第37話 特秘能力者(6) 『カナヤマヒコ』と『フウジン』(中)
大島の研究所に現れた『カナヤマヒコ』と『フウジン』。
彼らは研究所の中を突き進んでいくが・・・・・・
「おい、いったい何があった!」
斗真は扉についた小さな窓から顔をのぞかせ、廊下をばたつく男たちに叫ぶ。
斗真と少年は囚われの身。部屋を自由に出入りする自由などなかったし、彼らに必要以上の情報は与えられない。彼らは外に『カナヤマヒコ』と『フウジン』が来ていることをまだ知らなかったのである。
「くそ、どいつもこいつも見向きもしない!」
斗真は扉を殴りつける。
(何が起きているのかさっぱり分からないが、この慌てようから察するに、“彼らにとって良くないこと”が起きている可能性は高い。もしかすると、これは逃げ出すチャンスなのかもしれない――)
そう考えた斗真は鋼の扉の前に立ち、息を整える。
脇を閉めて腰を落とし、矢をつがえるかのように腕を構えた斗真は、少年に向かって叫んだ。
「何が起きたのか分からないが、この千載一遇のチャンスを逃す手はない!
俺の、『もう一つの能力』を使う。勝輝君、手伝ってくれ!」
少年が斗真の言葉に相槌を打った、その瞬間だった。
「「それは困る」」
「!!」
部屋に、高い薄汚れた男の声がした。少年は一瞬身をすくめて声のした方向を見る。黒い部屋の隅にある監視カメラが、少年と斗真をじっと見下ろしている。
「まったく、いつも監視ごくろうさまだな、上杉!」
斗真が監視カメラを睨み付ける。
監視カメラの向こうにいる上杉はその言葉を意にも返さず、淡々とした声を発した。
「「研究のことを知っているお前たちを、ここから出すわけにはいかないからな。
もし逃げ出すというのなら、その部屋に高電流を流す。その部屋に電気線が張られているのはもう気づいているんだろ?逃げたいならやってみるがいい。出る前に黒こげにしてやるよ。」」
「っち!」
斗真は舌打ちをうって扉を殴る。乾いた鉄の音が、空しく部屋に響く。
「「ははは。いいざまだな、白井斗真。」」
「……」
斗真の憎しみのこもった表情を見て上杉は笑っていたが、しばらくしてその笑い声は聞こえなくなった。そして、一段と低い声で上杉は言った。
「「まぁ、こっちもお前たちをからかっている場合じゃない。今は来客が来ているのでね。俺たちとしては、彼らが帰るまで大人しくしておいてもらわないと困るんだよ。」」
「来客だと?」
斗真が眉を顰める。
「「おっといけねえ。つい口が滑っちまった。ま、お前たちには関係のないことだ。そこで大人しくしていろ。」」
「……」
上杉がスピーカーの電源を落としたのか、それ以降彼の声は聞こえてこなかった。
斗真は上杉の言葉に顔をしかめていた。
ここは大島個人の研究施設だが、大島は軍の仕事の研究もここで行っている。そのため、軍関係者がここにやってくることは頻繁にあったし、これまでも何度も来ていた。
だが、『ホムンクルス研究』はその一端を見せることもなく、これまで完全に秘匿されていた。そのため、特殊部隊を含む軍関係者が来たくらいでこのような慌てぶりをするとは考えにくかった。
(常に露呈しないように細心の注意を払う彼らがここまで慌てるということは、これまでの対応では足りない相手がやってきた、ということになる。)
“来客”の正体に、斗真は目星をつける。
(『アマツマラ』が対応に困る相手となると、軍の中でも相当な大物でしかありえない。
最低限、特殊部隊隊長クラス。しかも『アマツマラ』が御しえない相手となると、『カナヤマヒコ』と『フウジン』。他にあげるとすれば元隊長である『アマテラス』くらいだ。だが、天羽研究所や富士研究所の管理をしている『アマテラス』が奥飛騨研究所を訪れることを、彼らが想定していないはずがない。
となると、おそらく『カナヤマヒコ』『フウジン』のどちらかだが――何故、ここに来たんだ?大島大輔の研究を知ったがために粛清にやってきたのだろうか?)
