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転生者対抗人生ゲーム  作者: 黒真黒
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第六話 お世話役と護衛役

 コンッコンッコンッ―三度ドアがノックされるともに“お入りしても大丈夫でしょうか”と先程会った…確か白い刺繍の聖女の声がドア越しに聞こえてくる。

 「大丈夫ですよ。入ってきてください」

 丁度よかった、この部屋をあらかた物色し終え、暇していたところだ。

 扉が開き、メイド服を着た白い髪の女性と白い角が特徴的な甲冑の騎士が入ってきた。

 二人とも、転生した儀式場やデイヴィッドとの話し合いの場にいた聖女と甲冑の騎士である。

 「先程もお会い致しましたが、自己紹介はまだでしたね。改めまして、キティ・アームストロングと申します。これから、ヒズミ様のお世話役を務めさせていただきます。聞きたいことや食べたいものなど何か要望がございましたら、遠慮せずご相談ください」

 スカートの端を摘まんで恭しく一礼する姿は、とても絵になっていた。どちらかというと、メイドというより何処かのご令嬢って感じがするが…

 「はい、これからお世話になりますアームスト…」

 「キティです」

 食い気味に言ってきた。笑顔なのにどこか圧のある顔で。

 「よ、よろしくお願いしますキティさん」

 「はい。よろしくお願いいたします」

 彼女と会話するときは、主導権を握られないよう気を付けるべきかもしれない。

 「それでは、フェルさんも自己紹介お願いします」

 甲冑の騎士に目を向ける。頭の左右から出ている角に視線が向かう…アイギズ特有の宗教的象徴(シンボル)だろうか。

 「オデの名前は、フェル・ブラックモア…デス。よろしくお願いしマス…デス」

 やけにぎこちない話し方だ。訛りか?別の国から来たのか?いや、そもそもこの世界では他の言語が存在するのか?

 「榊原 歪です。よろしくお願い…」

 「すみませんヒズミ様。フェルちゃんは少々特殊でして…フェルちゃん。屈んでください」

 「エ?エ?」

 いきなり挨拶を遮られるとは思わなかった。フェルもよく分かっていないようだ。

 「ほら早く。もっと低く」

 キティがフェルの兜の側面に付属する留め具を外し、前後に開く。

 フルフェイスの兜って、そういう風に脱ぐのか。そんな感想を抱きつつ、ヘルムの下から現れた顔は…

 「角の生えた…女性?」

 角は兜の装飾ではなく本物だったようだ。どことなく牛の様な印象を受けた。

 確かに男性にしては高い声だと思っていたが、女騎士とは…

 「ヒズミ様、見ての通りフェルちゃんは獣人さんです。多少のぎこちなさはお許し下さい」

 どうやらこの世界には、人間以外にも、それに準じた知的生命体が存在するようだ。

 「俺のいた世界には獣人がいなかったから説明してもら…」

 「ナ、ナ、ナ…ナンデ…」

 また最後まで言えなかった。

 「これから一緒に生活するんですから、遅かれ早かれバレてましたよ。それなら早めに言っておいた方が…」

 「そんな話じゃないヨ。こんな不意打ちみたいにやらなくてもいいじゃないカ」

 キティにいきなり正体をバラされて怒っているようだ。

 「打ち合わせでは、兜を取ってから自己紹介するって言ってましたよね」

 「デ、デモ。じぶんノごえいやくガじゅうじんナンテおこられるヨ」

 「なら尚のこと、早めに伝えなければなりません」

 「ウ、ウゥ」

 また兜に顔を隠してしまった。

 「はあ…すいません。獣人についてでしたね。お教えします」

 キティによると、獣人とは、魔獣と人間の交配により誕生した人間種の内の一種らしい。魔獣とは、原初の国エントラムの建国前から存在している、野生動物の様なものらしい。それなら何故‛魔’という文字が付くかというと、体内に魔力を生成する器官を有し、それを駆使して戦闘を行うためである。それと魔獣の中には知性が高いものがおり、食用以外にも人を攫ったり、甚振るなど、人間に対し陰惨な行いをするものが多く存在したためである。あと獣人は魔獣の血が濃いほど身体能力が高くなり、薄くなるにつれ知性が高くなる傾向があるらしい。

 「フェルちゃんはその中でも最も血の濃い、魔獣と人間のハーフなんですよ」

 確かに知りたいことを教えてくれるのはありがたいし、お世話役の役割をしっかり果たしてくて安心できるのだが、フェルが知られたくなかったであろう情報を本人の前でこう一気に話すのは…。このメイド…鬼畜か?それとも敢えて挑発して、下手な気遣いをやめさせようとしているのか。あとハーフの獣人と魔獣が交配した場合は、より魔獣の血の濃い獣人が生まれるんじゃないのか。まあ、今聞くことじゃないな。

 「それで…獣人だと差別があったりするのでしょうか」

 これから共に生活する上で面倒ごとに巻き込まれると…それはそれでポイントが溜まる可能性が増えるからいいのか?

