強くない主人公
カズキは服を着替え終えると、ベットには着替え終えたリーナが座っていた。何とも可愛らしい服装であるが、ベットの上に女の子座りで座っている姿は、何とも言えない背徳感をカズキに与える。
そんなことを思いながらも、カズキが一番興味を轢かれたのは、リーナがやっていたステータスの表示である。
さっきのステータスって言ってたよな、俺にもできるかな。
「ステータスオープン」
興味本位でリーナのまねをすると、カズキの目の前に画面が出てきた。
←
名前:カズキ・サトウ
天命:主人公 Lv1
種族:人間 Lv1
年齢:16才
生命力 50/50
体力 20/20
魔力 ―
筋力 10
耐力 10
俊敏 12
幸運 15
適正
火1 水1 風1 電1 土1
光1 闇1 無1 生1 死1
スキル
【言語変換】 Lv―
【メニュー】 Lv1
【経験値振り分け】 Lv―
称号
【異世界人】【勇者】【主人公】
まるで魔法の様な出来事に感心していると、カズキは自分のステータス画面を見て考察する
ふむ、弱いな。ものすごく弱いな。それも、リーナに負けるレベルで弱いな。これどっちが正常なんだろう?リーナが正常なのか?けど、5才児が俺を持ち上げるなんて不可能だし、そうなると俺がこの世界で一般平均なのか?うん、わからん。
それと、突然のことで気にしなかったが、リーナ言葉がわかるのはこの【言語変換】ってやつか。もしかすると、他にもこのステータスを俺のわかる言葉に変換してるのかもしれない。あと判んないのは、【メニュー】ってやつと、【経験値振り分け】ってやつか。
カズキはそう思いながら彼方此方見ていると、ステータスの上に矢印があった。
何だこれ。さっきリーナが見せたやつにはなかったよな。
カズキはさらに興味を刺激され、矢印をタッチすると……。
ステータス
****
**
***
**
***
**
**
*****
**
ステータス画面は畳まれ、今度は違う画面が開かれる。
さっきのステータスとは違い、数字は無くステータスだけは読め、そのほかは*になっていて読めなくなっている。
これ、メニューってやつの効果か?となると、レベルを上げるか何か条件を満たすと使えるようになる
のか、正直判んないな。
カズキがさらなる思考の世界に旅立とうとしていると、袖を引っ張られる感触があった。引っ張られた方を見ると、リーナが不服そうな顔でこちらを見ていた。
「ねえ、何してるの」
「えっとね、自分のステータスを見てたんだよ」
「リーナも見たい」
「えっ!!」
リーナは純粋無垢な瞳をカズキに向けているが、カズキの方は顔が引きつり見せるかどうか悩んでいた。
なぜなら、リーナは小さい子なので、彼方此方に言いふらさないか不安である。さらに王女という立場は、カズキ達をこの世界に呼び込み、戦争に利用をしている。どう考えても信用できないが、彼女はとても幼い。もしかしたら戦争の話しはされておらず、王女と言う立場から何か知っているかもしれない。
クソ。最悪ばれて捕まるかもしれないけど、今の俺には圧倒的に情報が少ない。捕まるのは嫌だけど、何も知らないから何もできない。あーどうする。
カズキは悩みに悩み抜いた結果、リーナにステータスを見せることにした。リーナはとてもニコニコしているが、見せるカズキは心臓バクバクである。
カズキはリーナにステータスを見せると、リーナは食い入るようにステータスを見る。それを見ているカズキは、内心やってしまったのではないかと思っていたが、リーナの発言で安堵する。
「お兄ちゃん弱い」
「あっうん、お兄ちゃんのステータス弱いから見せたくなかったんだ。けどリーナには特別だよ。絶対に誰にも話したら駄目だからね」
「うん、わかった」
カズキはリーナに釘をさすと、リーナは頷いて了承した。カズキは全く当てにはならないが、言っておくことに意味があるだろうと思っていた。
「けど、この【異世界人】て言うのと【勇者】って言うの、前にここにいた人たちと一緒だね」
「本当か?」
「う、うん」
カズキがリーナの肩を勢い掴み、思いっきり詰め寄ると、リーナは驚き困った顔をしていた。
やっぱりリーナは何か知ってた。しかも、俺と同じ称号?を持ってる人がいるって言った。とりあえずの目的は、ここから脱出してその人たちに会いに行くことかな。もしかしたら他のクラスの人かもしれないし、それにリーナが口滑らせたり、城の人に見つかったりしたらマズイしな。
カズキは先ほどの不安感は完全に吹き飛び、むしろいろいろなことを知れたことの喜びでいっぱいだった。
「そっか、そっか。今その人たちどこに居るか知ってる?」
「うーん?父様が「修業させる」って言ってどっか行っちゃった」
「そっか。俺も合ってみたかったな」
とりあえずここから脱出しないと、城の人に見つかったら俺の首が飛ぶ。間違えなく物理的に飛ぶが、まだこの城の構造、警備の数や徘徊の通りなど知らない。ノ―プランでは出れないけど、まあ騒ぎが起きなければこの部屋は安全だと思う。………多分。
カズキは勇者召喚の破壊や、異世界からの脱出よりも先に、城からの脱出を優先目標に置いた。その準備段階として、リーナに必要なものを持ってきてもらうよう頼み込む。
「ねえ、リーナ。お家の中が分かる本とか、このお家のどこに人がいるかとか教えてくれる?」
「いいけど、リーナからもお願い良い?」
「うん、何?」
カズキは予想外の要求に戸惑うも、今までの感じから難しいことは無いと思っていた。
「今日の夜、本を読んで一緒に寝て」
「いいよ。その代わり、みんなには俺のこと内緒にしないとだめだよ」
「うん、わかった」
カズキの予想はズバリ当たり、要求としては難しいものではなかった。カズキは2度目の釘をさすと、扉の方からコンコンと言うノックが聞こえる。
「リーナ様。お食事の用意が出来ました」
声は女の人の物だった。恐らくリーナ専属のメイドの様なものなのだろう。カズキはドキッとすると、リーナは今までカズキと話していた時と違い、暗い顔をして出て行った。
リーナの奴、あんな暗い顔をしてどうしたんだ?
さっきまでとは明らかに違う顔の変化に、さすがのカズキも違和感を覚えた。しかし、だんだんと自分の置かれている状況を理解していくうちに、カズキ自身にそんな心配をしている余裕は無いことに気がついた。
リーナが部屋から出てって気付いたけど、水とか食べ物とかトイレとかどうしましょう。というかこの部屋に掃除とか来るよな、他にもリーナが喋ったら即アウトだし、これって結構ピンチだったりしない。
「やばいなこれ、とりあえず急いで隠れられそうな場所を探さないと」
そう言うと、カズキは隠れられそうな場所を探し始めたのであった。