そうも斗真は考えたが、もしそうだとするなら、上杉がのんきに監視などをやっているとも思えなかった。『アマテラス』、『カナヤマヒコ』、『フウジン』。現在日本ベスト3のダイバーズが一人でも粛清に来ているのなら、いくら『アマツマラ』でも総力戦で出迎えねば勝ち目はなかった。
斗真は扉に取り付けられた小さな窓から、廊下の奥に広がる暗闇を睨み付けた。
「いったい、何がどうなっている……」
◇
「お、おまちください『カナヤマヒコ』隊長。」
大島が先を行く二人を慌てて追いかける。研究所の奥へ奥へと進んでいた『カナヤマヒコ』と草薙は、大島の声で立ち止まった。
「どうかされましたかな?そんなに汗をかかなくともよいではないですか。ここは既に洞窟の中。むしろ寒いくらいですよ?」
草薙が穏やかな表情を浮かべて言うと、大島が汗をぬぐいながら言った。
「いやあ、儂が先陣を切らんと研究所を案内できないではないですか。おっしゃられたように、ここは洞窟のなか。道を知っている者が案内せぬと、迷子になる可能性もありますからな。それに、ええと、なんでしたかな?『ホムンクルスに関係する研究』とはいったい、何のことですかな?」
“見苦しいぞ『アマツマラ』”
地の底から響くような声が、その場に響き渡る。『カナヤマヒコ』がその幽玄な体を回し、大島に向き合った。
“お前の研究のことは数年前より知っている。今更隠そうとしたところで無駄だ。”
「……!?」
驚愕する大島に、『カナヤマヒコ』はその顔を近づける。表情の分からない重々しい仮面が、より一層老人に圧をかける。
“我らに見せよ。それでもなお見せぬと言うのなら――”
大地を体現したような雄大な声が、ゆっくりと響く。
と、その時である。大島は、自身の足元の異変に気が付いた。
「!!」
文字通り地の底から響く地鳴りが、研究所全体を包み込む。棚が倒れる音が聞こえ、電球が点滅する。その揺れはわずか3秒。しかし、その間に研究所の壁には罅が入り、床は傾ぎ破裂した。
目を見開く大島に向かって、『カナヤマヒコ』は告げた。
“――ここがお前の墓場になる”
◇
「『土』を操るダイバーズ??」
「まあ、そんなところね。」
茜はカップに紅茶を注ぎながら言う。
「特秘能力者の能力は詳しく話すことが出来ないから、これはあくまでわたしの予想だけれど、あの人は『土』に含まれているエーテルを扱えるのだと思うわ。どうして『土』に含まれているエーテルだけしか扱えないのかは不思議だけれど。」
「じゃあ、地震を引き起こしたりとかもできるのかしら?」
不思議そうに首を傾げる典子を見て、茜は微笑む。
「それはできないと思うわ。なぜなら、地震を引き起こすためには地中深くまでエーテルに情報を与えなくてはならない。
でもね、昔行われた地質調査で、地下数百メートル以降、もしくはある年代の地層より古い地層にはエーテルが存在していないことが分かったの。」
「あ、『ダイバーズに関する10原則』……」
孫のつぶやきに、茜は紅茶の入ったカップを差し出しながらうなずく。
「そうよ。さすが典子ちゃんね。
『ダイバーズに関する10原則』その3。“ダイバーズは、エーテルが存在しない空間には能力を行使できない。”
自然現象にあるような地震が起きる深さにエーテルがないため、いくら『カナヤマヒコ』隊長でも“地震”は引き起こせないわ。ただし、“エーテルが含まれている地中までは支配できる”という点は強力よ。」
茜は瞳を閉じて話を続ける。
「あの人は半径500メートルくらいまでなら全ての土を操れるから――いえ、という話らしいから、高層ビルの1つや2つくらいなら余裕で倒壊させることができるわ。」
「ふうん。」
茜は自分の紅茶を飲みながら苦笑する。
「ただ、とっても強い能力なのは確かなのだけれど、一点だけ残念なところがあるのよね。」
