表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/49

② プロローグ的な話・後

本日二話目の投稿になります

「お願いします!」


次の日の朝、徹夜で見張りをしていたため(見張りのせいだ。間違いない!)眠たげな顔をしていた両親を前に、俺は自分を鍛えてほしいと懇願していた。


体ができていない内から過度の筋トレをすると成長を阻害する可能性がある。という知識はあるが、だからと言ってまったくトレーニングをしないなんて有り得ない。


何せここはモンスターが普通に存在する世界だ。


腕立て十回でも良いし、簡単なランニングもした方が良いだろう。


そう思ってたんだけど、両親からはまずは俺が持つ知識の確認がしたいって言われたんだよな。


確かに知識のすりあわせは大事だ。


変に何でも知ってると思われたらアレだし。

俺にとっての常識が世間の非常識って可能性は非常に高い。


大体にして常識なんて時代や環境で変わるもんだからな。


当たり前に武器を所持してる両親を見れば、自衛の必要性もわかるし、荒れ果てた廃村っぽい街並みを見れば、俺が知る日本とは色々な事が違うのは一目瞭然だ。


そんなわけで話をしていくと。俺の知る知識はほとんど役に立たないと判明した。


さらにこの世界は異世界と言うよりは平行世界。


あれだ、パラレルワールドとか、もしくはゲームの世界に近いのかもしれないって思ったね。


―――


とりあえず今の情勢はこんな感じ。


今からおよそ150年前の1999年、世界に恐怖の大王ではなくダンジョンの種が降ってきた。


もうこの時点でツッコミどころなんだけど……まだだっ! まだ終わらんよ! 誰がやった事なのか? 何が目的だったかは判明していない。


だが、ダンジョンの種は確かに地球の各地に降り注いだ。


その数は少なくとも百以上。当時は落下地点とされる場所には何もなく、小規模な穴が空いただけで、その穴の奥にも何も無かったそうだ。


その為、ダンジョンの種は小型の隕石か、人工衛星の部品がバラバラになって降り注いだとして処理されたそうだ。


NASAは何をしていた? とか、各国で観測していたんじゃないのか? という話もあったらしいけど、そもそも人工衛星ってのは技術の塊だから、自壊させて大気圏に突入させて完璧に破壊するってやり方も有るらしいんだよな。


その部品が燃え尽きずに生き残って、地面にぶつかって完全に破壊されたってパターンも有るようだ。んでもって、その場合落下してきた人工衛星なんだけど、作った時点では当時の最先端技術ではあっても自壊させるまでには最低でも数年経ってるケースがほとんどだ。


つまりは型落ちってわけだ。


そんなんだから、わざわざ真剣に予算を使ってまで調査なんかしない。地元のテレビ局辺りに金と情報をやって、奴等に取材という名の調査をさせたりするんだとか。


隕石の場合は本物ならきちんと調査をするんだろうけど、隕石が地球に落下するまでには必ずその存在は観測されている。何もない場所からいきなり隕石が現れて、大気圏を突破して地上に激突するなんて有り得ないからな。


つまりこの人工衛星説や隕石説は当時の自称知識人やマスコミやら地元の人間や、自称専門家やらの出した結論から通説となったモノであって、きちんとした真実に基づく事実ではなかった。


で、それが何だったのか判明したのが、種が降り注いでから10年後の2009年。


きっかけは、世界中で『モンスターの大氾濫』と呼ばれる大惨事が発生したこと。


ダンジョン系の小説で良く有るように、ダンジョンを長年放置した結果、内部で産み出されたモンスターが地下から溢れて来たそうだ。


それも全世界で、一斉に。まぁ、ダンジョン系の小説を読んだことがある身としては、わからない話じゃない。


なにしろ10年前に地球に降り注いだそれがダンジョンだっていうアナウンスも無ければ、目立つ入り口があったわけでもないんだからな。それにそこは隕石の落下跡としか思われてなかったところで、都市部なら舗装するだろうし田舎の場合は放置したらしい。


放置って……有り得るかぁ!(cv子安)と思うのは土地が足りない都会の人間の価値観で、田舎の人としてはそんなに珍しいことじゃない。


日本人は基本的に事なかれ主義だし、他の国の農家の方々だって普通はそこで農業をしようとは思わないだろう。そもそも日本と違って大規模農家の比率が高いし、大陸国家の「大規模」は日本人の想像を越えているからな。


つまりよほどの事がない限りは放置したり、埋め立てて駐車場にしたり、何か別の建物を建てていたって感じだったみたいだ。つまりは普通に地面に蓋をしてたような感じの場所から、いきなりのモンスター大氾濫である。


当然ながら、世界中で多数の被害者が出た。いや、今も出てるから過去形にしちゃ駄目なんだろうな。


それはともかくとして、そんな中でアメリカや中国、ロシアは当然のように核や水爆を使用したらしい。当初は理由はわからなかったが、魔物は特定の地点を中心に出てきたことはわかってたからな。


