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⑭ 主人公、狩りをする

「なんでだよ」


「ふぎゃっ!」


とりあえずトチ狂った木下にツッコミという名の当身を食らわせて気絶させる。さっきまではコイツの意思を尊重しようと思ったが、もうそんなのは無しだ。お望み通り可愛がってやろうじゃないか。


ネ○リン棒にしようかパラ○ュート部隊にしてやろうか……


「あ、あの、大丈夫なのソレ?」


俺がどうやって可愛がってやろうかと考えてたら、木下と一緒に茶を飲んでた(木下は水だが)受付嬢っぽい女が声をかけてきた。


ソレっていうのは、勿論俺のツッコミを受けて白目を剥いている木下だ。


視線から察するに8割の情報収集と2割のお節介ってところか? 正直俺はギルド職員を信用してないので受付嬢ごときに個人情報を渡す気は無い。無いんだが……。


「お気遣いなく。というか貴女は現役の探索者でしょう? 何故受付嬢の制服を着ているんですか?」


気になってしょうがねぇよ。受付嬢っぽいってだけで実際は受付じゃない。明らかに身に纏ってるモノが受付嬢の領域を超えている。他の連中も注意を払ってないことから、認識に干渉する能力があるだろう。そんなのが何故受付嬢の真似をしてるのか、なぜ木下のような見るからにズブの素人である学生に声を掛けるのか。


オッサンがあえて泳がせてたって可能性もあるんだが、それなら俺の関係者に手は出さないよなぁ?


「……」


オッサンの都合はどうでもいい。問題は俺の言葉を受けて沈黙したコイツが木下に接触してきた理由だ。普通なら情報収集と考えるべきなのだろうが、そもそも学生から得られる情報など高が知れている。


学生をこんなところに連れてくる師匠の存在が気になったと言われればそうなんだろうが、それを気にしたところでコイツには何の得にもならない。むしろそんなことで接触してきたら自分の敵が増えるだけだ。


好奇心は猫を殺すってのは探索者の常識。そして基本的に他人の弟子に関わるのはご法度だ。これがもし「彼女の師匠は間違いなくプロだろうから、その師匠とお近づきになりたい!」というなら、師匠と一緒のところで声をかけなければ印象は悪くなる。


なにせ探索者の前身は、基本的に秘密主義(同好の士以外に自分を明かさない)で浪漫主義(秘密兵器とか大好き)を悪魔合体させ、意図的な合体事故を起こして出来たモノを熟成させた存在であるOTAKUだ。


それが自分のいないところで自分を探られて良い気分がするなんてことは無いってのは常識だし、それに弟子を経由した回りくどい間接的な接触なんざ「ナニカ企んでます」と言っているようなモノだ。印象が良くなるはずも無い。


つまりこの受付嬢モドキは、力はあっても探索者の習性を正しく理解できてない存在で、他の探索者の情報を集めて得をするような存在なわけだ。


そんなの俺の中では一つ、いや二つしかない。


「……政府の犬か共生派か。どちらにせよ探索者()の敵だな」


見た目も悪くないからハニトラ要員としての役割も有ったんだろうが、そんなのに騙されるギルド職員が居るとは思え……いや、結構居るかもな。


さらに認識を弄る系の能力が有るならアンブッシュで職員を捕獲して情報の搾取も可能だし。


あぁいや、それに関しては良い。とりあえず俺は目の前にいる敵を見逃す気はない。俺の予想が違っていたら?


「スマン。弟子にちょっかいを出してた工作員と勘違いした」と言って謝るだけだ。


だから……


「とりあえず足と腕をもらうぞ」


「!?」


俺がある種の意思を込めて敵対宣言をすると、向こうは目を見開いて硬直したが、一瞬で立て直し、すぐに距離を取ろうとした。


俺がわざと出した殺気に反応する程度の実力者だが、なかなかのスピードを持っている。


やはり潜入工作のプロなんだろう。だが、良いのか?


「そっちには俺より怖いナマモノが居るぞ?」


「え?」


追撃をしない俺を訝しげに見たあとで、俺の視線が自分ではなく後ろにあることに気付いた受付嬢モドキはバッと後ろを確認する。


反応は良い。だが本来ならそれは悪手だ。自分より強い相手を目の前にして視線を逸らすなど自殺行為以外のナニモノでもない。だが今回は例外。俺に手を出すつもりはないからな。


それにこいつ程度が後ろの相手を確認できてもどうしようもないし。


「ほほぅ。おもしれぇこと話してるじゃねぇかよぉ。その話ぃ、じっくり聞かせてもらおうかぁ?」


そこには自分より強い敵()よりさらに強い敵(支部長)が居るのだから。


そして出来上がるのは凶悪な顔でニヤリと笑うオッサンとそれに怯える受付嬢モドキの図である。状況を知らない奴がこれを見れば、事案として通報するのが正しいのだろうが、残念ながら今回に限りオッサンが正義の味方だ。


「くっ!?」


「さっきから驚愕で目を見開いたり声を上げたりと、随分未熟な工作員だな」


いや、まぁBランク以上の狩人でもいきなりオッサンが現れたら驚くだろうけど。


でもってアレか? 今のは「いつの間に!?」とでも言いたかったか?


