犯罪者主人公
目を覚ますとそこには見知らぬ天井が……ってこれさっきやったじゃん。
はぁ、さっきの浮遊感にかなりのリアリティーを感じたから、やっぱり先のやり取りは夢ではなく俺は本当に異世界に来てしまったのか………。
辺りは高級住宅の一室のように豪華で、天井にはシャンデリア、床にはカーペットが引いてあり大きな窓からは光が差しこんでいる。さらに高級感は部屋のインテリアだけではなく、すぐにリラックスできる様な匂いが部屋を包んでいた。
「なんだよこの部屋。すっげーゴージャスじゃん。それよりあの自称神様、嘘は言ってないようだったけど神様だしな。それに必ずしも元の世界に戻してくれるか不明だし、もしかしたら俺の感も外れるかも知んない。………けど今は眠いから、考えるのやめて二度寝しよ」
あまりにもカズキの知る現実とかけ離れているため、二度寝を決意していると少し体に違和感が出てくる。
あれ、何で俺ベットで寝てるんだ?それに何かスースーする。まるで何も着てないみたいに。それに左側がに、柔らかくて温かい物が当たってる。………本当に何が起きている。
カズキは寝たまま掛け布団を持ち上げると、やっぱりなぜか裸だった。そして裸と言うこの状況で、体の左側にある柔らかく温かいものが何なのか、カズキはいやな予感がした。それに気付いたカズキは急いで掛け布団を取り上げると、左側には見覚えのない金髪ロングのかわいらしい女の子が全裸で抱きついていた。
………どうしてこうなった。
あまりにも突然すぎる出来事に、カズキの頭は付いて行けずパニックを起こしている。しばらくカズキが自問自答していると、隣で寝ている女の子が起きてしまった。4,5歳ぐらいの女の子は目を擦りながら、上半身を起こしてカズキを見る。純粋そうな緑の瞳をカズキに向けると、何かを期待しているように見える。
え、何。何で俺こんな幼稚園児ぐらいの女の子と一緒に寝てんの。しかも裸で。もしかしてミサの仕業か?冗談だろ。こんなの知らない人に見られでもしたら即アウトじゃん。いや待て落ち着け、相手は小さな女の子だ。落ち着いて冷静に話せばわかってくれるはずだ。クールだ冷静だ安定だ。心を落ち着かせよう。
カズキ頭の中がものすごくパニックになり、冷静になるにはかなりの時間がかかったが、女の子はカズキが立て直すまで待っていてくれたようでカズキが話すまで何も言わなかった。
「お、おはよう」
「あ、お兄ちゃん起きたんだ。おはよー」
女の子はカズキが挨拶をすると、カズキに抱きつき元気よく返事をした。カズキには年下の親戚は居ないが、もし妹がいたらなどと想像して和んでしまう。
「お名前を教えてくれないかな」
「リーナ!!」
「そっか、リーナって言うんだ。お兄ちゃんはカズキって言うんだ。よろしくね」
「うん、よろしく」
あまりにも可愛らしい笑顔に和んでしまったため、カズキは完全に親戚のおじさんと化しているが、それでも頭の中には何がどうなっているか聞こうと決めていた。
さすがに何もかもってわけにはいかないけど、この場所ぐらいは良いんじゃないか?
「リーナ。さっそくで悪いんだけど、ここはどこかな?」
「リーナのお家」
うん。それはわかってる。むしろあなたの家じゃなかったら、この状況がさらに訳分からなくなるから。
「そっか、お家かー。大きいね」
「うん、お父様がヒュニムで一番大きいお家って言ってた」
その言葉を聞いた瞬間、今までの名護にムードが嘘のように消え、カズキの顔が固まる。
そっかー。ヒュニムで一番大きいお家かー。何か嫌な事態になってる気がするが、気のせいだ。絶対気のせいだ。断じてこの場所がヒュニマのお城とか、この子が王女とかそんなことは無いはずだ。
カズキはこの場所のことを聞き終えると、自身がなぜ裸になっているのかの経緯を聞き始めた。
「じゃあ、何でお兄ちゃんは何も着てないのかな?」
「リーナが取ったの」
幼女が俺服を脱がせた。何か変な意味に聞こえるが、そう言うわけじゃない。きっとあれだ。服を脱いで寝る人なんだ。友達にもいたし、不思議なことじゃない。………はずだ。
「リーナは何も着ないで寝るのかな」
「うん、お父様とお母様が寝るときは裸でって言ってたから」
そっかー。リーナのお父さんとお母さんのせいで俺、ロリコン認定されかねない状況で、なおかつかなり偉そうな立場の娘と、裸で一緒に寝てたってばれたら………死ぬな俺。
「お兄ちゃんはいつからリーナと一緒なの?」
「んとね。リーナが夜寝れなくてね。お散歩してたらね。お父様の座る椅子の所でお兄ちゃんが寝てたから。風邪ひいちゃうと思って部屋まで一人で頑張ったの」
そっかー。頑張っちゃったかー。俺、異世界に来てすぐに犯罪でつかまりそうだなー。と言うかミサめ、こうなること知ってたんじゃないか?自称でも神様だし。もしそうだったら、会ったときに2回殴ってやる。
カズキが現実逃避をしていると、おかしな点が浮かんできたことに気付いた。
「ねぇリーナ。どうやってお兄ちゃんをここまで運んだの?」
「普通に持ってだよ」
カズキは一般高校男子の平均並みといえ、4、5才の女の子がカズキを運べるわけがない。どう考えても誰かに運んでもらわなければ、カズキをベットに寝かせるなんて不可能である。
カズキがどう考えても不可能だと思っていると、リーナが何かし始めた。
「もぉ。リーナのことウソツキだと思ってるでしょー。本当だからね。ステータスオープン」
「へ?」
リーナがそう言いながら右手を右から左に動かすとまるでRPGゲームに出てきそうな画面が出てきた。
名前:リーナ・ヒュニマ
天命:王女 Lv5 格闘家 Lv15
種族:人間 Lv25
年齢:5才
生命力 190/190
体力 100/100
魔力 ―
筋力 50
耐力 15
俊敏 25
幸運 60
適正
火15% 水15% 風15% 電15% 土15%
光25% 闇15% 無15% 生15% 死25%
スキル
【筋力上昇(小)】 Lv1
【ヒュニム語】 Lv3
【格闘術】 Lv2
【ヒラメキ】 Lv1
称号
【王女】【格闘家】
カズキは驚き、開いた口が閉まらなかった。カズキの知っている物理法則では、まずできない芸当だ。
何これ、これがミサの言ってたステータスってやつ?それに何だ、天命って言うのは。見た感じリーナには王女ってついてるから、RPGで言うところの職業みたいなのものか。と言うかリーナやっぱり王女なのか、それに種族にもレベルがあんのかよ。何か考えることたくさんあるけど。………とりあえず着替えるか。
カズキは逃避ぎみに、床に散らかっている服を取り着替えるのであった。
王女のステータスを書き直しました。