そのポイントに爆撃を行い、かなりの数を殺したそうな。

それでもダンジョンを破壊できた訳じゃなかったけどな。


とはいっても、決して無意味でも無かった。何せ大量のモンスターを減らした後で、その発生源と見られる穴を発見したからだ。この穴に調査隊を入れ、モンスターの発生源と判明したことでこの穴がダンジョンと呼ばれることとなった。


そこに軍隊が派遣されたのが世界史における最初のダンジョンアタック。結果として最初のダンジョンアタックは多くの犠牲を払い失敗したが、それでも得るものは有った。


まず穴の場所は10年前に隕石が落ちたとされる場所だった。


当時のデータを漁れば世界中の落ちた場所を特定することが出来たし、発生源と魔物の分布を見ればハザードマップのようなモノも作れるわけで……まぁ作れたのは先進国だけだったらしいけどな。


そして更に人間を後押ししたのはHENTAI国家日本のOTAKUだった。


世界がダンジョンやモンスターに対して対策を練っていた頃、モンスターを目にした彼らは当たり前のように、むしろ嬉々として魔物を倒し(当然反撃されて死ぬヤツも多数居た)その死体から魔石という魔物の核の様なものを見つけ出したそうな。


更に彼らは魔石が画期的なエネルギー源になることをはじめから知っていたかのように大量に収集し、研究を始め、実際に多大な成果を上げたのだ。


そして驚くべきことに、魔物を倒せば倒すほど肉体強度が上がるということも証明したらしい。いや、ある意味テンプレではあるけど、OTAKU凄ぇな!?


この現象は後にレベルアップと呼ばれることになるが、レベル1だのレベル2だの、そういうステータス表記はされないそうで、握力とか百メートル走のタイムで、ステータスを表記するらしい。


握力100キロから150キロで力がEランクとか、そんな感じ。更に装備品も強化されることがわかり、飛び道具よりも近接武器の方が尊ばれることになる。


そして、モンスターに対抗する策を得た日本はその技術を世界中に広めたらしい。(もちろん有料)その結果、喰うために人間を狩るモンスターと生きるため命(魔石)を奪う人間の戦いが始まったそうだ。


それから150年。様々な技術の革新や、特殊な技術の考案により、人間はそれなりに生活圏を取り戻しつつあるが、それでも俺が知る世界のように無防備に都市の外を出歩けるような状況では無いらしい。


科学技術に関しても軍事技術は発展したけど生活に関することでは進歩はあまりなかった。


いや、魔石から生まれるエネルギーは従来の石油や、各種発電施設から生まれる電気に代換出来るモノだったけど、いきなりそれに換えることなんか不可能だったんだ。


電気族とか言われる国会議員の連中の邪魔は当然あったし、既得権益ってわけでも無いけど、発電所とかガソリンスタンドが無くなった場合の雇用問題や、魔石が採れなくなった場合の技術的な保険も必要になると判断されたからだ。


まぁ言われてみればそうだよな。


ガソリンスタンドとかは原油が輸入出来なきゃ意味がなくなるからまだしも、いきなり現れた魔石なんてモノに国内のインフラを全て賄わせるのはかなり危険だ。


いきなり出てきたモノは、いきなりなくなる可能性もある。


だから日本の政府は魔石を直接のエネルギー源ではなく、電気を創るための源にしようとした。これなら魔石や原油が無くなっても、従来の水力や原子力でも電気を創れるからだ。


それらの開発やら何やらもあったし、そもそもその科学技術はエネルギー源や軍事面に力を振られた為に、俺が居た世界のようにトイレや電子レンジ、テレビやエアコン、さらにはスマホ等と言ったモノを必要以上に改良することは無かった。


快適な生活より、まずは生き延びることを前提にしたんだから当然だな。むしろ食料自給率を上げるための畜産やら農産用に力を注いだらしい。


その結果、空中栽培みたいな技術が発達。ビオトープみたいな感じで、都市内部の限られた狭い土地でも地下や高さがある建物を作り、農作物の生産量を跳ね上げることに成功した。


ダンジョンから出てきた魔物と種族間戦争をしながら、軍事技術開発を行い、エネルギー革命をおこし、さらに旧来の電化製品との接合性も得て、食料事情まで改善である。


発展するモノとしないものがはっきりわかれているんだよな。ちなみに人が住む都市については、見せてから話すって言われたから今の俺には良くわからない。


地下都市みたいな形になってるのか、それともド○クエとかみたいに普通に柵みたいなので囲われているのか、はたまた古代中国みたいに城壁が有るのか、壁に魔物や巨人が埋め込まれてるのか。


とりあえず、都市についての考察は良いとして、次は今の両親や俺の状況だ。


どうやら両親は何かをやらかして都市から追い出されたとかではなく、外に出てモンスターを狩るのが仕事らしい。


こうやってモンスターを狩って数を減らしたり魔石やら何やらを集めることを生業としてる人たちは探索者(シーカー)と呼ばれるらしい。(冒険者じゃねぇのな)


