第十九話:鉱山の実態
「サンゾロ……年貢の納め時だ!!」
「調子に乗るなよこのガキが!!!」
パァンッ!!
ズバァッ!!!
「……グハッ!」
ドサッ!
俺は心臓部分に撃たれてしまった。
そこからジワジワと痛みが伝わってくる。
「い、痛い……」
「残念だなぁ!
俺はもう学習済みなんだよ。
その一振りを見た瞬間、すぐに交わしてやった。
俺は早撃ちが得意なんでなぁ……」
でも、俺には最強の回復スキルがあった。
それを使ったら、痛みが消え、その傷口も消えた。
そしてその傷口から弾が出てきた。
「こんなこともあろうかと、最強の回復スキルがあってよかったよ」
「な、なんだと!?」
「見ての通り……回復しましたよ」
「な、なんなんだこの野郎は!?」
「次は俺の番かな?
次からはアレを必須に使うことにするよ」
そう言って、俺は時間を止めた。
「先に時間を止めておくんだったな。
とは言ってもそんなに長く止めるつもりはないがな」
俺は毒剣でまず、銃を斬りつけて壊し、そして腹部にブッ刺した。
ドスッ!!
「さっさ、苦しみながらジワジワとダメージを与えて殺すと言ってたな?
これはただのBランクだが、毒の効果がある。
充分にお前を苦しめることができる」
そして俺はメローラが持っていた証を取り返し、そして能力を解除した。
「グハァッ!!!!!!」
ドサッ!!
斬り口から血が滝のように流れてきた。
「!?」
ガシャッ!!
「ば、バカな!?
俺の銃が斬られてるだと!?
お、お前は……何者だ!?」
「タツヒサ……アーサー国王からの命令で、お前らをここから追い出しに来た通りすがりの冒険者だ」
「ふざけやがって……クソ……毒が回ってやがる……」
この時、俺は頭の中からとある記憶が蘇った。
「良いか辰久。
ワシらのようなヤクザは、何があっても、世間から見たられっきとしたゴミクズ当然……だが、平和を守っているのはワシらがあってのこと……つまり、ワシらは必要悪としてここにいるのだ」
「親父、俺は正直言って、ヤクザの息子として生まれてくることは……」
「言いたいことはわかる。
こんな親で悪かったな……だがお前にはヤクザとしての血が流れておる。
それだけは逆らえない事実……お前がそうやって自分がヤクザになることを望んでなくても、いつかはそのヤクザとしての血が騒ぎ出すのだ。
お前には時期組長としての素質もある。
お前が何をしょうが、ヤクザの世界からは逃げられない……だからこそ、お前に必要なことは……」
「必要なこと?」
「大切なものを守るために戦う力!
誰かのために優しく助ける力!
自分でよく考えて、そして未来のために正しき道へ歩む力!
……これがお前に必要なことだ。」
「要するに、”仁義”とか”義理人情”とかのことか?」
「よく理解しているな!
言っておくが、ワシがお前の親になるからには、誤ったヤクザの道を歩かせないと決めておるのだ!
お前が世間の嫌われ者であるヤクザから”英雄”として扱われることを望んでおるのだ!」
「それは俺には無理だろ!?
所詮はヤクザだし、たとえ優しくしても……」
「……ワシは信じておるぞ。
このワシが地獄に堕ちようと、お前には地獄には行かせはしない。
お前のやりたいように生きても良いが、さっき言ったことを絶対に忘れるんじゃないぞ?」
そしてそこからオーディンとゼウスからのあの言葉も思い出した。
「……よく聞くのだ。
お主はこれから異世界へ転生して、そこで第二の人生を送ることになる」
「じゃが、お主が望み通りに普通の人間になれるが、異世界では普通に生きることはできぬ」
「そこで、お主が生きれるように完全に生まれ変わることにする。
じゃが、生まれ変わっても、お主自身は変わることはできぬ……魅力的なカリスマ性の持ち主で、生まれつきの優しさとヤクザの息子としての義理人情を持ち、そして友達思いな部分があるお主自身をな」
俺はやっと、その意味が完全に理解した。
(……そういうことだったか。
俺はやっぱり、異世界にいても、ヤクザの息子であることに変わりはないか。
……でも、俺は無意識に親父から言われた力を身につけていたみたいだ)
俺がそう思っていると、サンゾロがふらつきながら起き上がった。
「!?」
「はぁ……はぁ……タツヒサと言ったな?
その名前、よく覚えておくぞ……俺がこんなところで死ぬわけにはいかん!」
「……よく立ってられるな。
横になった方が楽なのに」
「なめんなよ?
なぜ俺らがアンデット連合を名乗っているか?」
「アンデットのようにしぶといからだろ?」
「チッ……理解していたか」
「……ところで、アンデット連合の本拠地はどこにある?」
「何?」
「本当はそれを聞きに来た。
知っているんだろ?」
「……フッ!
勝者には、それを知る権利があるからなぁ……」
「教えてくれるのか?
てっきり教えてくれないのかと」
「勘違いするな。
今回のことは報告させてもらう。
お前が来るのなら、その時にちゃんと処刑道具を用意して待ってやる。
……俺らの本拠地は、アヴァロン王国とその隣国のヴァルハラ国とオリュンポス帝国の間にある国境に位置する。
三つの国をアンデット連合が支配するためになぁ!」
「なんだと!?」
「……俺をこうして止めたところで、また新たな幹部がここにやってくる。
お前は所詮、無駄足だったってことだ。
アーサー国王が何を考えてんのかは知らねーが、アンデット連合を壊滅させることは、大戦を引き起こすことを意味する。
よく覚えておきな」
「そうはさせない!
