㉚幕間的なお話
昨日の更新分で一章が終わったと言ったな?
あれは嘘だ。
意訳:幕間忘れていました。すみません。
???視点
クラスメイトの木下さんが学校を休んでもう一週間になる。このことについて先生は「正式な許可を取ったものだから事件性や何やらが有るわけではない。そもそも、他人を気にしている余裕が有るなら少しでも勉強しろ」なんて言っていたけど、問題がないわけないじゃないか。
だいたい問題がないなら、なんでその理由を公表しないんだ?
そう思って「何の問題もないっていうなら隠す必要だってないじゃないですか!」と言い募った僕に対し、先生は「別に関係者でもないお前に報告する必要もないだろう?」なんて言ってきたんだ。
確かに言っていることは間違っていない。
だけどさ、普通に考えてクラスメイトを心配しないやつなんて居ないだろう? しかも彼女は初日に授業を受けたと思ったら今日までずっと登校していないんだぞ?
それに、彼女が休んでる間に色んな噂が立っているんだ。
なんでも、錬成科クラスの男子に頭を下げていた。とか。
その男子から後で話そうと言われて、そのまま姿が見えない、とか。
……その男子も学校に来てない、とか。
明らかにその男子生徒が関係しているじゃないか。それに、噂だけなら僕だって簡単に信じたりはしない。だけど情報源は噂だけじゃないんだ。
「木下さんはどうも経済状況に余裕が無いみたいですわね。そして噂のクラスの男性は、見た目普通の男性ですが、両親の情報も個人情報もほとんど得られませんでした。彼と同じクラスにいる私の家の者も接触を断られてしまいましたので、実質何も情報を掴めてません。向こうのクラスの担任も我々同様に『関係ない』と突っぱねているようです。そのため教職員からも何も情報は得られませんでした。ですが、ここまで秘密にすることが彼に何かしらの裏があるいうことを証明していますわ」
そう言って家の人に調べさせた情報を教えてくれたのは、幼馴染の園城寺さんだ。
彼女は豪奢な金髪とお嬢様って感じのオーラのせいで、慣れない人には近寄りがたい雰囲気を出したり、ややキツイ口調で話すこともあるせいで周ろから敬遠されがちなんだけど、実際話してみれば普通に優しい女の子だ。
ついでにいえば、彼女の実家はウチと同じ『始まりの探索者』の家系であり、かなりのお金持ちでもある。……まぁウチもお金が無いわけじゃないけど、彼女の家ほどじゃないかな。お互いに昔から続く名門だから家族ぐるみの付き合いがあるんだ。
そんな彼女からの情報だから、その内容を疑う気は無い。
今だって噂の男子が怪しいってことを教えてくれたし、何かをするつもりなら油断はするなって警告をくれているんだろう。
だけど、ね。さっき園城寺さんは木下さんの家のことを「経済状況に余裕が無い家」ってオブラートに包んだような言い方をしたけど、それってはっきりと言えば「お金が無い」ということだろう? そんなお金が無い木下さんが、隣のクラスの男子に頭を下げてどこかに行く? そしてそのまま二人とも学校に来ていない?
どう考えてもまともじゃないだろう!
先生が『僕たちには関係無い』って言ったけど、クラスメイトが困っているなら助けるべきだ! だって僕たちにはそのための力があるんだから!
「いや、園城寺さんが情報を掴めないからってそれだけで裏が有るって断言するのはどうなの? そもそも勝手に個人情報を、更に家庭の事情まで探って吹聴するのはどうかと思うけど?」
「なっ!」
園城寺さんとは反対の方向から冷静になりなさいって口調で言われた言葉を聞き、この情報を持って職員室に乗り込もうとした僕の頭が一気に冷める。
……そうだよな。いくら『クラスメイトが心配だから』って理由があるにせよ、言ってしまえばこれは彼女の情報を勝手に探ったってことだ。
誰だって頼まれもしないのに家庭の事情を探られたら面白くは無い。それに『探れなかったから疚しいことをしている』って決めつけるのも良い事じゃないよな。
もしかしたら『勝手に情報を探った』ということで園城寺さんの立場まで悪くなるかもしれない。さらに言えば、自分がいないところで問題を大きくされたら木下さんだって困るよな。
……そう考えれば、今の段階で動くのは良くないかもしれない。
「ありがとう襟口さん。もう少しで行動を起こして皆に迷惑をかけるところだったよ。でも園城寺さんも悪気があって調べたわけじゃないから、そういう言い方は止めてあげて欲しいかな」
同じ中学校出身の襟口さんにそう言って感謝の言葉を伝えつつ園城寺さんをフォローする。
「そうですわ!」
「……確かに言い過ぎたわ。ごめんなさい」
「むぅ。しかたありませんわね。謝罪を受け入れますわ」
良かれと思って情報を集めたのに、その行動自体を否定されてしまったことで不機嫌になりかけた園城寺さんだけど、襟口さんが素直に謝罪すれば、ブスッとしつつも謝罪を受け入れた。
一見すれば仲が悪そうに見えるけど、この二人は以前からこんな関係だ。
身長は同じくらいなんだけど、金髪で長い髪をしてる世間の常識に疎いお嬢様って感じの園城寺さんに対して、青っぽい髪で肩くらいまでの長さの髪を後ろで纏めて眼鏡をしている襟口さん。彼女は世間からずれている彼女にツッコミを入れる委員長って感じなんだよね。
二人とも表面上は仲が良くないみたいに振る舞うけど、実際は結構仲が良いから面白い。いや、他人を面白いとか言っちゃ駄目なんだけどさ。
とりあえず今回は園城寺さんも悪気が有って(基本的にいつも悪気は無いんだけど)木下さんの個人情報を探ったわけじゃない。あくまで木下さんが心配だって理由が有るからね。
「べ、別に龍造院君に感謝されたいわけじゃないけど!」
そう言ってプイッと顔を背ける襟口さん。だけど、間違ったことをする前に止めて貰えたことは感謝しなくちゃいけないと思うんだ。
「……でも私も一部では園城寺さんに賛成よ」
「え?」
「あぁ、別にその隣のクラスの人を悪者認定するってことじゃ無くてね。それ以前の話よ」
「それ以前の話?」
なんだろう?
