第十四話:アーサー国王との面会
「く、ククルカンが出現したぞ!!!」
「早く陛下に報告を!!!」
「早く逃げるように伝えないと!!!」
兵士達が慌て出した。
「ゴホンッ!!
お主ら、落ち着け!!
ククルカンとその従魔契約をしたこの若者を連れてきたのはわしじゃ!!
通してもらうぞ?」
俺は城に入った。
しかしカミカゼは流石にデカすぎて城には入れなかったので、窓から顔を覗き込むことになった。
その間、俺はマーリンと一緒にアーサー国王が待っている玉座へ向かった。
「良いか?
くれぐれも陛下に無礼がないようにするんじゃぞ!
陛下を怒らせてしまえば、その場で処刑されるのじゃからな!」
「わ、わかりました……」
マーリンは目の前にある扉を叩いた。
コンコンッ!
「陛下、ククルカンを従魔にした方をお連れしましたぞ!!」
すると扉の先から声が聞こえた。
「マーリン、ご苦労であった!!
その者を中へ入れてやれ!!」
扉が開かれた。
目の前には、玉座に座る国王、周囲には兵士達がいた。
その国王こそ、アーサー国王だった。
「ほう?
お前が八岐大蛇を倒したククルカンを従魔にした者か?」
「は、はい!!
わ、私はタツヒサと申します!!」
「タツヒサか……フッ、その様子だと随分と緊張しておるな?」
「も、申し訳ありません……こういうのは初めてですので」
「そうかそうか!
ところで、そのククルカンは連れておるのか?」
「えっ?」
「先ほど、城外にいた兵士達が”ククルカンが来た”と騒いでおったのでな」
すると俺は何かに気づいた。
「あ、あのー……この場で申し訳ありませんが、窓を全て開けてもらえませんか?」
「何?」
「おいお主、何を言っておる!?」
「マーリン、口を慎め」
「し、失礼した……」
「窓を開ければ、そのククルカンと面会できるのだな?」
「いえ、その……既に窓の前に待機していますよ?」
「何?」
俺以外の全員、窓を見回った。
すると、左側に位置する玉座に近い位置にある窓からカミカゼが顔を覗かせていた。
「い、いた!!!」
「ま、マジかよ!?」
「俺、この目でククルカンを見たのは生まれて初めて!!」
兵士達はまた大騒ぎした。
すると、アーサー国王の側にいた一人の騎士が大声を出した。
「騒ぐな馬鹿者!!!!
そこの青年の言う通りに開けよ!!!!」
その男が大声でそう言った後、兵士達は慌てて窓を開けた。
その窓からカミカゼが顔を覗かせた。
「無礼を招致で申し訳ないが、余は城には入れぬ」
「しゃ、しゃべった!?」
「喋る魔物がいるとは聞いたけどマジか……」
「す、すげぇ!」
兵士達は驚いた。
するとアーサー国王はカミカゼに尋ねた。
「ククルカンよ、質問をさせてください。
あなたはあの八岐大蛇を討ち取ったという噂を聞いておりますが、本当ですか?」
「いかにも、余が八岐大蛇を仕留めた。
互角に渡り合ったが、奴が先に力尽きた……それだけだ」
俺とマーリン以外の全員が驚いた。
「本当だったんだな……」
アーサー国王は特に唖然としながらそう呟いた。
するとマーリンが手を上げた。
「陛下、お主に是非とも見せたいものがある」
そう言って、マーリンは俺から預けた八岐大蛇の皮を見せた。
「こ、これはまさか、八岐大蛇の皮か!?」
「持ち主である彼からわしに預けてもらったもので、これを彼からのお主へ献上するとする」
マーリンはすぐに俺に見つめた。
「タツヒサ、これを陛下に献上してよろしいかな?」
「は、はい!
お願いします!」
八岐大蛇の皮はアーサー国王へ献上されることとなった。
「……確かに八岐大蛇討伐の証として、しかと受け取った。
ククルカンを従魔にしたタツヒサには、八岐大蛇討伐の報酬をやることにしょう」
「ありがたきお言葉……」
「そしてククルカンよ、あなたは我が国の脅威になりつつあった八岐大蛇を討伐してくれてありがとうございます」
「気にするな。
余はやるべきことをしたまでよ」
「……タツヒサよ、後で茶でも飲まぬか?」
「い、いいんですか!?」
「うむ、お前にはじっくりと話を聞かせて欲しいのだ。
お前がなぜそちらのククルカンを従魔にしたのかをな」
その後、俺はアーサー国王と一緒にケーキを食べ、お茶を飲みながら、俺はこれまでのことを全部話した。
「なんと!?
あのルシファー様と一緒にあの無法地帯に国を!?」
「はい、今も国づくりに励んでおります……まぁ、国民は八岐大蛇討伐で一緒に戦った冒険者10人とカミカゼを含めた魔物8体のみです」
「ククルカン以外にも確か、ライオンとライオネス、オーク4体とオークキングも従魔にした話だったな?」
「はい、そうです。
ちなみにマーリンさんとは少しだけ雑談をしましたが、城門の門番をしていたオーク2体にたまごサンドを渡して、開けさせたと聞いております」
「なるほど……流石マーリンだな!