これ以上みんなを巻き込むな!」
「……今回は、あえてお前の勝ちにしてやる。
俺は今からテレポートして、本拠地へ帰らせてもらおうか?
親父に報告しないといけないからな!」
そう言って、サンゾロは血を垂らしながら、テレポートして、消えた。
すると、後ろからバナクスとイーロップ、そしてボロボロになったクマゾウとテンジクが駆けつけてきた。
「ヒヒンッ!」
「ホーッ!」
「ゲロッ!」
「兄貴、大丈夫ですか?」
「お前ら……あぁ、大丈夫だ。
だが、サンゾロはテレポートして、逃げられた」
「クソ……間に合わなかったか!」
「でも、いろんな情報を得た。
とりあえず、アーサー国王にこのことを報告しないと」
「……兄貴、奥まで見ていかないのですか?」
「奥?」
「さっき、オイラは捕まえた魔物や奴隷にされた人々を乗せた監獄馬車を見たって言ってたでしょ?
奥にいるのなら、それを救うチャンスですよ!」
「……確かに言ってな。
よし、行ってみようか!」
俺らは、鉱山の奥深くまで目指した。
「しっかし、組員達はいないですねぇ……兄貴が全滅させたか?」
「いや、元から少なかった。
思ってたよりも数がなかったことだけは言えるな。
それに、組員達は全員、鉱山にいるとは思えないくらい綺麗な服を着ていたからな。
おそらく、奴隷達に無理矢理働かせているんだと思う」
「その中に魔物も働かせられてますからね」
そうこうしているうちに鉱山の最深部に辿り着いた。
ところが、そこから罵声や悲鳴、鞭の音などが聞こえてきた。
ピシャッ!
「ほらほら、魔物の癖に何サボってんだ!!
さっさと働け!!」
「モオォ〜!!」
ピシャッ!
「もっと掘れや!!」
「む、無理です……もう力が……腹が減って……」
「働かざる者は食うべからずって言葉が知らねーのか!?」
ピシャッ!
「や、やめて!」
「女だからって、手加減はしねーからな!
犯してねーだけで、ありがたく思え!」
「ご、ごめんなさい!」
「ならさっさと働け!!」
ピシャッ!
「ったく、魔物とガキどもって本当に使えねーなぁ!」
それは、組員達が鞭を打ちながら、奴隷と魔物を無理矢理働かされていた。
「これはひどい」
「見た感じ、連れてこられてからずっと食べてないですね。
このままだと全員餓死しますよ」
すると組員の一人が俺らの存在に気づいた。
「おい、そこで何見とるんや?」
「それはこっちのセリフだ!
お前らが乗っ取ったこの鉱山で何をしているんだ!?」
「決まってんだろ?
賢者の石をアイツらに掘らせて、それを売ってるんや!
いい金になるからな!」
「だからって、奴隷と魔物をそんな扱い方していいのか!?
年寄りにも子供にも、容赦なくその血で染まった鞭を打つのか!?」
「うるせーなぁ!!!
そうじゃねーとあのクソどもは言うことが聞かねーんだよ!!!
なんなら、お前らも奴隷にしたろか?」
「兄貴に指一本触れてみろ!!
このオイラが容赦しねーぞ!!」
「……どうやらただの侵入者じゃあなさそうやな!!」
そう言った後、組員は他の組員達に声をかけた。
「おいお前ら!!!
あそこにいる侵入者どもをわからせてやれ!!!
その鞭でたっぷりと調教してやれ!!!」
「それはいいな!!!
ユニコーンに大蝦蟇、フクロウに加えて、山賊とガキというやりがいのある相手ではないか!?」
「まずは俺らのストレス発散からや!!!」
「無事に帰れると思うなよ?」
組員達がぞろぞろと俺らにやってきた。
しかし、クマゾウ、バナクス、テンジク、イーロップが前に出た。
「兄貴、ここは任せてくだせぇ!」
「ゲロッ!」
「ヒヒーンッ!」
「ホッホーッ!」
「お、お前ら……でも相手は鞭を持ってるんだぞ!?
明らかに高ランクの鞭を!」
「安心してくだせぇ!
オイラには鞭なんて痛くもねーんですよ!」
「でも……」
「言っただろ?
オイラが兄貴を守るってね!」
そう言って、クマゾウ、バナクス、テンジク、イーロップが組員達と戦った。
「やれ!!!」
おおおぉぉぉ〜〜〜!!!!
ピシャッ!
「ゲロッ?」
「えっ?」
ドガァッ!!!
「グハッ!!!」
パカラッパカラッパカラッパカラッ!!
「ヒヒーンッ!!!」
ブスッ!!
「あああぁぁぁ〜〜〜!!!!」
ピシャッ!
「クソ!
大人しくくたばれ!」
ガシッ!
「ホッホーッ!」
「こ、この野郎!?」
グサッ!!!!
「うわあぁ〜!!」
「オイラのこの斧は、その鞭よりも更に高ランクの出来の良い斧なんだぜ!?」
あっけなく、組員達はあっさりとボロ負けした。
「な、なんなんだコイツら!?」
「あのガキは何者だ!?」
「鞭も使い物にならねーし!」
完全に怯えた組員達は全員、一斉に逃げ出した。
「お、覚えてろ!!!」
「次にあったら絶対に復讐してやるからな!!!」
そう捨て台詞を吐いて逃げた。
「追いかけなくていいの?」
「良いですよ!
あんな奴らはその程度ですから!
偉そうに鞭を打ちながら罵声を浴びせても、実際はたいした奴らじゃないですよ。
まぁ、オイラ達が時間がかかったのは、数十人もの援軍が来たからですけどね。
それより、彼らをどうしますか?」
「そうだなぁ……」
考えた末、俺は奴隷と魔物を解放することにした。