表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/49

⑳ 少女、汚れる

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


目を¥マークにした女子高生が小動物ゴブリンに襲いかかる。


その様はまるで初期のヤム○ャが水平ジャンプして敵に襲いかかっているような感じだな。「足元がお留守ですね」とか言われそうな、完全に勢い任せの突撃である。迂闊と言えば迂闊だが、普通のゴブリンにはその突撃を捌くだけの技術は無いから今回はそれで正解。


「ゲギャッ!」


「まぁぁだぁぁぁぁだぁぁぁぁっ!」


ショルダータックルを食らってよろめくゴブリンに対し、追加の平手打ちを加える弟子。うーむバランスも何もあったもんじゃないが、最初はあれで良い。


平手打ちは女の遺伝子に染み込んだ最古の攻撃だからな。彼女が今使える技の中では最も自然に出せる攻撃だろうよ。


「ゲッ!?」


弟子の平手を食らって、ゴキンと言う音を立てて首が変な方向に曲がるゴブリンA(仮称)


「「「……ギャ?」」」


「えっ!?」


首が曲がっちゃ行けない方向に曲がり『どういうことなの?』という顔をしながらドサリと倒れるゴブリンA。それを見て動きを止めるゴブリンB・C・D(被害者)と、自分でも予想外の光景を見て動きを止める女子高生(加害者)の図である。


「ほらほら、止まってないで動け。まだ100円だぞ。残り300円。しっかり回収しろ」


最初の殺人(殺ゴブリン)で動揺する気持ちはわからんでもないが、今は戦闘中だ。悠長に動きを止めてる暇などない。


「あ、そ、そうだ! 300円あれば妹にオヤツを買ってあげられるんだ! だから死ねぇぇぇぇ!」


妹のオヤツの為に殺されるゴブリンが哀れなのか、妹のオヤツの為にゴブリンを殺そうとする弟子がサツバツしすぎなのかはしらんが、これだけ見ればどっちが危険な生物なのわからんな。


いや、人間が他の野生動物から見たら危険極まりない動物なのは事実だし、今回だって普通に暮らしてたゴブリンたちを俺たちが襲撃した形だしなぁ。まぁ向こうにしてみたら人間の女は天敵兼餌兼苗床候補って感じだし、俺たちにしたら種族的な敵で、いわゆる種族間抗争の相手だから同情する気は毛頭ないんだが、なんだかなぁとは思う。


俺が世の儚さを感じている間にも、戦闘は続いている。


「お前がっ! 死ぬまでっ! 殴るのをっ! 止めないっ!」


「ギャ! ギュ! ギョッ!」


ゴブリンBにビンタをかましたあと、上に乗って殴りつける弟子。うーむ追撃を忘れて逆襲されるよりは良いんだが、オーバーキルもよろしくないんだよな。そもそもビンタ一発で死ぬんだから無駄な攻撃は加えんなよと言いたい。


まぁ今回はそういう加減とかは後回しにしてるからシカタナイ。色々と学べばいいさ。


「「ギャギャギャッ!」」


ほれ残りのCとDが再起動し、Bに対して馬乗りになって殴り続けてる弟子に攻撃を加えようとしてるぞ?


「ギャ!」


Cが左からで


「ギャギャ!」


Dが後ろ、か。左右や前後じゃないのは奴らなりの経験か? ということはコイツらは何度か人間相手に勝利している? ふむ。ならこいつらの巣穴には()()()が有る可能性があるな。


……さて、どうしたものか。


「ゲギャ!」


「しゃらくせぇぇえ!」


弟子は左から来たゴブリンCに対して迎撃を選択した。振り下ろされたこん棒を左手で受け、右手で反撃しようとする。その判断も決して間違いではない。だがなぁ。


「グギャギャ!」


ゴンッ! という音が周囲に響く。


「あうっ!」


左のゴブリンCに集中していたことで完全に見落とされていた存在。つまり後ろのゴブリンDが全力で振り切ったこん棒が、弟子の後頭部に叩き込まれた音だ。


これが普通の女子高生ならここで死んでいただろう。いくら探索者としての素養があって、多少強化されていた場合でも、間違いなく脳震盪を起こしてダウンするような一撃だからな。


通常であればそのまま巣穴で苗床コースは確実だ。


「ギャギャギャ!」


勝った! 20話、完っ! とでも言いたげに勝ち誇るゴブリンD。あれは、これから弟子を戦利品として巣に連れ帰り、苗床にしようと言うつもりなのだろう。しかし、ゴブリンにとっては誠に残念ながら、弟子にとっては非常に幸運なことに、その弟子は普通の女子高生ではない。


「痛いわねっ!」


「グギャッ!」


「ギャギャ!?」


うむ。攻撃をくらった後頭部を抑えて涙目になってはいるが意識はハッキリしているようだ。そのままCにビンタをかましたあと、自分に攻撃をしたゴブリンDを睨みつける。


睨まれたゴブリンは「バカな! 直撃のはずだ!?」と狼狽えているが、ゴブリンのGランクの攻撃力では、あご先とか側頭部などの急所に当たらない限りオーガの素体を移植された弟子の頑強さを貫くことはできない。


