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チート能力は主人公?  作者: 穴原昌二
第一章 孤独な王女
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思い違いの主人公

 この城脱出の初めに必要なことそれは、クローゼットの中にある服の中から自分が着れそうは服を選ぶことである。


 服のほとんどは女物だが、それでも男物の服は多い。あれこれ試着していると、床は服だらけになってしまいちょっとやりすぎたと自分でも思う。けど仕方ないよね、この世界の服ここにしかないし、数が多いし。


 カズキは着替え終えると着ていた制服を持ちながら、服を戻しクローゼットの奥にある扉まで行き扉を開ける。


 ギギィと言う音を立て、ゆっくりと開いた扉の先は石でできた階段があり、その両壁には明かりが出ている。


 なんだこれ?大きな石か?不思議なもんもがあるんだなー。いや、異世界だし前の世界の常識を当てはめたら駄目か。


 暗く先の見えない階段を、カズキは慎重になりながら階段を下りる。階段はまっすぐ下に降りるように伸びており、一番下まで降りるとそこにはまた扉があった。


 また扉か、確かこの先にはなぜか大きな部屋があったっけ。


 カズキは扉を開け中に入ると、小さな部屋に出る。部屋の全ては石で出来ており、たくさんの棚に鞄にお金が置いてある。さらに先に進むと、たくさんの武器が置いてあった。


 さすがお姫様緊急避難用脱出口、逃げるのに必要なものが全部そろってらっしゃる。


 カズキが、城についての資料を見ていたときに見つけたのは、緊急避難用の脱出口であった。確かに警備兵で対処できない不審者が侵入してきた時、正面からでは遭遇してしまう可能性がある。そして作るなら玉座の間などの目立つところではなく、それぞれの私室に作った方が脱出しやすい。


 俺も本で見なかったら絶対無謀な脱出劇をしてたわ。というかチュートリアルでいきなり警備厳重な城からの脱出とか、何この無理ゲー、絶対ミサの奴こうなること知ってただろ。


 そう思いながらカズキは鞄の中にお金を入れると、鞄をしょって武器の前に移動した。


 やっぱり武器って持って行った方がいいのかな?けど、これ重そうなんだよな。それに、学校で習った剣術くらいしか出来ないし。


 カズキが武器をどれにするか悩んでいると、誰も居ないはずの扉が開く音が聞こえた。


「お兄ちゃん、もうこんなところに居た。ここ危ない時にしか来ちゃいけないんだよ」

「!!」


 突然の出来事に驚き、カズキはピクリとしながら素早く扉を見る。そこには寝ているはずのリーナが、服を着て腰に手を当ててぷりぷりと可愛らしく怒っていた。


「な、なんで、こんなところに居るんだリーナ」

「起きたらお兄ちゃんがいなくってて、探したらここに居たの。それよりも答えて、何でここに居るの」


 さて、どうしようか。ここで本当のことを言ってもいいが、さすがにリーナのせいって言ったら泣いちゃうよな。けど、ここからは出たいし、適当に誰かに呼ばれたってことにしよう。


「ごめんね、リーナ。リーナが寝てるときに、スキルで連絡があって呼ばれたんだ。だから行かなきゃいけないんだ」

「えっ」


 リーナは涙目になった。必死に泣くのを堪えているのか、手がプルプルしている。


 Why?何故泣きだしたし。どうしよう、何言っても多分今は何も聞いてくれないだろうし。


 カズキがあたふたしていると、リーナが目に溜まった涙を拭いた。


「じゃあお兄ちゃん。リーナも一緒に連れてって」


 ……うん、これはまいった。だって、いいよって言ったら王女誘拐ってなるじゃん。かといって、ここで駄目っていって泣かれて人が来てもアウト。さて、本当にどうっしましょう。


 カズキが悩んでいるとリーナの目には涙がさらに溜まる。


「いや、あのね。お兄ちゃんと一緒に行くと、お父さんとお母さんに会えなくなっちゃうよ」


 どうだ!!必殺≪ご両親が泣いてるぞ攻撃≫。これはさすがに効いただろ。


「いい。お兄ちゃんと行く」


 なん…だと。これが効かないとなると、最後の手段≪怖い怖い≫を使うしかない。


「それに、一緒に来ると悪いおじさんとか、怖い魔物とか出てきてリーナ死んじゃうかもしれないんだよ。」

「お兄ちゃんの方が弱もん。それでも行くの」

「いや、やっぱりいっしょには行けない」


 そう言うと、とうとう泣き出してしまった。カズキはなんだかかわいそうになって来たので、リーナを抱きしめた。すると、リーナも抱きしめてきた。


 顔が丁度お腹のあたりに当たっているから、声はあまり響いてないと思うが……。


「いっじょにいぐの」

「ごめんね、一緒には行け」


 ない、と言おうとしたとき事件は起こった。急にリーナの抱きしめる力が強くなり、抱き締められているお腹に痛みが走る。


 い、痛い。何でこんな力が。


 その時カズキはあることを思い出した。それは、ステータスを見せてもらった時、筋力の値が大きかったことに。


「リ、リーナ。痛いから、話して」

「いっじょにいぐの」


 駄目だ、話を聞いてくれない。それに、全然泣きやみそうにない。それじゃあ、嘘言って騙すか?いや、ばれて俺のこと王様に言われたらアウトだ。それに、情けない話、俺より強いな。あーあ、これで完全に王女誘拐の容疑がかけられちゃうなー。


「リーナ。一緒に行くんならその服じゃ駄目だから着替えに行くよ」

「いっじょにいぐの」


 リーナはカズキから動かないため、密着状態でリーナの部屋まで戻り、着替えさせ手からもう一度石の部屋に連れて帰った。この時カズキは、子供に泣きじゃくられるお父さんの気分を嫌というほどあじあわされたため、小さい子を泣かせてはいけないと身に沁みて感じたのであった。


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