第十三話:王国の魔術師マーリン
「……見つけた。
ここじゃな?」
一人の老人が俺の城にある城門を見つけた。
「見たことがない城……蓬莱や桃源郷、常世の国とかを思わせる立派な城じゃなぁ……」
老人はその城門に近づいた。
そこにはオークのクネクネとイベリコが門番をしていた。
「ブヒッ!」
「ブヒッ!」
「……なるほど、オークを門番にしているのか?
確かにどこかの国ではオークを兵士や門番代わりに利用しているが、まさかここで見れるとはなぁ」
「ブヒッ!」
「ブヒッ!」
「オーク達よ、その門を開けてくれぬか?」
「……」
「……」
クネクネとイベリコは警戒していた。
しかし、マーリンはあるもの2つを取り出して、それをクネクネとイベリコに見せた。
「これをやろう」
「?」
「?」
「わしの昼飯として食べる予定のたまごサンドじゃ。
これをやるから開けてくれぬか?」
これを見た瞬間……
グルルルルルゥゥゥゥ〜〜〜〜ッ!!!!
「!?」
「!?」
「おやおや、お腹が減ったみたいじゃな。
じゃが安心しろ。
わしには他に食べるものがあるから、遠慮せずに食べるが良い」
そう言って、その老人はクネクネとイベリコに無理やりたまごサンドをそれぞれ持たせた。
そしてお腹が減っていたのか、クネクネとイベリコは何も言わずにすぐに食べた。
モグモグッ!
「うまいか?」
老人がそう尋ねるとクネクネとイベリコは頷いた。
そして食べ終わると、黙って城門を開けた。
「すまんな。
では通らせてもらうぞ」
老人はクネクネとイベリコに開いてもらった城門をくぐって入ってきた。
「信じられん……無法地帯なのに、なんて素晴らしいんだ。
住宅街も我が国よりも綺麗で快適そうではないか?」
老人は驚いた。
そこへ、オークのタムワースとデュロックを連れたルシファーが現れた。
「お、お主はまさか、元エーリュシオン女王陛下のルシファー様!?」
「ご無沙汰してます。
マーリンさん」
「ご、ご無沙汰です……なぜお主がこちらに!?」
「引退した後の隠居中ですかね?
勇者として帰ってきた弟に王位を譲って、ここで静かに暮らしております。
それと、私の護衛をしているオーク2体と城門の門番をしていたオーク2体は全員、ここの主人様の従魔となっております」
「そ、そうか……」
「ところで、あなたは何をしにこちらへ?」
「そ、そうじゃった!!
じ、実はとある噂を聞いておりまして……」
「噂?」
マーリンと名乗るその老人は、その噂を話した。
「なるほど、やはり広がってしまいましたか」
「な、なんと!?
何かご存じなのか!?」
「はい、このオーク達を従魔にしたここの主人様がそのククルカンを従魔にした張本人です。
ヒナセが連れてきた今の住民となった冒険者達10人、そして主人様に助けてもらったオーク達と共にダンジョンから八岐大蛇を引き摺り出し、彼の従魔となったククルカンが互角に渡り合いながら戦い、そしてククルカンが勝利を収めたのです」
「そ、そうか……やはり噂は本当だったのか!?
ぜ、是非ともその主人に会いたいのじゃ!!」
「えっ?」
「ここにおられるのなら、是非とも!!」
「わ、わかりました……」
そこへ俺とヒナセが城へ戻っていた時にそこにいたルシファー達と鉢合わせた。
「た、タツヒサ!
ちょうどよかったです!
この方があなたに会いたいとのことです!」
「お、俺?」
ヒナセはマーリンを見て気づいた。
「この人って確か、アヴァロン王国を治めるアーサー国王陛下の家臣の魔術師マーリン!!
な、なぜあなたがこちらに!?」
「ヒナセか?
