第二十二話:「タルタロス」というカジノ
城に帰った後、俺はヒナセとルシファー、そしてその場にいたマーリンとランスロットにこれまでのことを全て話した。
「そうでしたか……」
「はぁ、アンデット連合め、賢者の石をずっと独り占めしてたってわけね!
商人としては許せないよ!」
「まさかメローラ姫様にそのようなことがあったとはのう……わしがしっかりすれば、数年間も姫様を苦しまずに済んだかもしれん」
「まさかメローラ姫様が無口で無表情になった原因がアンデット連合のせいだったとはなぁ……ここでまた一つ因縁の繋がりができたな。
酒呑童子もそうだが……やはりアンデット連合を潰さなければならん!
親の仇でもあるしな!」
「親の仇ですか?」
「あぁ、俺がガキだった頃、騎士団長を務めた俺の父はなぁ……酒呑童子に殺されたんだ。
他の兵士達と一緒にな……だから俺はこの手で仇である酒呑童子の首を刎ねなければならんのだ」
「なるほどな……」
「ですが、今の私達では、アンデット連合には敵わないでしょう。
私もこの有様なのでね……」
「えっと……その……フォールンエンジェルの制限時間とかを伸ばす事はできないのですか?」
「ヒナセ、残念ながらそれは不可能です。
例え、刺青スキルであらゆる効果を上昇させても、結果は同じです。
フォールンエンジェルは、3分しか使えないのです……ですから私はあまり使いたくはないんです」
「フォールンエンジェルって?」
「後でアンタに教えてあげる!」
すると、マーリンとランスロットは立ち上がった。
「さてと、城主が帰ってきたから、俺らも帰るとするか!」
「そうじゃな。
兵士達も充分に傷を癒したはずじゃからな」
次の日の朝、ランスロットとマーリンは、兵を率いて、アヴァロン王国へ帰って行った。
「さて、今からやるか!」
俺は久しぶりに創造スキルを使って、より多くの建物や防衛のための大砲などの兵器などを創造した。
コンコンッ!
「コレカタイ!
イシヨリモカタイ!」
「世界最高強度となるコンクリートを創造して作った壁だ。
これなら誰も入れないからな」
そして連れてきた奴隷として働かされた人達には新たな仕事を与えた。
例えば、畑とかね。
「もう大丈夫だ。
ここはアンデット連合はいないし、誰もみなさんに鞭を打ってくる事はないから安心してね!
住む家も用意しておくけど、その代わりに給料は借金の返済に充てるからほぼないからね!」
「あ、ありがとうございます!」
「あなたは恩人です!」
「助けてくれてありがとうございます!」
ちなみに奴隷の中に含まれていた子供達は、仕事よりも勉強させることにした。
そのための学校を創造して作った。
その子供達の勉強はカミカゼが見てくれることとなった。
「この者達にはしっかりと学力を上げなければならぬ。
汝はまだやることがあるから、この者達の面倒は余が見てやろう」
「あぁ、助かるよ」
そして奴隷にされた魔物達は全員、俺と従魔契約をして、俺の従魔となった。
その奴隷にされた魔物達は……ミノタウロス一体、オーク二体、ウェアウルフ三体、ゴブリン四体、河童五体全員で、その魔物達は長いこと奴隷として扱われたせいで、人間を怖がるようになっているため、もう少しだけ距離を取る必要がある。
その魔物達の心の傷のケアをするため、カイリキがその魔物達の面倒を見ることになった。
「オレタチ、ダイジョウブダ!
ココノミンナ、ヤサシイ!」
「ブヒッ…」
「ブヒッ…」
「モオォッ…」
「ギャオォッ…」
「ギャオォッ…」
「ギャオォッ…」
「ギャオォッ…」
「ワンッ…」
「ワンッ…」
「ワンッ…」
「クワッ…」
「クワッ…」
「クワッ…」
「クワッ…」
「クワッ…」
俺はクマゾウと一緒にその様子を見ていた。
「兄貴、コイツらは人間を見ても、襲うどころか完全に怯えてますね」
「あぁ、俺も流石にこの有様では、近づかない方が良さそうだ。
まぁ、アイツならうまいこと心の傷を癒してくれるよ」
「そうだと良いですが、心に深い傷を負ってしまえば、永遠に治ることはないんですよ。
実際にいじめられた人ってのは、ずっといじめられた時の傷を引きずったままなんですよ」
「……そのくらいわかるよ。
とりあえず、今はそっとしておこう」
「ですね」
するとそこにヒナセがやってきた。
「あの魔物達はどうしたの?」
「コイツらですか?
