表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

首無しドレイク

ダンテは一度、鶏の首を落とさせられたことがある。


精肉屋じゃないんだぞと抗議したが、上に強制され、仕方なくやった。


上には逆らえないのが仕事のヤなところだ。




……なぜそんな話を今しかと言うと、


「コケェェェェェェーッ!コケコッコォォォォォォォォーッ!(◎_◎;)」


決してダンテではない。


「おはようドレイク」


こっちがダンテだ。


今、ダンテは首だけになった鶏、ドレイクと朝の挨拶をしている。


ドレイクは冒頭の話に出てきた鶏だ。


首を落としたはいいが、どう言う訳か、元気に生きているのだ。


すぐ死ぬだろと思って持って帰ってきたが、今日で1年と一ヶ月。

毎朝その鳴き声で彼起こしている。


ダンテは毎日3回水をやるようにしてはいるが、役に立っているかは不明。


ほんとどう言う原理なのか、不思議でならない。


だが生きているからには無下には扱えない。


だからこうして向かいの席に置いているのだ。


「コッコ」


バサバサ!(◎_◎;)!!


ちなみに首がなくなった胴体もうちにある。


胴体も生きている。


ただ、かなりアホになっているようで、絶え間なくバサバサと暴れ続けている。


物静かなダンテにとって、この鶏は、かなりうるさい。


「……ああ、うるさいなぁ、朝から何なの?」


そしてもう一人。


「おはよう、マリー」


数日前ダンテが連れ帰って来た女の子。

マリーだ。



来たのは首だけだが……


胴体は勝手に歩いてどこかへ行ってしまったらしい。




「おはよう……」


すごく不機嫌そうに朝の挨拶をするマリー。



マリーは、たしかにあの場でダンテが、その手で処刑した貴族の女の子だ。


なるべく苦しまないように、最大限の努力をして大斧を振りかざした。


おかげで、彼女の首はスパンッと、綺麗に斬りとばすことができ、苦しむことなく即死させることができた。


はずだった。



今のマリーは、首だけだ。


どうやら、首だけドレイクのように、綺麗に切りすぎて、死ねなかったようだ。



「ねぇ!?エドモンド!?」


どこから声が出てるのか、無駄に大声でダンテの名を呼ぶマリー。


「……なんだろう?」


大声には慣れていないダンテ。


返事をするだけでやっとだ。


「ケーキが食べたいわ‼︎」


どこからこんな声が出せるのやら、より一層声を張りあげるマリー。


「そんな高級品、俺みたいなんが用意できる訳ないだろ」


申し訳ないとは思うが、どうひっくり返っても、今のダンテの稼ぎでは、ケーキなんて高級品には手が出ない。


「なんでよ!?私はお腹が空いたわ‼︎」


もう一度言うが、マリーは首だけだ。

減る腹もないはずだし、食べ物を飲み込むことができるはずもない。


マリーはこのことを知っているはずだ。

なのにこの言いよう。


子供のわがままというやつだろう。


「減る腹もないだろ、お前はもう首だけなんだから」


こう言うやつには現実を突きつけて一度絶望でもさせるのがいい薬になる。


「…………わかってるわよ」


マリーも例外ではなく、考えこむように難しい表情になって俯く……ことはできないので目だけ下を向いている。


「……なら」

ボソッと、何やら喋り出すマリー。


「昨日のアレがいい」


マリーは、言いにくそうに口を動かす。


「昨日のアレって……コレか?」


ダンテは、今まさに自分が食べようとしていた物をマリーに見せる。



ソレを見たマリーの目が輝く。


「そう‼︎それよ‼︎早くソレを頂戴‼︎」


ハァハァと、息(?)荒く彼が手に持つ"干し肉"を指(?)指すマリー。

それは昨晩、今のように腹が減ってうるさくなりだしたマリーを黙らせるために、何か飲み込まなくても良くて、まずくなく、それなりに栄養になりそうなもの、それながすぐ用意できるもの、を考えた結果、干し肉をひたすら噛ませ、最後に吐き出させると言う手段を思いついたのだ。


結果大成功。

マリーはただ干し肉を数枚噛んで吐いてを繰り返しただけで満腹だと言ってくれた。

味もお気に召したようで、「噛めば噛むほど美味しくなる‼︎何コレ超いいじゃない!!」


と大満足いただけた。


貴族のプライドか、女の子的恥じらいか、吐き出すのをめちゃくちゃ嫌がったが、顎がだるくなったとかで開きっぱなしになった口に手を突っ込んで無理やり取り出してやった。

後でめちゃくちゃ怒られたが、聞かなかったことにした。


そして現在、また同じことを繰り返そうとしている。


おそらく、今のわがままも、最初からこの干し肉が出てくるのを待っていたのだろう。


「コッコッコッコッコォォォォォォーッ‼︎」


バサバサッ‼︎


餌の時間と理解したらしいドレイクが嬉しそうに鳴き声を上げる。



「うるさいわね‼︎この鶏ィ‼︎」


それを忌々しそうに睨みつけるマリー。


「まぁ、そう言ってやるな、鶏だぞ相手は」


ダンテは、マリーを制止しようとするが、どっちも止めるところがないのでどうしようもない。


だから唯一止められる場所。マリーの口に干し肉を、ドレイクには水を、放り込んで黙らせた。


ドレイク胴体にも同じく。


「なんでこんなのと同じテーブルに乗せてるのよ鬱陶しい!」


クッチャクッチャと行儀悪く口に物を含んだまま喋るマリー。


ダンテのテーブルには今、ぎゃあぎゃあ喚く首が一つと、普通にうるさい鶏の首が一つ、並んで置いている状態だ。

なぜかというと特に深い理由はない。



向かい合ってダンテ、マリー、その間には朝食の干し肉と、スープ。安物のパサパサパンが一つといった状況だ。


そしてテーブルの周りを鶏の胴体が走り回っている。

かなりカオスな状態だ。


鶏が料理ならどんなに良かったかと思うが、朝は基本これで十分お腹いっぱいなので、贅沢は言わない。


とにかく、


この光景がコレからの毎朝のことになると思うと、少し気が滅入りそうになるダンテであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