「残念なところ……ですか?」
典子の問いに、茜は答える。
「ええ。それはね、今の時代にマッチしていない、というところよ。」
「時代に?」
「今の時代、アスファルトやコンクリートなんかで、街中じゃ『土』なんて見ないでしょ?こういったものはどうやら『カナヤマヒコ』にとっては『土』ではないらしいの。それに、アスファルトやコンクリートは能力に影響されないように、オドを含まないように創られているから、つまり……」
「街中じゃ能力は使えない、ということですか?」
典子の答えに、茜はウインクする。
「そういうこと。まぁ、一ヶ所でも『土』があれば、そこから『情報』を伝えて大地すべてを操れるらしいから、相当強いのは間違いないわよ。わたしも何度か手合わせしてもらったけれど、負けることだってあったもの。」
「えっ。おばあさまが負けることなんてあるんですか!?」
典子は驚きのあまりカップを落としそうになる。
自分の知る大原茜、『アマテラス』は日本史上最強であり、決して届かない高みに存在する人物。姉や他のダイバーズとの能力試合を見たことがあるが、それでも負けたことのない無敗の王者。そんな祖母が、“負ける”とは、到底考えられなかった。
茜は典子に微笑み、紅茶を一口飲む。
「ふふ。わたしより強いダイバーズなんて、この世界にはいっぱいいるわよ?日本だけでも、『ラセツ』には全然勝てなかったし、戦闘能力では圧倒的に『ヤシャ』の方が上だったしねぇ……。
世界に行ったら、それこそ『エレシュキガル』や『サラマンダー』、『イシス』といった『不死鳥』のメンバーとか、まあ、いっぱいいるわね。」
「――」
典子は愕然とした。そんなにも祖母の上がいるのかと。
(それでは、今の自分なんて、米粒以下の存在ではないか――)
「話を戻しましょうか。
『カナヤマヒコ』隊長は、そんな『ラセツ』の教え子だもの。それはそれはとてつもない実力で、『土』のある場所なら無敵よ。周りが土で囲まれた……そうね、洞窟なんかであの人と戦ったら、まず勝ち目なんかないわ。」
◇
「なるほど。こちらが『ホムンクルス』ですか。」
「……」
大島は苦虫を噛み潰した顔をして草薙と『カナヤマヒコ』を見ている。
この土だらけの洞窟で、『カナヤマヒコ』に能力を使われたのではひとたまりもない。良くて死亡。悪ければ研究室ごと破壊されて、これまでの『人生そのもの』を潰されかねない。そう感じた大島は、わが身を切る思いで彼らを案内した。せめてデータや資料だけでも残す道を選んだが故の、苦汁の決断であった。
「ふむ……ダイバーズのもつ保存時間を超えて体を維持する召喚体、ですか。」
草薙は顎に手を当て、じっくりとそのカプセルの中をのぞき込み、真顔のまま淡々と感想を述べ始めた。
「なるほど。確かにこれは興味深い。
本来、召喚体は保存時間が切れればその体は霧散し、エーテルへと還る。空間型ダイバーズの平均的な保存時間は30分。2時間以上の持続時間となると、ダイバーズのランクは少なからずSSレート以上になる。
これをどんなランクのダイバーズであれ、維持時間を5時間以上引き伸ばすことができるとなると、これは『ノーベル能力賞』が取れるでしょうね。
ですが――」
彼はくるりと大島を振り返る。その小さめの瞳は大鷲のように鋭く、その顔には怒りが宿っていた。
「美しくはありませんね。」
「っ!!」
大島は草薙を睨み付ける。
「お言葉ですが草薙隊長。ここにあるのは我が人生の結晶。この国を守るために作り出した未来の可能性。それを、『美しくない』とはどういう――」
「こちらに使用されているのは、『人間の脳』、それも『ダイバーズの脳』と言っていましたね。」
大島は瞬時に草薙の言葉を理解し、慌てて否定した。
「いや、もちろん、死んだ人間の脳だ。生きた人間の脳など使ってはいない!
