第十一話:住宅街に冒険者
「やりおるなぁ……だがまだ互いにくたばっておらぬ!!」
「安心しろ……じっくりと殺してやる!!」
ガブッ!!!
ドガァッ!!!
ドスッ!!!
ボガァッ!!!
ブアァッ!!!
ゴゴゴゴゴッ!!!
「すげぇ……」
「八岐大蛇とククルカンが互角にやり合ってる……」
「俺、人生で初めて見た!
そして……めちゃくちゃ感動している!」
ククルカンのカミカゼと八岐大蛇による戦いを見て、冒険者達は強い関心を示し、中にはククルカンvs八岐大蛇という誰もが見たことがない戦いをこの目で見れたことで感動して涙を流す冒険者もいた。
「感心している場合ですか?
今のうちに逃げるべきよ」
「それよりヒナセ、あの冒険者達は?」
「そうだった!
アンタに説明しないと!」
ヒナセは俺に冒険者達がいる理由を説明した。
「それってつまり……」
「えぇ、最初の国民が確保できるってことです。
ですが最低でも100人いないと”国”とは認められず、あの人数でしたら、おそらく小さな村扱いになるでしょう」
「まぁでも、それで充分だな!
村から始まって、最後に国へ目指す……俺の親父の人生もそうだったな」
「おやじ?
あなたのお父様ですか?」
「ま、まぁ……」
「どんな人なの!?」
「……あんまりここでは言えないことだけどね」
「言えないこと?
ま、まさか…殺人鬼!?」
「違うよ」
「泥棒ですか?」
「いや、違うよ。
ってか、この世界でアレを知っているかどうか……」
「アレ?」
「なんですか?」
「……仕方ない」
俺は正直に自分の親父のことを話した。
しかし、俺は意外なことを知ってしまった。
「ヤクザだったんですか?」
「意外だね!」
「えっ?」
「ヤクザってほら、魔物を奴隷のように扱って、貴族とかに高額で売りつけたり、冒険者にタダで金を貸す代わりの条件として、奴らの依頼を達成できないと自分の土地や武器などを含めたすべての財産を没収するという悪質な契約を結ばせたり、風俗や薬物などのこの世界の法律では禁止されている違法な商売を平然とするなど、今となっては国際問題に発展しているからね!」
知らなかった……この世界にも”ヤクザ”という概念が存在した。
しかし、どう考えても明らかに俺が知るヤクザとは別物で、ほぼ異世界のマフィアに近い存在だった。
「でもあなたの話を聞くと、私達が知っているそのヤクザとは完全に別物ですね」
「話を聞いた感じ、前の世界でやってたニュースで聞くような普通のヤクザだったね!
それも、あの有名な豹狼組!
あの親父は自分の子供のためならなんでもやるとは聞いていたけど、その子供がまさかアンタだったとはね……まぁ、私にはそんなの関係ない!
むしろ頼もしいし、この世界なら王としてやっていけるよ!」
「いや別に俺にはヤクザとしてのカリスマとかはないしね」
「私はあなた達のその話のことはよくわからないのですが、私はあなたを見て、国を納める王に向いていると感じます」
「そう見える?」
「えぇ、だってククルカンとライオンとライオネスがあなたの従魔になっているしね!」
「そうかなぁ?」
俺達はそう話していると、ダンジョンから魔物との戦いでボロボロになったオーク達とシンナラとレオライが何かを持って出てきた。
「……」
「……」
「ブヒブヒッ!」
「ブヒブヒッ!」
「ブヒブヒッ!」
「ブヒブヒッ!」
「タダイマ」
「お、おかえり……すごく怪我してるね」
「それ何?」
「コレ、アゲル」
オークキングはオークと一緒に箱を持ってきて、その箱を俺達に渡した。
「な、なんだこれ!?」
「す、すごい!!」
「こんなの……どこで見つけてきたんですか!?」
「サッキカラ、ヤバソウナ、マモノノケハイヲカンジテ、シラベテミタラ、マピングアリガイタカラタタカッタ」
「マピングアリ?」
「強靭な腕の先には頑丈な爪が生え、赤くて大きな1つ目に血が滴る縦に大きく開く口にはぎっしりと鋭い牙が生えているとされる獣人型の魔物です。
特に人間やドワーフ、エルフが好物で、洞窟などの暗い場所に隠れては獲物が来るのを待つ傾向がある危険な魔物です」
「ちなみに獲物として襲った冒険者の武器や防具、レアアイテム、お金などの所持品を全て、手作りの箱に入れて、次の獲物となる冒険者を誘き出すための罠として使っているから、冒険者はマピングアリがいる洞窟またはダンジョンには絶対には入ってはいけないとされているよ!」
「なるほど……」
「マピングアリは実際に勇者や高ランクの冒険者を襲った事例があるほどの強い魔物ですが、それ以上に強い亜種がいるため、今でも恐れられている存在です。
まぁ、その気になれば倒せますけどね!」
「そんなに強い奴がいるんだ……」
「アイツ、ニンゲンヲネラッテキタカラ、ボコボコニシタ」
「それはつまり、奴から俺らを守るために戦ってくれたわけだな?
ありがとうな!」
その時……
ズバァッ!!!!
「グハッ!!!!!」
八岐大蛇はカミカゼからの一撃のダメージをくらった。
「汝も詰めが甘いのう……どうやらまだ余に敵わぬようだな」
「く、クソ……このわしが……」
なんとその一撃で、八岐大蛇が持つ8つの首のうちの半分がカミカゼに斬られたようだ。
「余の羽根で斬られたのなら、汝が持つ再生スキルはそこで限界だ。
再生スキルには限度があり、その限度に達すると、再生スキルを使うことができぬ……つまり、余との戦いで、無駄にそのスキルを使いすぎて、斬られた首を再生することができぬ。
なんせ、再生スキルは最も魔力を消耗するスキルだからな」
「再生スキルが使えなくなるとは……わしはとんでもないミスを犯してしまったわい!」
八岐大蛇は最後の抵抗を見せた。
「勝敗は決まった。
あの世から出直してくるが良い」
その抵抗も虚しく、とどめをさされた。
ゴゴゴゴゴッ!!!