「本人から『困ってるから助けてくれ!』って言われたわけでも無いのに、クラスメイトだからって理由だけで木下さんに必要以上に拘るべきじゃないと思うの」
襟口さんは急に真顔になって僕に忠告をくれる。確かに、プライバシーとかを考えれば、僕が良かれと思って動いても木下さんは良い気分はしないかもしれない。
「……なるほど」
だけどさ、頼まれないから動かないっていうのも何か違う気がするんだよなぁ。
そんな「納得がいかない」って言う気持ちが表情に出ていたのだろう。隣の席で話を聞いていた鳴松さんが僕たちの会話に参加してくる。
「いや、龍造院がどう思ったところで結局のところは木下次第だろ? 外野のオレたちがどうこう言ってもしょうがねぇさ。つーか、そもそもクラスメイトに『金がねぇ』って相談する状況なんかオレには想像できねぇぞ?」
「ん。確かに」
彼女は自分の事をオレと言ったり、ちょっと荒っぽい口調なんだけど、れっきとした女性だ。この学校に入ってから初めて知り合ったんだけど、何故か妙に気に入られたみたいでこうして僕たちの会話に入って来ることがあるんだ。
髪は赤毛のショートで、身長は他の2人に比べたらやや小柄だけど、それを補って余りある行動力というか、力強さが有る子だ。そしてざっくばらんな言い方をするけど物事の本質を突いた意見が多い。正直、まだ一週間くらいの付き合いだけど人間的には信用できるって思っている。
それに、鳴松さんの言うことも正しいと思う。
襟口さんが言ったように「助けてくれ」って言われたら助けるべきだろうけど、そもそもクラスメイトにお金の相談をするっていう状況は僕にも想像つかないからね。
これなら先生が「お前には関係ない」っていうのも分かる気がする。
そもそも相談されたからってお金を渡すのか? っていうのも違う気がするしなぁ。
うーん、この場合だと、彼女がお金を稼げるようにするためにお仕事を紹介すればいいのかな? でも僕たちは学生だし……やっぱりお金が絡むと簡単にはいかないよな。だけど、もしも彼女が噂の男子に無理やり何かをされているようなら、僕は後のことなんか何も考えずに助けると思う。
もしも噂の男子生徒が何か木下さんの弱みを握っていたとしても、僕たち皆の力を合わせれば木下さんを助けることができると思うんだ!
(……分かっていますわね?)
(えぇ。これ以上のライバルは要らないわ)
(だな)
「どうしたの?」
「なんでもありませんわ」
「そう、なんでもないの」
「ま、ここは女同士で話してみるから龍造院は少し待っててくれよ」
「ん? あぁ。女性にしか言えないこともある、か?」
「「「そうそう」」」
(木下ってのがどんなヤツかは知らねぇが、恩とか何とか言われて付きまとわれても困る。龍造院が動く前にオレたちで片付けようぜ)
(えぇ)
(ですわね)
うんうん。何だかんだで3人とも優しい子だから、木下さんのことを心配しているみたいだ。
「わかった。それじゃよろしく頼むよ」
「おまかせあれ」
「任せて」
「オレらに任せな!」
まずは木下さんが登校してきたら、何か酷いことをされてないかさりげなく聞いてもらおう! それで僕たちにできることがあったら助けてあげなきゃね!
―――
一方その頃。壁を越えた先にある某所において、件の少女と男子生徒が一つの卓を囲んで言い争いをしていた。
「ししょ~。豚さんが重いんですけど~」
「頑張って消化しろ。オークはDランクの魔物だから、吸収できれば素体だって相応に強くなるんだぞ。まだGランクのお前に対するご褒美としては破格なものだろう?」
「いや、それはそうなんでしょうけど」
「けど?」
「私としては素体に吸収した豚さんよりも、さっきまで目の前で焼かれていたONIKU様が欲しいわけでして……」
「もう(お前にやる肉は)ない」
「素体に仕舞っただけでしょうがっ!?」
「あきらめろん」
「は? メロン? あ、あぁ! 動けない私の前にメロン様なんか出しやがった!」
「泣け、喚け、未熟さを呪え。そして絶望を知るのだ」
「こ、この外道! 人でなしぃ!」
「今更なにを言っているのやら。うむ。よく熟成されていて……あぁ。この甘さを誰かに分けてやりたい」
「そ、それなら私の分も……」
「おっと、もうなくなってしまった。残念無念。また来週」
「う、うがぁぁぁぁぁ!」
「うむ。負け犬の遠吠えを聞きながら食うメロンは美味いなぁ!」
「お、おのれおのれおのれ~! 絶対に復讐してやる~!」
「それができたら一人前だ、できたらな」
「くっそぉぉぉ!」
「ふははははははは」
――そこには同級生が想定している酷いこととは別物ではあるものの、間違いなく酷いことをされている少女がいたそうな。
週明け、少女が同級生から『なにか酷いことをされなかったか?』質問を受けた際、なんと返答をするのか。
クラスメイトを巻き込んだ問題が起こるか否かは、週明けに登校するであろう少女の言動に委ねられていた。
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