほど私は八岐大蛇からの激しい攻撃を受けて、八岐大蛇の攻撃から逃げてきたのです」
「八岐大蛇!?」
(日本神話で出てた蛇の怪物か?
数年前に抗争で亡くなった若頭の叔父貴の刺青に八岐大蛇が入っていたのをみたことがあるな……)
「えぇ、八岐大蛇は世界三大最強竜に君臨する魔物で、私ですら討伐するのが難しいです」
「え、えっと……とりあえず聞くけど、あなたは何者ですか?」
「私の名前ですか!?
……あまり大きく言えないのですが、私はエンジェル族で、元女王を務めたルシファーと申します」
「る、ルシファー!?」
(あの堕天使ルシファーなのか!?
と言うことは……下手したら俺が殺されてしまう!!)
「実は私、エンジェル族領王国”エーリュシオン”の女王を務めていたのですが、とある理由で女王を引退して、弟のミカエルに王位を譲って、旅に出たのです」
「とある理由?」
「……私達エンジェル族は、年に一回だけエンジェル族同士での決闘行事があって、王または女王として君臨しているエンジョル族は決闘を申し込むエンジェル族の戦士のお相手をするのです。
この行事は、エンジェル族の誇りと悪魔と互角に戦うための強さを証明されるためのものです。
私を含めた王に君臨しているエンジェル族は最強で、ほとんどの戦士達は敗れ去るのです。
ですが、私が女王だった頃、弟は魔物の脅威から国を守るために数年間地下に存在する地下世界”煉獄”で修行をして、エーリュシオンへ戻って、この行事で自分の強さを証明するために私に決闘を申し込んだのです。
私も本気で来なさいと言って、お互いに本気で戦ったのです。
その結果、弟は私を倒したのです……これによって、私は弟の強さとエンジェル族としての誇りを認め、弟に王位を譲って、引退して、そこから前からやりたかった放浪の旅に出かけて、今に至るのです」
「そうか……これからも旅を続けるのか?」
するとルシファーは考えた。
「ん?」
俺が不思議そうにみていると、あることを聞いてきた。
「ところで、あなたはこの世界に転生した人間ですか?」
そう聞かれたので、驚きながら答えた。
「あ、あぁ……勿論だ。
しかもこの世界に来たのは昨日だ」
「そう……昨日から……えっ!?
昨日から!?」
「そ、それがどうしました?」
「まさか、昨日この世界に来て、すぐにこんな立派な城を作ったのですか!?」
「えっと……」
俺は自分のスキルなどを話した。
勿論、城や石橋、門、石壁は創造スキルで作ったことも話した。
「なるほど、そう言うことだったのね。
攻撃力が高く、時間も止めれるし、武器や建物なども作れるし、そして回復スキルもあるとはね」
「あのー、よかったら使わせて良いですか?」
「えっ?」
俺は八岐大蛇で怪我をしたルシファーに回復スキルを使ってみた。
すると、傷は一瞬で消え、ルシファー自身の体力も回復して、すぐに立ち上がることができた。
「すごい……普通の回復スキルなら傷の回復と毒などを治療することしかできませんが、あなたの回復スキルはまさに最強そのものですね!」
「そ、そうかなぁ?」
「そうですよ!
エンジェル族ですらこんな素晴らしい回復スキルはございません!」
その時、突然と雨が降り出して、更に強風と雷が発生した。
「さっきまで晴れてたのに……」
「こ、これってまさか!?
あの伝説の魔物が!?」
「ん?」
「この雨と強風と雷を起こしているのは、世界三大最強竜や世界三大魔獣とかよりも最強とされる滅多に見れない伝説の魔物の一種で、”ケツァルコアトル”と言う風魔法を操るドラゴンの上位種とされている……ククルカンですよ!!」
「くくるかん?」
「とにかく一緒に見てみましょう!!」
俺とルシファーの二人で、城から出て、空を見上げた。
そこには巨大な鳥がいて、その鳥は城の目の前へ着陸した。
しかもよく見たら、頭がヘビで、ヘラジカのようなツノを持ち、ワシを思わせる巨大な翼や足を持ち、尻尾もヘビそのもので、全身が鮮やかなエメラルドグリーンの羽根があった。
「……あ、あなたはククルカンですか!?」
ルシファーはそう叫んだ。
すると、ククルカンは口を開いた。
「いかにも、余はククルカン……雷嵐を操る者なり。
汝らは何者だ?」
(しゃ、喋った!?)
