女勇者と賢者のとある日常 その1
俺はアサト。賢者という役職で魔物討伐に勤しむ健全な17歳だ。
魔物討伐と言っても実際に討つのは前衛の役目。
俺は今日も後衛で、のんびりヒーリングライフを楽しもうとしていた。
「キョエーーー!!!」
その矢先、ドラゴンの顔部分のみを体躯とし、そこから羽を生やして飛ぶという珍妙な魔物が襲い掛かって来た。
勘弁してくれよ!俺は戦闘向けのステータスではないんだ!
森の中を必死に逃げるが、広い場所に出た途端、その珍妙な魔物が複数現れ、俺を覆い囲んだ。
くそ!どうすればいい!
「またやられそうになってんじゃん。ウケる」
駆け付けたヒーローみたいなタイミングで姿を現したのは、俺と一緒にパーティーを組んでいる女勇者のユウだ。
嘲笑うような顔でこちらを覗いている。
この人、絶対俺がピンチになるのを待ってたな……。
「しょうがないから、私が助けてあげるね」
そう言うと、ユウは右手で握る剣を低く構え、瞬間、高速な剣捌きで次々と珍妙な魔物を討っていく。
全ての魔物を倒し終えると、いつの間にかユウは俺の隣にいた。
「おつかれー!大丈夫だった?」
「おかげ様で無傷だよ。ありがとう」
ユウは俺の肩にポンと手を置き、笑顔を向けてくる。
顔含めて見た目はかなり俺のタイプだ。
整った小顔に大きな瞳。さらには、メリハリのあるしなやかな体躯を持ち合わせているのだが、鎧で見えづらいのが残念だ。
ボケっとユウを眺めていると、両手を広げてすっと前に差し出してきた。
「はい、いつものお願い」
「ああ、はいはい」
いつもの、というのはもちろんハグではなく、回復魔法のヒールだ。
5秒程詠唱し、ヒールをかけると、ユウの体――というより身につけている鎧に付いた魔物の血や傷が消え、修復されていく。
ヒールが完了すると、ユウは腰にある袋から小型の近代兵器を取り出した。
俺はそれについて良くは知らないが、なにやら同様の近代兵器を持つもの同士で情報の交換ができるらしく、その情報は文章や写真など多岐にわたるらしい。
「はい、アサトも入って!」
「またかよ」
ユウは俺を近くに引き寄せ、高く掲げた近代兵器を操作した。
そうすると、討伐した魔物を背にした俺とユウが一枚の写真として近代兵器に保存された、らしい。何十回目の光景だが、未だにどういうことかわからない。
ユウは楽しそうに近代兵器をいじりまくり、数秒後、可愛い笑顔と共に近代兵器を見せてきた。
「ほら、たくさんコメント来てるよ。カップルに見える……って何言ってんのこの人。ウケる」
良かったね、と俺は呟きながら、帰路の方に歩みを始めた。
「そろそろ行こう」
「うん」
俺とユウは、討伐完了の報告のため、街へ向かった。
その途中、ユウはこれまた可愛い笑顔で言ってきた。
「また一緒に写真撮ろうね!」
また魔物を討伐しよう、ではなく。
……今どきの女勇者はよくわからん。
俺も今どきの若者だが、そんな風に感じた。
まあ、可愛いから良いか。
読んでいただきありがとうございます!
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