「覚えておれ〜!!!!」
そう叫びながら、八岐大蛇は倒された。
……よって、勝者はカミカゼ(ククルカン)!
「さ、流石神獣!!」
「八岐大蛇を倒してしまうとはな!」
「俺はもう一生この瞬間を忘れねぇ!!」
するとカミカゼは冒険者達を見つめた。
「汝らにくれてやる。
好きなだけ持っていけ」
「い、いいのか!?」
「いいの!?」
そしてカミカゼはそのまま俺達の方を見た。
「約束通りにこの者達を住まわせよ」
「あぁ、わかってるよ!」
「うん、約束を果たさないとね!」
「……そうですね。
報酬代わりにあの住宅街に住まわせましょう!」
そう言って、俺達は冒険者達の前に立ち、ルシファーとヒナセは喋った。
「……八岐大蛇はカミカゼに倒されたけど、カミカゼのために八岐大蛇をダンジョンの外へ誘導してくれたことを心から感謝します。
そしてタツヒサを助けてくださって、ありがとうございました。
そのお礼として、約束通りにあの住宅街をあなた達が無料で住むことを許可します!」
「みんな、ありがとうね!
自由に過ごしてもいいからね!」
それに続いて俺も言った。
「これから住宅街に住むことになった冒険者達よ!
まだ国としては未熟だけど、歓迎するよ!
何か要望があれば、俺に直接言ってくれ!
できる範囲でその要望を叶えるから!」
それを聞いて冒険者達は全員戸惑った。
しかし、そのうちの一人の冒険者が俺に質問してきた。
「そこの商人の女の子から無法地帯の土地に国として作ると聞いたのだが、その国の王はあなたですか?
それともそこにいるルシファー元女王陛下ですか?」
「えっと……」
俺が言いかけた時、ルシファーがすぐに答えた。
「私は弟に王の座を譲って、女王を引退しました。
私はこの新たな王となる彼を支えるべく、彼の右腕として活動することにします。
タツヒサが新たな国の王です!」
ルシファーはそう断言しました。
「まぁ……そういうわけだから、みんなよろしくね」
こうして、冒険者達はその住宅街で暮らすようになった。
「宿屋生活はもうおさらばだぜ!
おかげでお金も消費しなくて済むし、欲しいもののための貯金もできるからな!」
「あぁ、マジであの時に引き受けてよかったよ!」
「久しぶりに長時間寝れたのは久しぶりだ!
こんなにもふかふかのベッドで寝れたのも実家以来だよ!」
「しかも税金とかはまだ決まってないからしばらくの間は払わなくていいってさ!」
そう話している住民となった冒険者達がそう話していた。
ちなみに住宅街に住むことになった冒険者達の数は全員で10人だった。
そしてあのオーク達は、後に俺の力になりたいとオークキングが自ら従魔契約を申し出て、俺はオークキングに”カイリキ”と名前をつけて従魔契約をした。
カイリキの部下であるオーク4体もそれぞれ”クネクネ”、”イベリコ”、”タムワース”、”デュロック”と名前をつけて従魔契約をした。
そして俺でもわかりやすいように、クネクネに赤のミサンガ、イベリコに青のミサンガ、タムワースに白のミサンガ、デュロックに黒のミサンガをつけて、見分けがつくようにした。
ちなみにそのミサンガは俺が創造スキルで作ったからか、攻撃力と防御力が少しだけ上がる効果があるようだ。
「オマエタチ、ココヲマモル!
ワカッタカ?」
「ブヒッ!」
「ブヒッ!」
「ブヒッ!」
「ブヒッ!」
カイリキ達は全員門番をしているようだ。
相変わらずカミカゼとシンナラとレオライが周囲の魔物を蹴散らしているけどね。
「賑やかになったね!」
「そうだな……でもこれからが大変だ。
法律とか税金とかも……」
「法律はある程度できていますが、税金はあえて安くした方がいいでしょう」
「ルシファー様、どうして安くするの?」
「俺はこの世界のことはよくわからないからアレだけど、おそらくほとんどの国の税金が高いから、家を持つことができないだと思う。
生活費とかも含めたらな」
「確かに税金が高く設定されている国はいくつか存在します。
そういう国ほど必ず借金を背負った奴隷がいるのですからね。
アヴァロン王国も税金が高い国として知られています。
まぁ、奴隷にしない代わりにアヴァロン王国から永久に追放される法律があるけどね」
「ちなみにエーリュシオンは?」
「私は前にエーリュシオンに行ったことはあるけど、奴隷が全くいないし、税金とかも安いとは聞いたことがあるよ!」
「そうですね、エーリュシオンでは税金が安い国に分類しますが、その代わりに税金を払えない者はアヴァロン王国と同様にエーリュシオンからの永久追放という法律があります。
ですが、永久追放を逃れる唯一の回避方法があります」
「回避方法?」
「……シンプルにダンジョンを完全制覇をしてもらうことで、完全制覇を成し遂げるまでは国に帰ることはできません。
実際に何人かの負債を抱えた債務者達はダンジョンに行って以来、未だに無事に帰ってきていないのです」
「マジか……ある意味国外追放だな」
「ま、まさか……」
「ご安心ください!
流石にここではそのような危険な法律を適応しないので!」
ルシファーはそうニッコリと微笑みながら言った。