第二十五話:キャンプセット
俺とヒナセ、イーロップ、シンナラ、レオライに加え、新たにティラノサウルスのレックスとナンディベア(ヒナセ曰く、森の主)のダフシェリが加わり、そのままオリュンポス帝国へ目指した。
しかし、長いこと森の中を歩いているため、いつの間にか夜となった。
「さて、焚き火っと!」
「焚き火をするの?」
「うん、そうだけど?
ってか、いつも焚き火して、干し肉と干しパンを食べて、その後に寝袋で寝るんだよ?
まぁ、ほとんどの冒険者はみんなそうだけど!」
「寒くないの?」
「慣れてるけど、それでも風があたって、寒いなと思うよ」
「そっか……なら、俺はこれを使うとするか!」
そう言って、俺は創造スキルで、キャンプセットを作った。
そのキャンプセットは、ちゃんとテント、折りたたみ式椅子と折りたたみ式テーブル、折りたたみ式焚き火台、ケトル、小さな鍋が2つ、そしてとても暖かい寝袋であった。
「きゃ、キャンプセット!?
……いいなぁ〜それ!!!」
「使うか?」
「勿論!!!」
「ってか、こういうのってないの?」
「私はアンタと同じ転生された人間だから、前の世界ではテレビとかで見たことはあるけど、この世界にいる人達は全員そのテントとかは見たことがないの!
まぁ、一応エルフ族が野宿する時に使う”リーフハウス”というのを使うけど、そのリーフハウスはこのテントに似たような使い方をするのよね……でも、いつも野宿している冒険者達にとっては絶対に欲しがるようなものだから、くれぐれも狙われないようにな!」
「なるほどね……」
すると俺は、あることを思い出した。
「……そうだ!
このキャンプセットがないんだったら、これを商品として売ったら、だいぶ儲かると思うよ!」
「それは名案ね!
でも、商人の私から見たら、値段はだいぶ高く設定しないといけないから、買ってくれるかどうかはわからないけどね!
この世界ではこういうのって、ほぼ高級品扱いだからさ!
特にテントがいい商品になると思うよ!」
「テントだけ?」
「うん、だってそこの折りたたみ式の椅子とかそのテーブルとかは既にあるし、ケトルと小さな鍋も元から売ってるしね!
折りたたみ式焚き火台も、ドワーフ族がよく使われる道具として知られてるよ!
まぁ、その折りたたみ式焚き火台とそのセットにあるその暖かい寝袋はめちゃくちゃ高いから、ほとんどの冒険者は誰も買わないよ!
まぁ、アンタのそのスキルなら作り放題だけどね!」
「作り放題だとしても、俺には限度があるからね……」
「そうだったね……」
「とりあえずテントの設置はできたけど……これ、二人くらいなら入れるとは思うが……」
「アンタと一緒に?
それは流石に恥ずかしいよ」
「いや、俺は何もしねーよ!
ってか、俺は未だに童貞だけど、俺は自分から手に出すことはしねーよ!」
「それはそれでどうかな?」
「でも使うんだろ?」
「はぁ……確かに使うとは言ったけどな。
じゃあ、一緒に寝てあげるけど、変なことしないでよね!」
「いやだからしねーっての!」
俺達はそうして眠りについた。
翌日、朝食を済ませた後、再びオリュンポス帝国へ向かっていった。
「後どのくらい?」
「ん〜、そうねぇ……まだかかるっちゃかかるけど」
「でも今日で着くんだろ?」
「うん、そのつもり……」
「ちゃんと到着できるか、不安になってきたな」
「気持ちはわからなくもないけど……」
すると、森の奥から巨大な城壁が見えてきた。
「あ、アレはなんだ!?」
俺がそう驚いていると、ヒナセはニッコリ笑った。
「アレはオリュンポス帝国で誰もがこの目で見ることになる城壁……その名も、“ゴーレム絶壁”!」
「ゴーレム絶壁?」
「ゴーレムは、ダンジョンにいるボスの一種になるんだけど、弱点さえわからないと倒すことができない最強の魔物の一種で、再生能力を持っていたり、魔法が効かなかったりとか……色々な噂があるの!