情報不足だな。


このギルド支部は4階だけでなく建物全てがダンジョンだ。だからこの支部の内部での会話はダンジョンコアに筒抜けだし、ダンジョンコアが自分の中にいる政府の犬()を見逃すことなど有り得ない。


そしてアレは純粋で嘘が下手だからこそ、悪意や嘘や誤魔化しには敏感だ。人間が騙しきることは不可能に近い。


受付嬢モドキも、こうしてダンジョンコアが滞在するギルド支部に派遣されるだけ有って優秀な工作員なのだろう。だが何か怪しいとは思われてたんだろうさ。そして今、俺との会話でその正体を確信した為、市松人形がDPを使って支部長を転送した。ってところだろうかね。


「とりあえず殺しはしねぇが、手足は潰すぜぇ。面倒だからぁ無駄な抵抗はすんなよぉ~」


そう言ってオッサンが拳を構えるが……相変わらず性格が悪いオッサンだ。


「くっ! 逃げ、られない!?」


流石にギルド支部内で現役のAランクと正面から戦闘しようとは思わなかったのだろう、潜入技術に必須の脱出に関するスキルか何かが有ったようだが、残念だったな。


オッサンの前(ボス部屋)ではオッサン(中ボス)からは逃げられんよ。


逃走に失敗したことで動揺したのだろう、完全に動きが止まったところでオッサンが右の拳を前に突き出した。見た目だけなら空手の正拳突きに近い、だが違う。


「ぐっ!」


何か来る! と判断したのだろう。とりあえず間合を外そうとした受付嬢モドキだが、次の瞬間オッサンの宣言通り、その両腕と両足が破裂することになる。


うむ、ここで「きゃぁ!」とかじゃないのはコータ的にポイント高いぞ! ……高くなったからと言って何か有るわけでもないがな。


ちなみに今のオッサンがやったのは擬似的な百歩神拳だ。ただし高ランクの探索者なら誰でも出来るような、単純に空気を圧縮して飛ばしたモノなどではなく、オッサンの持つ素体の魔力と特殊に分類される闘気を込めて放つ技なので、突き出された拳の数と被弾回数は関係ない。


もっと言えば構える必要も、拳を突き出す必要もない。つまりあの行動自体が回避されたときの保険を込めたブラフだ。


と言っても、オッサン的には構えたり拳を突き出した方が気分が乗って威力が少し増すらしいが、その辺はオッサンの自由だろう。


「この程度か? ……ならこれは潜入専用に鍛えられた犬だな」


語尾を伸ばさずに冷めた目で受付嬢モドキを見下すオッサン。実はこっちがオッサンの素だ。普段は顔や仕草のせいで娘に怖がられるので、わざと間延びした感じで話すようにしているとかなんとか。(効果が有るかどうかは不明)それもオッサンの自由だから、俺からは何とも言えん。


「犬ですか、それなら生かす必要は無いですよね?」


「おうよ。あぁ、尋問についてはお前さんも参加できるぞ。参加するだろ?」


簡単な止血を行うオッサンに受付嬢モドキの生死を問いかければ、当たり前のように肯定した上で、尋問に参加する許可を出してくれた。


うむ。俺たちは共生派も政府の犬も生かす理由がないからな。それに魔物が使う魔法や素体による特殊な能力がある世界なので、こうして捕らえた敵は皆殺しにしないと情報が拡散されてしまう。


生かして使おうにもどんな爆弾が埋め込まれてるかわからんし、そもそも使い道も無いからな。二重スパイ? 無理無理。そんなわけでスパイは見敵必殺が基本だ。捕らえることが出来たら拷問の後に殺すだけ。助かるという未来はない。捕まったニンジャに与える慈悲は無いのだ。


「無論です。地下の医務室で木下に素体を移植したら行きますので、先にヤってて下さい」


そんなわけで元々尋問したら処するのは確定していただろうから、生死に関しては確認するまでもなかったが……オッサンが言ったように俺の本題は尋問への参加だ。


この受付嬢モドキが木下から何を聞いて、誰にその情報が渡ったかを知る必要が有る。


そんなわけで、さっさと移植を終わらせて尋問に参加するとしようかね。


「いや、素体を移植って、そいつにか? 俺には気絶してるようにしか見えんが……」


俺の宣告を聞き、素体が移植されるであろう者。


つまり未だに俺の足元で白目を剥いてる木下を見たオッサンはなんとも言えない顔をしてるが、今更だな。


「五月蝿くなくて良いでしょう? もしかしたら痛みで起きるかもしれませんが、それも探索者として必要なステップアップのためですよ」


無料で素体を移植してやるんだから文句なんざいわせんぞ。


「いや、それはそうだがよぉ」


オッサンがさらに何とも言えない顔をする。


素体の移植は、言ってしまえば肉体と魂に外付けでHDを追加する様なもので、自らの心身の造り変えとも言えるようなものだ。


その為ちゃんとした設備が有ってもそれなりの痛みが伴う。


さらにその追加されるのが改良されたオーガである。さらにさらに個人用に調整されてない素体の移植なんて、ハッキリ言って拷問とかわらないんだが……ま、気絶してるから大丈夫だな。