アンデット連合に乗っ取られた賢者の石の鉱山で働かれた魔物達で、兄貴が助けたんですよ」
「兄貴って、どう見てもアンタが年上でしょ!?
明らかにおっさんだし!!」
「んなもん年齢に関係ねーよ!」
「ヒナセ、俺に用か?」
「そうだったわね……実は明日、オリュンポス帝国に行かないといけないの!
それで、これらが必要なんだけど……作れる?」
「どれどれ……」
俺はヒナセから一枚のメモ用紙をもらい、そこに書かれてるものを見た。
「随分と高価なものが多いな」
「そりゃ、大事な景品になるからね」
「景品?」
するとクマゾウは何かを思い出したような顔をした。
「……そういや、オリュンポス帝国といえば、タルタロスがありましたな!」
「タルタロス?」
「景品として売りに出す場所……まぁ、カジノだけどね」
「テメー、正気か?」
「正気って、商人としての仕事だからね。
そもそもあのカジノは既にアンデット連合に乗っ取られて、最近から多くの借金を背負った奴隷達を増やしてるっていう噂も知ってるからね!
それと、年下のタツヒサを兄貴というアンタの方が正気だと思うよ!」
「だ〜か〜ら〜!!
年齢は関係ね〜って言ってるだろ!?」
「おい、大きい声を出すな。
あの魔物達が怯えるだろ!」
「す、すいません兄貴……」
「それとヒナセも言い過ぎだよ!
……それより、そのカジノって、行ったことがあるの?」
「うん、何回も行ったことあるよ!
とは言っても、遊ばずにすぐに出て行くけどね!」
「そうなの?」
「世界三大カジノの一つ……特にオリュンポス帝国のタルタロスは世界最大のカジノで、多くの人達が身分関係なく、一発逆転をするためにタルタロスに訪れてくるの。
タルタロスは様々な遊び場があって、それも一日だけでは遊び尽くせない程の量があるの。
でも、それで一発逆転して金持ちになれた人は、極僅かで、そのほとんどは全員債務者となって借金をする。
そして借金をした人は身分も種族も関係なく、奴隷にされて、借金を返済するまでの間は、奴隷として働かされるのよ。
タルタロスにも多くの奴隷が働かされていてね……例えば、女性なら客人に性を満たすための道具として扱われ、男性なら闘技場で魔物や他の奴隷と戦わせたり、人力車などの労働者として働かされていてね。
特に女性の奴隷について、タルタロスのどこかに、子供を産ませるための工場が存在とすると言われているの」
「子供を産ませるための工場?
その生まれた子供は?」
「……跡継ぎがいない貴族や王族に養子として売り出されるか、もしくは闘技場にいる魔物を育てるためよ。
そういう意味では、タルタロスには、借金してまで遊んだ代償があまりにも大きすぎる極めて危険なカジノってことになるね。
私もこの目で借金して奴隷になった人を見かけたからね」
「なんてこった……」
「兄貴、実はオイラは前にタルタロスで少しだけ遊んだことがあってね……まぁ、その時は所持金が増えただけで充分だと思って、それっきりなんですが、アレはかなりハマりますよ。
そりゃ借金だって増えるはずです……ですので、仮に行ったとしても、遊ばない方が安全ですよ」
「まぁ、俺はカジノには興味はないから遊ぶつもりはないよ」
「そういう人ほどよくハマるから注意してね!
ルシファー様もカジノで遊ぶ人が大っ嫌いなんだからね!」
「わ、わかったから落ち着いて!」
「まぁ、そういうわけだから、明日までに頼むよ!」
「あ、あぁ……」
その日の夜、俺は創造スキルで景品となるものを作った。
(にしてもこれが景品とはなぁ……俺のイメージ通りにできたのは良いけど……本当に景品としてカジノに売るのか?)
メモ用紙には、明らかに厨二病感のある武器の名前が含まれていた。
それ以外は高価な装飾品などが多かった。
ところが、俺のところに一体のインプが窓から入ってきた。
「ぎゃあぁ〜!!」
「インプ!?」
しかし、よく見るとそのインプは、手紙を持っていた。
「……もしかして、誰かの従魔なのか?」
「ぎゃあぁ〜!!」
インプは俺に無理矢理手紙を持たせて、入ってきた窓から出てどこかへ行った。
「……なんだこの手紙?」
俺はその手紙を読んでみることにした。
「何々……こ、これって!?」
俺は驚いた。




