第二話 ゲーム説明
神様が手を叩くと同時に、巨大なモニターが現れた。
「お主らにやってもらいたいゲームとは、“転生者対抗人生ゲーム”じゃ」
どこからともなくクラッカーが爆ぜる音が響き、紙吹雪が舞い散る。
真っ暗だったモニターには、画面いっぱいに“転生者対抗人生ゲーム”の文字が表示されている。
「うへぇ、人生ゲームかよ」
黒髪の青年が顔をしかめる。
「仕事柄、いくつか人生ゲームをやったけど…あれ全部運ゲーよ」
人生ゲームと言えば、やはりルーレットで全てを決めるのだろうか。というか仕事柄?
「甘い、甘いぞお主ら。所詮は人間レベルの思考ということかのう」
神様は、長い髭を撫でながらこちらを煽ってくる。
「もしかして…オレたちの人生そのものをゲームにしようってことですか」
黒髪の青年が神様に尋ねる。
「流石思春期真っ盛りの男子高校生じゃのう…この手の話は呑み込みが早くて助かるわい」
俺たちの人生をゲームにする?もしかして生き返って、もう一度人生を送るってことか?
俺が死んだのは、自分の望みでもあるのだから…このゲームは辞退しよう。
「すみません…俺はこのゲームには参加しま…」
最後まで言い切る前に神様が口を開く。
「まあ、待て。これはお主にとっても利のある話じゃ。他の皆も同様に、もしこのゲームで優勝することができたなら、お主らは心の底からの望みを叶えることができる。まずは、ゲームのルールと報酬を聞いてからでも遅くはないじゃろう」
そこからはモニターを用いて、“転生者対抗人生ゲーム”の説明が始まった。
まず最初に此処にいる四人は、元居た世界とは別の世界―ギーア大陸に転生するらしい。
転生時、四人の年齢は均一に十歳になる…おそらく若返るということだろう。そこから二十年経ち三十歳になると同時に、再びこの空間に戻される。その時にポイントを多く持っていた順番に順位が決定する。
ここで疑問が生じる、そのポイントとはいかにして入手するかである。これについては大きく分けて、三種類に分かれているらしい。
その種類とは…
行動するたびに貰えるが、あまり多くは稼げない“行動ポイント”
転生者の中で初めて行った人だけがもらえる“記録ポイント”
偉業を成し遂げる度に獲得できる“トロフィーポイント”
記録ポイントとトロフィーポイントはいくらか被っていることもあるらしく、行動ポイントより多く稼げるためどんどん狙っていくのが良いらしい。
さらにポイントを使用することでアイテム、魔法、金、特権等と交換できるらしい。日が経つごとに品ぞろえは変化していくらしく、その時交換しないと二度と手に入らない品や、全く逆で常に存在し続ける品もあるようだ。アイテムや魔法など交換できるものについても聞いてみたが、転生してからのお楽しみらしい。
現在の所有ポイントの確認やポイントの交換は、“モノリス”という名のスマホぐらい薄い直方体の岩を用いる。モノリスの中央には瞳の模様が彫られており、それと目を合わせることで所持するポイントや交換所の品が網膜に投影され、念じるだけで品物を閲覧し、ポイントと交換することが可能らしい…衝動買いに気をつけよう。モノリスの重さは小石ほどであり、転生すると既に所持しているらしく、ゲームの終了する20年後、この空間に戻る際に、モノリスを目印として用いるため、失くさないよう注意された。ポイントを多く稼いでることを他人に知られると、モノリスを奪われる危険があるということだろう。
「さてここまでが“転生者対抗人生ゲーム”の基本的な説明じゃ」
神様はどこからか取り出したお茶で喉を潤す。
「ここからはお主らの報酬の話じゃの」
続いて報酬の話に移った。最終的にポイントを多く有していた者…1位の報酬から発表された。
1位 転生先の選択権(元居た世界(好きな時代)、創作物の世界、貞操観念逆転の世界など何でも)、容姿の選択権、生まれの選択権、生まれながらの才能の選択権
2位 転生先の選択権、容姿の選択権、生まれの選択権
3位 転生先の選択権
4位 元の世界にランダムに人間として転生
「どうじゃ?来世の自分が今世の自分の頑張りで決まるんじゃ。面白そうじゃろ」
“お主らは心の底からの望みを叶えることができる”と言っていた…つまり、ここにいる全員が来世に掛ける願いがあるということだろう。
「ええー、それじゃあオレの願いが叶わないじゃないですか」
青年が神様に不満をぶつける。
神様が読み違えた?
「いや、そんなことは無いと思うが…まあいいか、それではお主らが面白いゲームを行った場合、1位を取ったものに何でも願いを叶える権利をやろう」
神様はやれやれと首を振りながら溜息を吐いた。
「イヤー流石神様。太っ腹」
神様の言葉にやけにテンションの高い青年が煽て出した。
俺も1位を取れば、獣から人間になれるかもしれない。他二人もかなりやる気の様だし気合を入れないとな。
「よし他に何か質問はあるかのう」
システム的な質問ではないが、好奇心をそのままぶつけてみるか。
「神様、他に死んだ人間は皆同じようにゲームを行っているのでしょうか」
俺が散々命を奪ってきた者たちは…
「そうじゃのう…まあ話してもよいか」
そう呟くと、神様はこのゲームを行う経緯を話し始めた。
「そもそも死んだ人間は、神との面談の後、神が選んだ世界にランダムに転生させるという方式を取っていた。しかし、最近地球の人口増加が著しく、死ぬ人間の数に対し、対応する神の数が足りなくなってしまったのじゃ。そこでワシは考えた…全部自動化すればよくねって。その結果、暇を持て余そた神々が人間たちに試練を与え、それを画面越しに楽しむようになったのじゃ」
「何やってるんですか神様」「バカじゃないの」「ろくでなしですね」「うーん…クソ」
相変わらず神様は笑顔だが、どこか悲壮感が漂っている。
「ワシじゃッて頑張ったんじゃー。けど他の神どもが他神の話全然聞かんから…。ってもういい、お主らは参加するのかせんのか早く決めい。別にお主らが断っても他の人間に頼むだけじゃから、断っても構わんぞ」
…神様にもいろいろあるんだな。
「断った場合って、俺たちはどうなるんですか」
俺は参加するつもりだが、一応聞いておこう。
「元の世界にランダムに転生じゃ…当然記憶も消える」
一瞬周囲を沈黙が包み込み…
「オレは参加しますよ」
黒髪の青年は一番に声を上げた。
「アタシもよ」
二番目が茶髪の女性。
「私も参加します」
三番目がプラチナブロンドの少女?
「俺も参加します」
最後に俺が参加表明すると、白い床が淡い青色に光りだした。
「それでは20年後にまた会おう」
光が一際強くなったと思うと同時に、大きな浮遊感が身を包んだ。