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路地裏

その後、無事にパンを買ったダンテは、人気のない路地裏へやってきた。



街へ来たもう一つの目的、

マリーの身体を探すためだ。


マリーと話をするために人気のないところへ来る必要があったのだ。


「いい人じゃない」




頭陀袋が喋り出す。


「いいの?あんな態度、いくら心の広い人でもいつかキレるわよ?乳の一つでも揉んでやったらよかったのに?」


頭陀袋の中からマリーの下品な会話が篭って聞こえる。


頭陀袋には穴が開いている。


視界確保のための穴だ。


マリーはそこから全て見ていたのだろう。


「私ならあそこで乳の一つでも握って欲しいと思うわ、あそこまで言わせて、男として恥ずかしくないの?」


かなりチクチクと、的確な場所を突いてくるマリー。


「いいんだ。俺にはあんないい人、もったいない。第一マリー?さっきから乳と手と言い間違えてないか?」



これでいいのだ。


あまりアナさんとの距離を詰めない。


それはダンテが自分で決めたことだ。


ダンテは、仮にも人を殺す仕事をしている。


こんな汚れた手で彼女(の手‼︎)に触れるなんてできるわけがない。

と考えているのだ。


「いいえ間違いじゃないわよ‼︎あの乳、許せない、さっさともぎなさい‼︎」


……これは闇が深そうだ。


しかし、ダンテの手がアナさんの乳をもぐ……手を握る事はないだろう。


「だいたいアナさんの乳そんなに大きくないだろ?」


たしかに、スレンダーな割に、それなりに主張はしているとは思っていたが、もげもげいう程でもないだろう。


「いいえ、あれは隠れてるだけで脱いだらすごいわよ」


ズギャァァァン‼︎‼︎


ダンテの中に衝撃が走る。


「まさか、そんな……」

「そんな、あるわよ?」


「……そうか」


……気になって仕方なくなりそうだからこれ以上は聞かないことにした。




「次の休みは楽しみね」


「連れていかんぞ?」

「エェ〜」



もちろんマリーの期待するほどのこともない。


実はこれまでも何度か一緒に食事をしたことがあるのだ。

が、何かあったことはない。

いつも普通に食事して帰るだけ、次の食事でも適当なところで切り上げるつもりだ。


アナさんからの誘いは初めてだったが……。


これもまた、罪を犯すことを仕事とするものへの罰なのだと、アナさんのことは遠に諦めているダンテは少し落ち込む。


「既に罪を犯してるってんなら、アナさんの一つや二つ犯してやんなさいよ‼︎」


「おい!?」


いくらなんでも下品すぎる。


「アナさんのアナにあんたのご自慢の処刑器具ぶち込んでやりなさい‼︎」


……どこでそんな言い回し覚えてきたんだこの子は。


頭を抱えるダンテは、


「………」


ついに沸点を超え、無言で肩から荷を下ろす、


「えっ?いや、嘘っ!?ごめんなさい‼︎謝るから無言で下ろして立ち去らないで!?謝るから‼︎ギャァァァァァァァァ何お前‼︎やめてこないで食べても美味しくないわよ助けでェェェェェェェェー‼︎」



振り返ると、頭陀袋はカラスの群れにたかられ、突かれていた。



しばらく後


「……エグエグ……ごめんなさい」



「うん、わかればいい」


子供には教育が必要だ。


「だってあんなの見てたらイライラしてきて、私のことなんて放って楽しそうにして」


常識が抜けてるお嬢様には多少の荒療治が必要なのだ。


「おまえが乳を気にしているのはわかった。だがもうちょい感情をコントロールすることを覚えるんだ」



デカイ乳を見るたび暴走されたらたまらない。


「それだけじゃないけど、頑張るわよ」


頬を膨らませながらも了承してくれるマリー。


根は真面目なのか?


ダンテは、マリーを処刑してから数日、彼女には彼女の家がしていたことを説明していた。


マリーは、最初の見た目ほど子供でもなく、なぜこうなったのか?他の皆は?色々聞いてきたのだ。


ダンテはありのままを答えた。


決して話すことで贖罪になるとは思っていない、が、マリーには自分を恨む権利があると思ったから。

マリーには嘘偽りなく真実を告げ、その上で許せないというのであれば、罰を決めてもらおう、

そんな考えもあったかもしれない。


しかしマリーは、ダンテに対して怒ることもせず、ただ「そう……」とだけ言った。


その次の日から、今のように自虐気味にボケたりネタにしたりするくらいに割り切っているようだ。

とても賢い子なのかもしれない。



だから、彼も、マリーが変なことをしたらしっかり叱って教えようて思うのだ。





今のことも本当に理解したかは分からないが、マリー自身が少しでもこのままではダメだと思ってくれていたらいいと思うのだ。



「で?感じるか?」


気を取り直して、マリーに問いかける。


「いくら私でもあんなプレイでは感じる訳ないでしょこの鬼畜‼︎」


何故か怒られた。

そこでふと会話内容の食い違いに気がつき慌てて修正を入れるダンテ。


「君の性癖のことじゃない‼︎身体だよ、マリー、君の身体のことを聞いたんだ‼︎」

「ああ、そういう……」


どうやら理解してくれたようだ。

改めて聞き直すダンテ。


「で?どうなんだ?」


「いまいち濡れてないわね、身体も別に感じてな……」


……どうやら伝わってなかったらしい。


「だから違うって‼︎∑(゜Д゜)場所を聞いてるの‼︎この辺にあるかな?って聞いてるの‼︎」


「ああそういう……」


絶対わざとやってる。


「まあ、近くにいるんじゃない?」


「そうか……」


……って


「近くにいるんかい!(◎_◎;)」

「ええ、これはかなり近いわ、大通りの方ね」


まさかこんなにはやく見つかるとは思わなかったダンテは、驚きを隠せない。


「よし、ならはやく……」


すぐにでも身体を回収しようと詳しい場所を聞き出そうとするダンテだったが、


「キャァァァァァァァァ‼︎」


すぐ近くで女の人の悲鳴が聞こえた。


こっちは今身体があるってマリーが言った方角。


「まさか‼︎」


嫌な予感がして、慌ててマリーを担ぐと、悲鳴のした方へ走るダンテ。


(まずい、首なし胴体がひとりでに街を徘徊していたら騒ぎになってしまう‼︎)


久しぶりに全力疾走をした。

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