でもって今は各国が探索者ギルドの様なものを作り、モンスターから獲れる魔石や部位を研究したり、装備品に加工したりしているわけだ。


飛び道具よりも近接武器の方が尊ばれるのになぜ父さんが銃の様なものを使ってるのかと言えば、父さんの持っている武器は銃剣と呼ばれる武器で近接戦闘も出来るモノだったんだ。


離れた小物を倒す程度なら普通の飛び道具でも可能だし、銃みたいな飛び道具でモンスターを倒しても装備品は強化されるんだとか。


弾丸が強化されても意味が無いように思えるかも知れないが、銃身が強化されれば、それだけ銃剣としても使えるようになるし、威力の有る特殊な弾丸を使うには銃身にも一定以上の強度が必要になるらしい。


同じように弓使いも存在する。肉体に合わせて弓の本体(名前がわからない)と弦が強化されればその分威力が出せるし、特殊な矢による攻撃は空を飛ぶ大物すら狩る事が出来るとか。


そうだよな~。空飛ぶ魔物も居るもんな~。

……知れば知るほど人生の難易度が上がっていく。


だけど、必要なことを知らなければそのまま死んでゲームオーバーだ。


母さんが使ってた生体兵器みたいなのを使えば空を飛ぶことも不可能じゃないらしいけど、まぁあれについては後だ。完全にロマンと趣味全開の装備だが、きっちり効果が有るから手に負えない。そんな武器やら防具があり、更には科学技術と融合した世界がこの世界なんだ。


俺の目の前にはOTAKUに時間と金と素材と大義名分を与えればどうなるかって答えが目の前に有る。当然ただの趣味じゃなく、生き残るための武装だから、ロマンよりも性能重視ではあるが、溢れでるロマンは隠しようがない。


なんにせよここはモンスター溢れる世界で、さらにそれぞれの国家もあるようだ。確実に碌でもねぇ政治の沼だってあるだろう。


それでも生きるためには何でも使うさ。


何の為に生きるのかって? 理由なんか無いよ。どこぞの主人公も言っているじゃないか。死にたくない。だから戦うのだと。


でもって俺の持つクソの役にも立たない記憶(知識)の中でも、喜ばれたのがいくつか有る。


まず基礎的な礼儀作法とトイレやら何やらの使い方の知識。


さらに簡単な数学や国語の知識だな。幼少期の面倒な時期が無いと言うのは大きい。文字に関しても、文法がちょっとアレだが、使われてる文字は平仮名、カタカナ、漢字、アルファベットとそんなに変わってない。


むしろOTAKUの大半が日本人だったから日本語が世界でも多く使われてるとか。


だが何よりも喜ばれたのは


「死にたくなかったら鍛えろ」

「勉強は若いうちからやれ」

「若いうちから資格を取れ。働きながら取れると思うな」

「他人が持ってくる儲け話は全て詐欺だ」

「家族以外の人を信じるな。数字を信じろ」

「ギャンブルをやるなら胴元になれ」


と言った教訓めいた知識だ。……一体俺の前世に何があったんだと思わなくも無いが、言いたいことはわかる。


つまり自立出来るように若いうちから

勉強しておけってことだ(だよな?)。


「いやぁ、本当に助かるわ~。普通は子供にそういうこと言っても実感がないからわからないじゃない?かえって反抗しちゃってグレても困るなぁって思ってたのよね」


笑いながらそう言って頭をかく母さん。どうも身に覚えがあるらしい。


「だな。今になれば親の言っていたことが正しかったと理解できるが、当時はそんなこと言われても『うるせぇ』としか思わなかったぜ」


父さんもうんうんと頷きながら同意している。

この人はまぁ、心当たり多そうだよな。


「まぁ俺らのことは良いんだ。とりあえずこれからはお前も鍛えることにする。鍛えるといっても筋肉云々は鍛えすぎれば成長を阻害するかもしれんから、魔物を倒すようにしよう。そっちの成長は筋肉とは別物だって話だからな」


父さんが膝を打ってそう宣言した。

その内容に異論はない。


ガキの頃から鍛えすぎれば、周囲から怪しく見られるかもしれないけど、それでも子鬼に食われて死ぬよりはマシだ!


そう思った俺は両親に頭を下げて教えを請うことにした。


「よろしくお願いします!」


あんまり他人行儀で硬いのは嫌かもしれないけど、礼儀はしっかりしなきゃダメだ。


この人たちは紛れもなく俺の両親だし、普通に鍛えてくれるんだろうけど、今の俺ってかなり特異な存在じゃん? ならばいっそのこと親としてではなく、師匠として厳しく鍛えて欲しいって思ったんだ。











目覚めたら世紀末を通りすぎて更に次の世紀末を越えた世界にいた。

この世界が異世界なのか、それとも近未来なのかはわからない。


でもそんなのはどうでも良いんだ。俺はこの世界で生きていくことを決めたんだから。



閲覧ありがとうございます


面白いと思っていただけましたら、下部の☆をクリックしてポイント評価をしてもらえたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