 「それは国に依りますね。聖都アイギズは宗教国家なので、同じ信徒であれば獣人だから差別するということはありません。フェレライを含む西と南側の国は亜人も結構いますので問題はないかと。ただし東は人間至上主義のため、獣人の奴隷が多いらしいです」

 ポイントに関わらない限り東側へはあまり行きたくないな。

 「北側はどうなのでしょうか」

 「北側は…侵略国家ツォルンです。侵略国家のため、人間だろうとそうでなかろうと、他国から奪い繫栄してきました。そして自国民の中では完全能力主義であるため、獣人だから差別されるということはありません」

 自国民の中では…攫われた人間や獣人は、どのような扱いを受けるのだろうか。

 「それでどうですか、フェルちゃんは。護衛役には相応しくないでしょうか」

 「いや、獣人だろうと助けてくれるなら有難いです。これからよろしくお願いします、フェルさん」

 パッと見の印象ではあるが、フェルに何か企むのは難しいだろう。つまりアイギズから俺に対し何か行動を起こす場合、キティを通して行われると考えられる。もしもの時は、キティの行動にのみ注意すればよくなる。それに獣人は元居た世界にはいなかった知的生命体だ、未知の存在はやはり興味深い。

 「いいのカ」

 「はい」

 「西側だとしても差別を受けないとは限らないゾ」

 「でも、僕らみたいに受け入れてくれる人だっています」

 「オデには魔獣の…敵の血が流れている」

 「けどフェルさんは味方ですよね」

 「デモ…」

 「でも、何があってもフェルさんが助けてくれるんですよね」

 「オデは…」

 フェルはしばらく考え、兜を脱ぎ去った。黒い艶やかな長髪が肩にかかり、純白の角が美しいコントラストをなす。

 「オデは…フェル・ブラックモア。ヒズミ様の護衛役ダ」

 「はい。改めてよろしくお願いします」

 取り敢えずの説得に成功して良かった。仮にアイギズから切られることになっても、説得して仲間につけられるよう、フェルとは多めにコミュニケーションを取っておこう。

 「それでは皆さんのステータスプレートを確認してもよろしいでしょうか」

 他人のステータスプレートを一度確認しておきたい。

 「きゃーヒズミ様のエッチー」

 「え?」

 どういうことだ?何か宗教的な理由か?この世界独自の慣習か?

 「キティの冗談だから気にするナ」

 どうやらキティのおふざけらしい。特段拒絶されるでもなく、二人からステータスプレートを受け取り、確認する。


 Name Kitty・Armstrong Gender Female Age 14 Job Cleric

STR 80 CON 80 POW 100 DEX 60 APP 200 SIZ 92 INT 120


Name Fel・Blackmore Gender Female Age 14 Job Beast warrior

STR 130 CON 130 POW 40 DEX 60 APP 200 SIZ 95 INT 80


 何か、全体的に俺のステータスより高くないか?年齢が違うからか?

 Cleric…聖職者で合ってるか?Beast warrior…そのままの意味で獣戦士ということだろう。

 というか今まで背丈が自分以上だったから無意識に女性だと思っていたが、年齢を見るに少女だったのか。

 「キティたちのステータスプレートには、目のマークがついてないのか」

 あのマークを通してステータスを計測していると考えていたんだが…

 「あれは転生者様のプレートにだけついているんですよ。私たちみたいな一般人は、限られた場所にのみ配置される計測器を用いて、ステータスをその都度書き換えなければなりません」

 「「そうだったのか」カ…」

 俺のステータスは常に最新状態だが、キティたちのステータス情報は少し古いものということになるのか…うん?

 「フェルさんは知らなかったのですか」

 「ウン。てっきり偉い人なら…ムグッ」

 「はーい。フェルさんはこっちでお話しましょうね」

 フェルがキティに口を押えられ、連れていかれれる。

 「そうです。ちょっと時間がかかりますので、聖都で行ってみたい場所を考えててください」

 キティは思いついたようにそう言うと、一度廊下に出てから、地図を手渡し、また戻って行った。

 「どこから地図取り出したんだ?というか紙媒体なのか」

 ‛モノリス’がSFチックだったから、てっきり地図も網膜投影とかかと思っていたんだが…

 “分かった?フェルちゃん…”“…ゴメンナサイ”

 廊下から聞こえる雑音は無視して、地図に注目する。

 国は正六角形に城壁で囲まれており、中心に王城兼神殿が存在する。その周りに軍事施設と住宅街、その外周に商業施設、さらにその周りに再び住宅街、一番外側、6つの城門に対応するように軍事施設が存在する。

 おそらく一番内側にある住宅街は、司教階級のような高い位の人間が住む住宅だろう。逆に、外側にある住宅街は一般市民が住んでいると思われる。

 貿易都市というだけあって、商業施設がかなりの数密集している。あと、王城に比べれば小さいが、ちょっと大きめの神社くらい広い神殿が所々に配置されている。

 ふむ、行きたい場所か…。俺が今知りたいことから決めるべきだな。

 まずは…

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