⑤ 少女、事情を語る
私は木下アキラです! 今年15で師匠と同じ高校1年生です!
この度プロの探索者になる為に、入学するだけでGランクの資格を貰えるっていうこの学校に入学しました! 成績はソコソコ優秀です! 奨学金は貰えませんでしたけど、それでも合格は合格です!
これから魔物を討伐しまくってお金を稼いで、妹たちに美味しいご飯を食べさせてあげるんです!
……そう、私がプロの狩人を目指すのは、新入生総代の天龍院さんが入学式の挨拶で言ったように、モンスターの討伐をして人間の勢力の拡大させる為だとか、ダンジョンを開放して新たな生存圏を確立するだとか、資源を得てニホンの為にどうこうするためではありません!
お金です! 家族を養う為にはお金が必要なんです!
実は去年、Dランクの探索者をしていたお父さんが国が主導するダンジョンアタックに参加して死んじゃいました。国が依頼人とはいえ、今の狩人にはろくな保険とかはありません。むしろ装備品の整備費やら購入費用でローンを組んでたらしいんです。
更にその装備を回収できなかったせいで、ローンだけが残り丸々借金になってしまいました。そしてウチの財産は全部差し押さえられてしまったんです。
家も、家具も、私や妹たちの為の貯金も全部です。
幸い……と言って良いのかどうかは分かりませんが、住む場所に関してはお父さんの事を知っていたギルドの人が用意してくれたので、すぐに一家が路頭に迷うとことは有りませんでした。
だけどそこだって当然家賃は必要だし、生活費もかかります。闇金融みたいな場所からローンをしてたわけでは無いので借金取りとかは来てませんけど、お父さんが残したローンはまだまだ残ってます。
お母さんは探索者ではないので、普通にパートで仕事をしてますけど、家賃の支払いと借金返済がやっと。その借金返済も利息分を支払ってるようなもので、完済の予定は有りません。
ご飯の度に私や妹に「満足にご飯も食べさせてあげられなくてごめんね」って言って泣きながら謝るお母さんを見るのは本当に辛かったです。
そして先日、私たちの為に身体を売ろうとするお母さんを妹と一緒に必死で止めました。
だって私たちはまだ何とか暮らして居られたから。もしもどうしようもなかったら私が体を売る覚悟もできていたんです。
……そんな生活をしてたときに、ギルドの職員さんに言われました。
「探索者になる気は無いか?」って。
どうやら私には探索者としての素養があるみたいだったんです。だけどそれを言われた時、お母さんは反対しました。大反対です。お父さんを失い、こんな状況になった元凶である探索者になんか絶対にさせないと。娘に命懸けの仕事をさせておきながら、のうのうと暮らすなんてできない! そう言って反対したんです。
だけど私は違いました。
素質があるなら使わないと駄目だって思いました。それにこのままじゃジリ貧です。それに体を売るにしてもそれは探索者をしながらでも出来ることです。
死ぬのは怖いけど……それでも私の分の食費や生活費が浮くんです。それを考えたら、私はギルドの人に探索者になる為の方法を聞いてました。
きっとギルドの人はほくそ笑んでたんでしょう。
あの人は確かにお父さんの事を知っているのでしょう。だけどそれだけじゃないのは分かっています。だって私やお母さんを見る目がとってもイヤらしいものだったから。
……もしかしたらお母さんはあの人に何度か体を売ったのかもしれません。
パートだけで暮らして行けるほどの収入を得られないのは分かってますから。だけどお母さんを責めるなんて気持ちはありませんよ? だってお母さんは私や妹たちの為に頑張っているんです。
重荷でしかない私たちなんか捨てて逃げる事だって出来るのに、そんなことはしないで本当に頑張ってるんです! なら私だって頑張らなきゃいけません!
……だから狩人になってお金を稼ごうとしました。
もちろん入学したばかりの学生に出来るような簡単なモノではありません。それに入学して初めて知りましたが、Gランクではできることがかなり制限されています。
……きっとギルドの人は装備品だとか消耗品を『安く譲る』とか言って私に貸しをつくるつもりなんだと思います。
だけど彼に頼る前に自分でもできることをしたかったんです! わからないことは先生に聞けば良い、足りないなら鍛えれば良い。それでもダメなら……あの人に体を売ってお金を稼げば良い。そう思ってました。
だけど、自分を鍛えてくれる先生を探しに職員室に行った時、偶然師匠の事を聞いたんです! 新入生でありながら現役のプロの探索者で、実技試験を当たり前にパスできるほどの実力者だって!
プロと言われるのはCランク以上の人のことです! 探索科ではなく錬成科の生徒として入学していたことに一瞬「なんで?」って思いましたけど、そもそも現役のプロが学校で学ぶことなんてありませんよね! 簡単に高卒資格を得るためにこの学校を選んだのだと考えれば納得です!
そんなプロの師匠に比べれば、新入生総代だろうが生徒会長だろうが所詮は学生! ゴミです! 塵です! 屑です! それに同じ学生なら接点もあるし、時間だって合わせられます! 私の体目当てのあの人よりも若くてイケメンだし。もしも体を売ったとしてもプロだからお金は有るだろうし、外聞も有るだろうから酷い扱いはされないでしょう?
むしろ他の人が師匠の価値に気付く前に肉体関係になって、お金を貰いながら鍛えてもらえれば最高じゃないですか!
そう思った私は入学式が終わった後、すぐに師匠を人のいないところに呼び出して、お願いしたんです。色々と覚悟はしていましたけど……師匠は流石師匠でした!
私がお金がないから体でって言って服を脱ごうとしたら、すぐに「そんなことは止めるんだ」って止めてくれたんです!
これだけで私は師匠が本物のプロなんだ! って確信したんです!
こう言っては何ですが、私はそれなりに外見に優れているようで、ギルドの人以外でも、同年代の男の人にもよく性的な目で見られてるのは自覚してます。
もしも彼らの前でこうやって服を脱いで「体で支払う」なんて言えば、餓えた狼みたいに貪られていたでしょう! だけど師匠はそんな男どもとは違うんです! 体を使って誘惑しようとした私を優しく諭して、私の事情を聞いてくれたんです!
師匠の優しさに感極まってしまい、ところどころ泣きながらの説明で聞き取り辛かったハズなのに。鼻水だって垂れ流しだったのに、それなのに文句の一つも言わず、優しく微笑みながらうんうんって頷いてくれて、ティッシュを差し出してくれて……
このとき、確かに運命の扉が開く音が聞こえました!
「お願いしますッ! もう私には師匠しか居ないんですっ! お願いしますっ! 本当に何だってしますっ! だから私を鍛えてくださいっ! お願いしますっ!」
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