ちなみに素体持ちがゴブリンに殺られる場合は、数えるのも億劫になるような数で押し倒された後に目とか口に攻撃を受けて殺されるケースが一番多い。よって今回のように相手が4体しかいない状況で、素体を移植された弟子が負けるというのは通常有り得ないことなのだ。


まぁ弟子だけなら、援軍を呼ばれたり腰が引けたところを狙われて引き倒されて殺られてたかもしれないが、今回は俺が居るからその心配もない。


ゴブリンも野生動物である以上、圧倒的強者が居るところには近付かないのだ。


この4体も俺に見つかった時点で終わっていたが、こいつらには俺の気配を悟らせないようにしているからな。いやはや、なんとも弟子思いな師匠だな。


「でやぁぁぁ!」


「ハギャ!?」


自分の頭をぶっ叩いたゴブリンDに反撃を食らわせて終了。無傷で「400円ゲットだぜ!」と言いたいところだが。


「師匠! 勝ちました! 400円ゲットです!」


満面の笑みで殺戮報告をしてくる弟子。だが残念だったな。


「ギャギャギャ!」


「え? きゃぁ!」


いきなり足元から現れたゴブリンに驚き、バランスを崩してしまった結果、弟子は顔付近に馬乗りされてしまった。


「え? 何? どこから! っていうか、臭いっ!」


うん。ゴブリンとのサイズ差から、馬乗りされると股間が顔の近くに来るんだよなぁ。その結果が直で臭いを嗅ぐことになるんだが……臭いに顔を顰めてる暇があるのか?


「ギャッ! ギャッ! ギャッ!」


「キャッ! グッ! い、痛いっ!」


顔を顰め、目を閉じた弟子に対してこん棒で攻撃を加えるゴブリンC。そう、コイツだけが一撃で死んでないのだ。理由としては、ゴブリンBに馬乗りになっていたことでCに対するビンタに下半身の力が乗ってなかったからだな。そのせいで殺しきれなかったんだ。


『死ぬまで殴るのを止めない』と言っていたのはどうした? と言いたいところだが、ゴブリンDの存在に気を取られたからな。これが複数相手の怖いところだ。


ゴスゴスとこん棒をぶつけてくるゴブリンCと、それを必死でガードする弟子。まだ顔には食らってないが、ガードしてる両手には間違いなくダメージが入っている。


オーガの耐久が有るから「痛い」で済んでるが、本来なら腕を折られているぞ。でもって援軍を呼ばれて足を折られて、反撃も逃げることもできなくなったところを巣に連行。ってのがゴブリンの必勝パターンだ。


人間顔への攻撃は「大したことが無い」とわかっていてもどうしても防御してしまうし、そして馬乗りされてる状態ではまともに攻撃も届かないので、一方的に殴られる事になる。


これをどうするか? 本来は格闘技を学べば良いのだが、今は良い経験と思ってもらおうか。


「ギャギャギャギャギャ!」


「痛い! 痛いっ! それに臭い! うわっ! コイツなんか粘っこいの出してきた! ナニコレ! うわっ! うわっ!!」


興奮したゴブリンからアレが出たかぁ。


「一回一回風呂に入れると思うな」とは言ったものの、アレはなぁ。血や体液だけならまだしも、アレを付着させたままで連戦はキツイ。主に俺が。


それはそれとして、弟子は何だかんだで余裕があることに気付いてるだろうか? それに気付けばガードは片手で十分だし、残った手でゴブリンを撲殺できるということも分かるはずなんだが。


「いい加減にっ!「ギャギャ!」うっ! クソッ!」


一瞬切れかけて防御を捨てて反撃しようとしたが、やっぱり顔面への攻撃は怖いのだろう。どうしても防御に両手を使うし、さらに正体不明の粘っこいのが連続して来るので、それが目に入らないようにするために目を閉じて視界も捨ててしまった。


詰みだな。


「ギャギャギャ「そこまで」グギャ?!」


弟子の上で盛りに盛って全身とこん棒を振るゴブリンを仕留める。


これ以上は経験ではなくトラウマにしかならんと判断して介入したんだが、遅かったか? それとももう少し様子を見るべきだったか? 介入といっても指弾で礫を飛ばして頭を弾くだけだから、いつでもできたんだが、どうもタイミングがって……あ。


「え、何!? 生暖かいのがブシャってかかってきたっ! しかも止まない? 臭いし温いっ! なに? なんなの!? 次はなんなのっ!?」


礫でゴブリンの頭をぶち抜いた結果、ドサリと倒れたゴブリンの体から止めどなく流れ出てくる血が弟子に直撃している。一見コントだが目が見えていない弟子からすれば洒落にならんほどの衝撃だろう。


「う、うわぁぁぁぁぁ! 助けて! 助けてししょーー!」


うん。何というか……すまん。



閲覧ありがとうございます



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