あの魔術師は一般的な魔物のことなら全て知り尽くしておる……お前のように、従魔にしたオークを門番にさせている場所がいくつかあり、戦闘意思がない時は食べ物を渡して、そこを通す許しを得るのだ」
「そうなんですね……なるほど」
「……しかしまさか、弟に王位を譲って引退されたルシファー様がまさかそちらにおられるとはなぁ……しかも八岐大蛇に襲われたとは……」
「私は彼女を助け、そこから一緒に暮らすようになりました」
「なるほど……」
アーサー国王はお茶を一口だけ飲んだ後、何かを決心した。
「タツヒサよ、お前の国づくりに力を貸そう!」
「い、いいんですか!?」
「あぁ、どうせあの土地は危険すぎて使う予定がなかったから何も問題はない。
その土地全体をお前の領土として私が認めよう!」
「あ、ありがとうございます!」
「ただし、その代わりにいくつかの条件を飲んでもらう!」
「条件?」
「まず、お前の領土は、国としての力を身につけるまでの間は我が国の植民地として扱うとする。
まぁ、法律はルシファー様に任せた方が良いから、あえてそちらの政治には何も触れないとする。
次は、我が娘との婚約を結んでもらうこと!
娘をお前の城へ住まわせることにするがな……娘はお前より少し年上になるが、その娘を是非とも頼む!」
「ちなみにその娘さんは?」
「そうだなぁ……あえて言うのなら、無口で無表情、何を考えているのかはわからん。
だが、真面目で優しい娘だと言っておこうかな?
少なくとも娘はわがままを言うことはないだろう……どのみちお前には先にその娘とのお見合いをさせる。
良いな?」
「わかりました」
「よろしい……そして次で最後の条件!
お前にはたった一つの大仕事をやってもらいたいのだ!」
「大仕事?」
「そう、その大仕事というのは、実は我が国にとっては今も大きな悩みの種となっておる。
それに関係することだ」
「と言いますと?」
「……”アンデット連合”という名前の組織だ」
「アンデット連合?」
「……やはり知らぬようだな。
アンデット連合というのは、アンデット系の魔物とかではなく、まるでアンデットのようにしぶとくて厄介な連中だ。
まぁ、要するに我々の言う”ヤクザ”に匹敵する存在……そのアンデット連合をお前に潰して欲しいのだ」
「や、ヤクザ!?」
「我々人間はヤクザ、エルフはギャング、ドワーフはマフィアといった感じで、特定の犯罪組織に対してそう呼ばれておるのだ。
盗賊、山賊、海賊とかも中にはその組織の傘下にいる奴らも存在する」
「そのアンデット連合は、大きな悩みの種と言っていますが、何かあったのですか?」
「……我が国が管理している賢者の石が取れる鉱山が今、奴らに不法占拠されておる。
勝手に採掘して、勝手に高額に売りつけておる……それだけではない。
山賊を雇って、各地の道を塞ぎ、通る人から金をむしりとっておるのだ。
更に、ギルド勧誘詐欺に違法闘技場、そして違法魔物売買も行われておる」
「ルシファーから聞いたのですが、違法魔物売買は確か、魔物を奴隷のように扱って、貴族とかに高額で売りつけることですよね?」
「うむ、その通りだ。
それも、誰も従魔契約をしていない野性の魔物を奴隷として扱っておるのだ。
この世界では、奴隷は借金を背負った者のみという決まりがあり、人攫い、人身売買目的、魔物を奴隷とすることは禁じられ、それが発覚すれば、最悪な場合、死刑になりうるのだ」
「なるほど」
「そしてお前は多分、ルシファー様から聞いておるとは思うが、冒険者にタダで金を貸す代わりの条件として、奴らの依頼を達成できないと自分の土地や武器などを含めたすべての財産を没収するという悪質な契約をさせる……これがギルド勧誘詐欺だ」
「はい、そう聞いております」
「うむ、それならよかった。
他にも数えきれないほどの罪を犯している。
このままでは我が国の治安が悪化してしまうだろう……噂では我が国を乗っ取ろうとするクーデターも企てているとか……いずれにせよ脅威になるのは間違いないのだ」
「要するに早いうちに潰しておかないとならないってことですか?」
「そう、だが奴らは我が軍以上の兵力を誇る。
我々でもどうすることもできん……かといって、野放しにすることもできぬ。
そこで我が国の無法地帯に国を作ろうとしているお前に任せて欲しいのだ。
国づくりをサポートする代わりの条件の一つとしてね……そう言うわけだから、アンデット連合の殲滅をお願いできるかな?」
「……わかりました。
引き受けさせていただきます」
「よし、それで交渉は成立したな」
するとアーサー国王が突然と立ち上がり、扉の前まで向かった。
「今から我が娘とのお見合いをさせる。
ここに娘を合わせるから、ここで待っていて欲しいのだ」
「わ、わかりました」
そういって、アーサー国王は扉を開けて、どこかへ向かった。