無事逮捕
先程の怪しい三人をポリスメンに突き出した俺は、大通りへやってきた。
女は逃げようとするし、男2人組は女に襲い掛かろうとするし、その場に止めるのも大変だった。
ポリスメンは呼べば2〜3分で来てくれる。
呼び方は簡単。
市販の、紐を引っこ抜くと鳴るブザーをならす。
すると、近くのポリスメンが聞きつけて駆けつけてくれるのだ。
今日はホワン=カンさんが来てくれた。
サイレンが聞こえ出してからは三人とも諦めたかのように、静かになっていた。
ポリスメンに取り押さえられ、聴取されている三人は、妙に挙動不審だったが、後ろめたいことがないならさっき俺に言ったことをそのままポリスメンに話せばいいだけのこと。
あとのことはプロに任せて、ダンテはその場を後にしたという訳だ。
「ほんと馬鹿よね、犯罪なんて」
マリーだ。
「ああ、そうだな」
なんで答えたらいいか、正直言葉が見つからないダンテ
「私が言うなってね☆」
「………」
ほんとなんて言ったらいいのか言葉が見つからない。
「でも嬉しかったわ」
「……何が?」
思い当たる節のないダンテは首を傾げる。
「あの人たちより私のことを優先してくれたこと」
フフン!と嬉しそうに声を弾ませるマリー
「いや、当然のことだ。気にするな」
ここは格好をつけようと低い声で答える。
「正直ちょっと濡れたわ」
「ほんとに何て言ったらいいのか……」
せっかくの雰囲気が台無しだ。
……雰囲気って何の雰囲気なのやら。
「近くにいるわ、目を凝らして探してね」
急に大きな声を上げるマリー。
どうやら彼女の胴体が近くにいるようだ。
「いや目立つだろ!?探すまでもないわ」
今俺の目の前、大通りの中心、そこで旅の芸人達が芸を披露している。
そんな中、悲鳴にも聞こえる歓声が上がっているところ、
特に人が集まっているところへ目を向ける。
その中心には、忘れるわけもない、自分が切り離した、マリーの胴体が踊っていたのだから。
あのドレスを見間違えるはずがない。
断面があまりにリアル(本物だし)で、本当に首無しと思って(本物だし)いる観客たちが悲鳴8割、歓声2割で騒いでいる。
マリーの胴体は、現在キレッキレのブレイクダンスを披露していた。
「……なんでブレイクダンスなんだ?」
貴族なら、踊るならもっと優雅なダンスかなと思っていたがまさかあの格好でブレイクしているとは。
「ダンスユニット組んでデビューが夢だったから」
夢はアイドルだったらしい。
アイドルでもブレイクダンスはしないような……
しかし、
「パンツ丸見えだぞ」
「やだ恥ずかしい、いま濡れてるのn……」
安心しろ、誰も下(上)には気が入っていないようだ。
「視線は首に釘付けだ。よかったな」
「ええ……」
「なんでちょっと残念そうなんだよ」
そういう癖でもあるのか?
「でもなんか断面見られてる方が感じる」
「よし、とりあえず見つかってよかった。さっさと回収して退散するぞ!!」
ちょうど一曲終わったところのようで、マリー胴体は丁寧にお辞儀して、近くに帽子を置く。
そこへ次々投げ込まれるお金。ほとんどが小銭だが、アレだけ入ればすごい額になりそうだ。
ダンテはマリーを担いだまま、客をかき分けて胴体の元へ進む。
そしてついにマリー胴体の目の前へ飛び出した。
これで手の届く範囲にマリー胴体が入る。
マリー胴体は、小銭が目一杯入った帽子を重たそうに持ち上げ、どこからか取り出した小銭袋にジャラジャラと流し込んでいる。
……当たり前の様にしているが、アレは首無しの胴体だけだぞ?ほんとどうなってるのやら、
その辺のことも、一旦ウチまで回収してからゆっく調べることにして、
ダンテはマリー胴体の肩へ手を伸ばして、
肩に置いた。