「あぁ、それと尋問の後でそれを弟子の素体に喰わせてヤっても良いですかね? 勿論素体はカエデ殿で結構です」


それよりせっかくの実力者だ。弾けとんだ肉片や血はすでに市松人形が吸収したようだが、まだ本体が残っているからな。どうせ処分するなら素体に吸収させてやろうじゃないか。


流石にこいつが宿しているであろう素体は今の刺激が強すぎて人格崩壊が起こるから食わせてやれないが、素体がなくとも栄養としては申し分ないはずだ。


「ん? まぁ、今回の報酬って感じだと考えれば良いか。素体が貰えるならアイツも文句は言わんだろうしな」


オッサンはそう言って顎に手を当てて考えるが、それも一瞬のこと。快く許可をくれた。


ヨシ! 餌ゲットだぜ! これで木下の……もう弟子で良いか。弟子の素体の強化ができる。


「っ!」


俺とオッサンの声を聞いた受付嬢モドキは何とか動こうとしているが。無駄だ。この状況で逃がすほど俺もオッサンも甘くはない。


「ハッ。活きの良いガキだ。これなら生きたまま素体を抜かれる痛みに耐えられそうだなぁ?」


「あ、あぁぁ……」


にちゃぁ。といった効果音が出そうな感じで嗤うオッサンから告げられた言葉を耳にした、受付嬢モドキは絶望の表情を浮かべている。


どうやらこれから自分がナニをされるのか少しは知識があるらしい。


で、知識があれば絶望もするだろうよ。なにせ肉体と魂に同化した素体を引き剥がす行為は、麻酔が有っても移植に数倍する痛みを伴うと言われているからな。


それにこいつも潜入工作員なんだから。拷問だの尋問の内容や、その結果がどうなるかは知ってるだろう。自殺? この状況では不可能だ。毒を飲もうが舌を噛みちぎろうが普通に回復させられる。


つまるところ、もはやこいつに残された道は、尋問専用のスキルを持つ魔物によって全ての情報を吸われるか、全てを自白してさっさと俺たちに殺してもらうかしかない。救助? 救援? この建物内に入った段階で身バレするぞ?


つまりサポート役が居たらそいつごと尋問するだけ。そんなわけだから今頃相方は必死に逃げてるんじゃないか? もし現状を把握できておらず、いまだに逃げていないくらいのどんくさいヤツなら、今頃カエデに捕捉されて脳みそを啜られているだろうさ。


それとも俺かオッサンを誘惑するか? 不可能だな。


「とりあえず先に行ってる。ソッチが終わったら地下3階に来いや」


受付嬢モドキを見て笑いながらそう告げるオッサンを見れば、誰がどう見ても美女の拷問を楽しみにしてる悪党にしか見えん。だが、オッサンには疚しい気持ちは一切ない。ただ職務だからソレをするだけだ。


だからこそオッサンの誘惑は不可能である。……もしかしたら小汚いオッサンに尋問されるよりはマシと思ってるかもしれんが、な。


そして俺にはスパイを生かすという楽観的思考がない。


「了解しました。移植はすぐに終わらせます、が。……一応10分後に行きます」


とは言え時間を食いすぎた。 これ以上の時間の浪費はするべきじゃないよな。 せっかく弟子も気絶してるんだし。さっさと話を進めてしまおう。それと、俺が聞いたら面倒になる情報もあるかもしれんから、それまでにギルド内部の情報漏洩を調べてくれよ?


そんな意味を込めて「10分後に行く」と告げれば、オッサンは「おうよ」と一度頷き、尚も抵抗しようとする女の頭を片手で掴み上げながら、俺の目の前から姿を消した。


これがダンジョンコアによる転送なのか、オッサン個人の能力なのかはわからんが、まぁ良い。


俺はギルドやオッサンと事を構える気はないし、そもそも先にヤるべきことがあるからな。予想外の収穫はあったが、元々の目的はコッチだ。


さっさと本題を済ますとしようか。





―――






ネジリ○棒良し、パラシュー〇部隊突貫用意ッ!

望み通り可愛がってやろう!


「レッツ○ンバイーン!」


「む、むぐぅぅぅぅぅ!?!?!?!?!?!?!?」

閲覧ありがとうございます



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