どこかで会ったような気がするが……そこにいる青年がそうなのか?」
「はい、彼はタツヒサ、ここの主人様であり、ククルカン、オーク4体、オークキング、ライオン、ライオネスを従魔にした男です」
「ど、どうも……」
「それは本当なのか?
是非とも本人から聞きたいのじゃ!!」
「は、はぁ……」
俺はマーリンにこれまでのことを話した。
「お主の話を聞いていると、お主自身が嘘を言う男には見えん。
どうやらお主の話は本当のようじゃな」
「あ、あのー……よかったらこれを」
俺はそう言って、余った八岐大蛇の皮を見せた。
冒険者達は八岐大蛇から皮や血液、牙、骨などを得たが、余ったものは全部城の倉庫に保管されることとなった。
そこから余った皮をマーリンに見せるために倉庫から取り出したのだった。
「ほ、本物じゃな……これは間違いなく八岐大蛇の皮じゃ。
売却すれば、一生遊んで暮らせる分の大金が手に入るほどの価値がある……」
「そ、そんなにいいものですか?」
「うむ、八岐大蛇の皮は他の大型の魔物またはお主のククルカンなどの神獣とされる伝説の魔物が落とすそのレアアイテムは全てSランク以上の武器や防具の材料となり、素材の組み合わせ次第では更に上のZランクまであるのじゃ」
「す、すごい……」
「……確かこれは余りじゃったな?」
「は、はい!」
「なら、これをわしに預からせてくれぬか?」
「えっ!?」
「お主もアヴァロン王国にきてもらう!
この皮はアーサー国王陛下に献上することとする!
タツヒサよ、もしも何もなければ、わしと一緒に来てくれぬか?」
「も、勿論!!」
こうして俺はマーリンと一緒にアヴァロン王国へ行くこととなった。
「ってことなんだ。
すまないけど、ここを任せていいかな?」
「ご安心ください。
私達でここをお守りします」
「くれぐれも陛下に無礼がないようにね!」
「ナニカアッタラヨンデクレ!
カケツケル!」
「あ、ありがとう!」
「ガルルッ……」
「ガルルッ……」
「お前達もお利口にするんだぞ!」
俺はルシファー達に見送られながら城門を出て、外で待っているマーリンと合流した。
しかし、そこにはなぜかカミカゼがいて、カミカゼを見たマーリンは唖然とした。
「お待たせ!
では行きますか?」
「そ、そうじゃな……ところで、まさかとは思うがこのククルカンは?」
「余はそこにいるタツヒサの従魔となった。
余に会いたがっていると聞いたから、余もついていくことにした」
「そ、そうじゃな……お主もついてきてくれるのなら、陛下も信じてくれるはずじゃ……」
そういうマーリンは顔から冷や汗を出していた。
「マーリンと言ったか?
汝はテレポートとか使えるのか?」
「つ、使えますぞ!!」
「ならそれを使うが良い。
そうすればそちらの国の民が大騒ぎにならずに済むであろう」
この時の俺は思った。
(いやお前の存在そのものが充分騒ぎになるわ!!
なんなら兵士達もビビって逃げ出すぞ!?)
そんな俺を見たカミカゼはニヤリと笑った。
「汝の心の声、聞こえておるぞ。
言っておくがマーリンとやらもあまり余計なことを考えない方が良いぞ」
「わ、わかりました」
マーリンは冷や汗をかきながら、俺とカミカゼと一緒にテレポート魔法で、アヴァロン王国の城の前までテレポートした。
しかし案の定……
「く、ククルカンが出現したぞ!!!」
「早く陛下に報告を!!!」
「早く逃げるように伝えないと!!!」
兵士達が慌て出した。
「ゴホンッ!!
お主ら、落ち着け!!
ククルカンとその従魔契約をしたこの若者を連れてきたのはわしじゃ!!
通してもらうぞ?」
俺は城に入った。
しかしカミカゼは流石にデカすぎて城には入れなかったので、窓から顔を覗き込むことになった。