俺は驚きながらも、俺とルシファーはククルカンに自己紹介した。
「お、俺はタツヒサ!」
「私はルシファーと言います!」
それを聞いたククルカンはニヤリと笑った。
「なるほど、ルシファーとやらよ、汝は元女王なんだろ?
それにタツヒサとやらよ……汝は異世界転生した人間なんだろ?」
「な、なんでわかるんですか!?」
「ククルカンなどの伝説の魔物は、私達が何者なのかをすぐにわかるのです。
つまり、私とあなたの正体は既にククルカンにはお見通しなのです」
「だが余は汝がどの世界から異世界転生したのかもわからんがな。
ところで、この立派な城はなんだ?」
「城?
俺が作ったけど……」
「ほう?」
「ですが彼は昨日でこの世界へ転生して、彼の話では数分だけで彼が持つ創造スキルで作ったと言っていました!」
「な、なんと……創造スキルで城を作ったのか!?」
「しかもタツヒサには攻撃力がめちゃくちゃ高く、時間を止めるスキルとすぐに傷を癒してくれる最強の回復スキルを持っています!」
「お、おい……そこまで言わなくても……」
「……なるほど、どうやら汝はタダの転生した人間ではあるまいなぁ……気に入った!
余は汝との従魔契約をしてやろう!」
「えっ!?」
すると、目の前にこんなのが出てきた。
『ククルカンがあなたと従魔契約したそうにこちらを見ています。
従魔契約をしますか?』
その下には、”はい”か”いいえ”が表示された。
俺はどうすれば良いかわからなかった。
「早く余との従魔契約をせよ!」
「!?」
ククルカンからそう言われた俺は慌てて”はい”を押した。
すると、”従魔契約完了”と表示され、すぐにククルカンのステータスが表示された。
『名無し』
種族:ククルカン
レベル:5000
通常スキル:全属性耐性、再生、威圧
固有スキル:風(最強)、雷(最強)、毒(最強)、天候操作
攻撃力:9753
守備力:8642
速度:1234
体力:16032
「なんじゃこりゃ!?
ステータスおかしすぎだろ!?
俺だけ攻撃力が高いのに、それ以上に高いよ!!」
「当然ですよ。
伝説の魔物はレベル5000以上が多く、ステータスも少なくとも1000を軽く超えています。
ちなみに、ククルカン以外にも大口真神やガネーシャ、エポナ、アピス、ホルス、バハムートなどの伝説の魔物は全員そんな感じだと聞いたことがあります」
「なるほど……ってか、名無しって?」
「従魔契約をしたのなら、余に名前を与えよ」
「そう言うことか……」
俺はどんな名前がいいか考えた。
ククルカンは天候を操る魔物である。
なら、それにあった名前にしょうと考えた。
「……そうだ!
神風はどうかな?」
「神風?」
「神の威力で吹くとされている風のことですね!
良い名前だと思います!」
「どうかな?」
「神風……カミカゼか。
うむ、悪くない名前だ。
ならば、余は今日からカミカゼとして汝の従魔となる!」
こうして、ククルカンはカミカゼとして従魔契約をした。
するとルシファーは何かを考えていたのか、俺に話しかけた。
「タツヒサさん、私を仲間にしてもらえないでしょうか?」
「えっ!?
で、でも……」
「……大丈夫、国のことは弟に任せてあります。
それに私は元女王だっただけで、いまはただの放浪する旅人です。
ですが、私はあなたの力になれると思います!」
すると、目の前にこんなのが出てきた。
『ルシファーがあなたの仲間になりたそうにこちらを見ています。
仲間にしますか?』
その下には、”はい”か”いいえ”が表示された。
でも、俺は迷わなかった。
「じゃあ……よろしくお願いします!」
そう言って、すぐに”はい”を押した。
すると、”ルシファーがあなたの仲間になった”と表示され、すぐにルシファーのステータスが表示された。
『ルシファー』
種族:エンジェル
レベル:100
通常スキル:結界、翻訳、料理
固有スキル:炎(最強)、氷(最強)、闇(最強)、刺青
攻撃力:2500
守備力:3000
速度:468
体力:1234
「私、こう見えて”世界最強のエンジェル族”と呼ばれていて、エンジェル族以外の種族から”堕天使ルシファー”という異名で呼ばれていました」
「そ、そうなんだ……俺とカミカゼが強すぎただけかな?
なんか感覚が麻痺してきたよ」
「言っておきますけど、私のことを”弱い”とは言わせませんからね?」
「あ、あぁ……」
「では、改めてよろしくお願いします!
タツヒサさん!」
「勿論、こちらこそよろしくな!」
こうして、ルシファーは俺の仲間になった。