まぁ、最近では“アイアンゴーレム”などの機械として、人工的に作られたゴーレムがいるんだけどね。
あの壁は、ゴーレムが落とすレアアイテム“ゴーレムストーン”で作られた世界最強の壁として知られているんだ!
あの壁なら、ドラゴンのブレス攻撃ですら破壊はできないと言われてるほどだからね!」
「そのゴーレム絶壁って、オリュンポス帝国だけ?」
「うん!
オリュンポス帝国は最強の戦士が育つ帝国で、特に魔物に関する研究が盛んでね……それで、ゴーレムを倒しては、あの壁に使われているの。
まぁ、世界的に見て、世界で唯一のゴーレムストーンを使った壁として知られているかな?」
「他の国にはないの?」
「ないよ!
でも、それは私達人間だけで、もしかしたらエルフとかドワーフとかの辺りでそういう壁を作っているかもね?」
それから2時間後、遂にオリュンポス帝国に辿り着いた。
「やっと着いた……」
「やっとだよ!」
「……それよりみんな、お疲れさん!」
「ホッホーッ!」
「ガオォッ!」
「ガオォッ!」
「ぎゃあおぉっ!」
「ぐうぅおぉっ!」
そして城壁の門にたどり着いた。
そこには見張りの門番がいた。
「すいません、オリュンポス帝国に入りたいのですが……」
「どこから来た?」
「アヴァロン王国……隣にいる彼も同じアヴァロン王国からです」
「……その後ろにいるライオン、ライオネス、フクロウ、ティラノサウルス、ナンディベアは?」
「お、俺の従魔です」
「……なら、従魔税を払ってもらおうか?」
「それは私が払います!
どうせこのメンバーと一緒に来たので!」
「いいのか?」
「これくらいならお安い御用さ!」
ヒナセは俺のために従魔税を払ってくれた。
「……確かに受け取った。
入るが良い」
こうして俺達はオリュンポス帝国に入国できた。
「すまんなぁ……払ってくれて……そのお金はいつか返すから」
「いいよ!
私は商人だから金なんて腐るほどあるし、それにアンタもこのことを知らないはずだからね!」
「さっきの従魔税のこと?」
「そう、アヴァロン王国とかは基本的にそういうものはないけど、オリュンポス帝国などの一部では従魔を連れた人に対する税金ってことで、従魔税として支払う義務があるんだ。
従魔によっては支払う税金が高くなることがあって、特にアンタが連れているナンディベアとかティラノサウルスとかの大型でとても凶暴な魔物なんて、かなり高く取られることがある。
まぁ、保険金として国に支払わせるという意味があるけどね……」
「それで、目立たない魔物にする必要があったのか?」
「そういうこと……でも、アンタがそのティラノサウルスとナンディベアを従魔にしちゃったから、その分高い税金を支払ったってことになるよ!」
「本当にごめんな……」
「だからいいって!
どうせタルタロスで、景品を売ったら、それでお金が手に入るから!」
「……そうだったな。
俺の目的も忘れるところだよ」
「……確か招待されたんだっけ?
オーナーから直々に」
「……あぁ」
「……とりあえずギルドに行こう!」
「えっ?
でと俺らの目的は」
「ギルドにある合言葉を言うと、そのままタルタロスへ案内される!
そもそもタルタロスは、地下に存在するから!」
「地下に?」
「そう!
だからそこに入ってしまったら、誰も逃げられなくなるの!
まぁ、この目で見ればわかる!」
そんな中、俺達のことを背後から見ているさっきの門番がいた。
「……」
その門番は、キャンドルフォンを使ってある男に連絡した。
「……オーナー、例の客人が入国した。
……はい、例の商人も一緒に来ています。
ついでに、ライオン、ライオネス、フクロウ、ティラノサウルス、ナンディベアを従魔として連れていました。
……はい、ギルドのオリュンポス帝国支部を通じて、タルタロスに入ると思われます。
……了解しました」