儂がやっていることは人体実験などではない!儂のこの研究は、法など犯してはいない!」
焦慮に駆られる大島に、草薙はその冷静な声を響かせる。
「あなたのそのお気持ちと志は理解しましょう。お父上を戦争でなくされ、それがきっかけでこの国の将来を憂い、人間の傷つかない未来を創る。
それはよい志です。
あなたがここで研究し、そして得たこの『ホムンクルス』という次世代型召喚体の技術とその発見は、後世に残すべき代物です。
ですが――」
“不快だ”
草薙の代わりに、『カナヤマヒコ』が闇より深い暗い声で言う。脳髄の奥底に染みこむようなその声は、大島の体を硬直させた。だがその後『カナヤマヒコ』は大島たちに向かって言葉を綴ることはなく、一人何かをぶつぶつとつぶやいている。
草薙はそれを視界の隅に捉えながら、大島に向かって言う。
「召喚体を作るのに、『ダイバーズの脳』が必要というのは良い気分はしませんね。」
「なにを――」
「我々は!特殊部隊の人間だ!」
草薙の刃のような一言が、大島を一蹴する。
「我々の使命は、国民を守ることにある!そのために、『国民』を兵器として扱うことは、矛盾している!」
「な――」
「亡骸とは、生きた証。命の残滓!
たとえその人物が死んだとしても、その人物が“国民であったことに変わりはない”!!その国民の亡骸を、召喚体の道具にするなど言語道断である!」
草薙の鋭い眼光が、大島を射抜く。
「さらに、我ら特殊部隊はダイバーズ。ダイバーズの力をもって敵をねじ伏せ、平和を守り、国民の命を守る!それが特殊部隊の信念であり、存在意義!我らが使うのは能力であって、国民の亡骸などでは断じてない!!」
「!!」
草薙の声が、洞窟に響き渡る。
大島はしばらく口を開けて何かを言おうとしたが、なんの反論もできなかった。目の前の男に、完全に気圧されてしまっていた。
「我らはダイバーズ。エーテルを駆使し、能力を自在に操るもの。決して『亡骸』を操っているのではない。『アマツマラ』、あなたがやっている行為は、ダイバーズの誇りを汚す行為だ。」
「わ、儂は――」
“だまれ”
大島の体を、土が取り巻く。壁から、天井から、鍾乳石がその腕を伸ばし、大島の体を締め上げた。
「がっ!!これが、『カナヤマヒコ』の能力か!!」
大島の元に、草薙が歩み寄る。
「あなたの行為は法には触れていない。
だが、我々はこのやり方を認めることはできない。
故に、あなたにこのホムンクルス研究の即刻中止を申し付ける!」
その言葉に、大島の顔に怒りが現れる。
「ふ、ふざけるな!この儂が40年の歳月をかけた研究だ!
この研究は、ホムンクルスは、この国を守るためには必要なものだ!」
大島はそう叫ぶと、その汚れた視線を草薙から別のものへと移した。
と、草薙の背後で、コンクリートの扉が音を立ててきしむ。扉は羽を広げるようにその形を変形し、コンクリートが暗雲のように天井を覆う。その液状化したコンクリートの塊は、洪水のごとき勢いで草薙へと押し寄せた。
が。
「なに!?」
その洪水が草薙へと触れようとしたその瞬間、草薙の体から、強烈な『風』が吹きだした。その『風』に当てられた液状化したコンクリートは、一瞬にして固形化し、粉々に砕け散った。
唖然とする大島に、草薙が言う。その悠然たる声には動揺などなく、草原に吹くそよ風を思わせる。
「『ダイバーズに関する10原則』その3。“ダイバーズは、エーテルが存在しない空間では能力を行使できない。”
あなたの能力『形状変化』は、物体そのものに情報が付与されている訳ではない。常に物体にオドと『情報』を流し込むことで、能力を発動させている。
故に、あなたの体の周りからオドを排除してしまえば、情報伝達は不可能になる。そうなれば、能力を『無効化』できるなど、赤子でもわかることですよ。」
草薙の言葉に、大島は冷汗をかきながら笑う。
「はは……なるほど。今まで何度も見てきたはずだったが、こんな使い方もできるとはな……」
「私の能力は『気体操作』。『すべての気体を操る』ダイバーズだ。
あなたと対象物体の間に完璧な『空気の壁』を作ってしまえば、そのような些事、造作も無い。」
(なにが『造作もない』だ。)
大島は草薙を悔恨の目で睨み付ける。
(気体粒子など人間個人が認識できるものではない。見えないものを扱うなど、光のない暗闇の中で自分の影を認識するようなものだ。常人のできる技ではない。
だいたい、完璧な『空気の壁』を作る?冗談じゃない。真空ですら作るのに大掛かりな装置が必要だというのに、そんな芸当、科学の力を借りたとしてもそうやすやすとできるものなどではない。
しかも――)
大島は粉々に砕け散ったコンクリートを見る。
(この男、『壁』を作ったと同時にコレを『風』で粉々にしている。
風の帯、風の刃――『風刃』。かまいたちのような現象だ。
そんな全く違う2種類の技を同時に繰り出すなど、簡単にできてたまるものか。)
「さて。これ以上抵抗するようですと、我々はあなたを反逆罪で捕らえなければならない。私としては、それは避けたいのですが、『アマツマラ』、あなたはどうですか?」
「……」
大島は苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、大きく息を吐き出し、がっくりと肩を落とした。どんなに抵抗しようとも、この2人を相手にしてかなうはずがなかった。これ以上の抵抗を見せれば逮捕どころか抹殺されかねない。
だが40年の歳月をかけた研究が、もう少しで完成に至るというところだったのである。大島にとってそれを自ら手放すことを認めることは、自身の人生の否定に他ならなかった。
「ここで研究をやめたら、儂は、いったい何のために……」
洞窟の奥から、冷たい風が吹き込んでくる。今までの自分をあざ笑うかのように、その風は大島の頬を撫でた。全てが虚無へと還ったその感覚を、大島はひしひしと感じていた。
だが――
「いえ、落胆する必要はありませんよ。大島隊長。」
「……は?」
草薙の意味不明な発言に、大島は眉を顰める。
「私は先ほど申し上げたはずです。あなたのお気持ちと志は理解できると。」
「な、なにをいって……」
草薙はゆっくりと大島の周りを歩き始める。
「あなたの志と意志は正しい。
この国を憂い、この国のために『召喚体』に危険な仕事を肩代わりさせる。その考えを、私は否定しない。」
「!?」
「ただ、人間の――ダイバーズの脳を使った召喚体という点を、私は認めることが出来ない。
用は、やり方を変えるべきだと申し上げたいのです。
――つまり、ダイバーズの脳を使わずに長時間情報を維持できる召喚体をつくればいい。」
「なにを馬鹿な。そんな方法などない!」
大島が声を大にして叫ぶ。
「召喚体は人間がイメージするしかない。そのイメージの正確さで、保存時間の長さが決まる。どんなに精工に創ったとしても、人体内部や神経細胞・毛細血管の細部の情報などを完璧に持たせることはできない!だからこそ、もともと『人間という情報を保持した脳』を使うことで、保存時間を延命させることができるのだ。もしそれ以外の方法があるのなら、とっくに試しておるわい!」
大島の怒号を聞いて、草薙は立ち止まる。そして、彼は言った。
「では、その方法があるとしたら、どうしますか?」
「――なに?」
大島が目をむいて草薙を見る。
だが、草薙は大島を見ていない。その透き通るような瞳は、ホムンクルスのカプセルの間に佇む、一人の人物に注がれていた。
「そうでしょう、『カナヤマヒコ』隊長?」
読んでいただき、ありがとうございます!
さあ、どんどんお話は進んでいきますよ!
次回『カナヤマヒコ』と『フウジン』(下)
明日零時更新です!お楽しみに!
「『人間』とは、あるものではない。『なるモノ』だ。」
【お知らせ9/29 15:00更新】
現在、使用しているネット環境が工事中のため、
『カナヤマヒコ』と『フウジン』(下)の更新を明日以降に見送ります。
よろしくお願いいたします。




