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チート能力は主人公?  作者: 穴原昌二
第一章 孤独な王女
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主人公と神様の思惑

佐藤和樹視点に戻ります

 カズキの目が覚めると、そこは見知らぬ天井ではなく真っ白な床だった。カズキはうつ伏せの状態から立ち上がり、回りを見渡すと回りも真っ白だが目の前に見知らぬ女の人が立っている。


 カズキ達の世界から見ればまず間違えなくコスプレか痛い人の様な、ファンタジーの神官服を着ている女の人だ。


「あ、起きた。言葉わかる?1+1は?これは何本に見える?」


 カズキの頭がはっきりしてくると、彼女は意識の確認を取って来た。目の前に右手で3本の指を立てると、少し揺らしている。


「2と3」

「そう、良かった。久しぶりに作ったからうまくいくか心配だったのよね」


 摩訶不思議な見渡す限り真っ白な空間、目の前にはおかしな格好をした女の人。さらには目の前の女の人が作ったという言葉は、目が覚めたばかりのカズキを思考の世界に旅立たせるには十分だった。


 久しぶりに作ったって、何したんだ?俺の体を魔改造とかしてないよね。と言うか何で見渡す限り真っ白な世界で変な格好をした女の人とこんな場所にいるんだ?いや、パニックになるな。落ち着け、冷静になるんだ。まずは今までどうしていたかを考えてみよう。


 ………確か夏休みが終わって学校に行ったんだよな。そして教室に入って朝礼をした後、始業式の時に寝て………そうだ、俺寝てるんだ。


 カズキはパニックを起こしながらも、自分が寝ているという結論にたどりつき、目の前の女の人はなぜかそれに釘を刺した。


「あなたはまだ夢の中とか思っているかっも知れないけど、今から話すことは事実であり現実なの。信じるか信じないかはあなたに任せるけど、信じないとこれから生きては行けないわよ」


 何かよくわからないことを言われた。正直今でも夢だと思っている。だってさっきまで寝てたし、こんなことができていいのは二次元の世界だけだし。


「では、話すね。私の名前はミサ、ある世界の神様の一人よ」


 うわー何か神様が出てきちゃった。大丈夫かなこの子。と言うかこれ俺の夢なんだから、この自称神様も俺の創造で出来たものだよね。………なんか俺の頭が残念なのかも。


「あなたには異世界に行ってもらって異世界を平和にしてもらうわ」

「何馬鹿なこと言ってるの?そんなの出来るわけないじゃん」


 思考がまとまっていないカズキは今起きていることを夢の中と思っていても、頭の中ではそのこと忘れてミサの言っていることに反応して話していた。


 自称神様が人類が何千年かかっても成し遂げられていないことを、ただの高校生に成し遂げろと言われ思わず暴言をしまった。しかしミサはカズキの発言をスル―し、それどころではないと話を続ける。


「そんなこと言ってる暇ないわよ。この後あなたが行く召喚された世界では人間国ヒュニマ、獣人国アービスト、魔人国マジェントの三国が戦争を起こそうとしてるのよ」

「その戦争を止めろよ。神様なんだろ」


 カズキがそう言うとミサは首を横に振り理由を述べる。


「ヒュニマが戦争奴隷として行った勇者召喚が偶然とはいえ成功させてしまったせいで、いろんな事後処理に時間がかかってるのよ」


 いや起こる前に止めるとかいろいろ方法あるじゃん。使えね―。この神様マジ使えねー。


「だからって何で俺たちがそんな戦争真っ只中の世界に行かなきゃいけないんだ」

「仕方ないじゃない。たまたま勇者召喚が成功して、たまたま異世界からランダムに選ばれたのがあなた達で、さらにたまたま寝ていて私と接触できたのがあなたなのだから」


 納得いかねー。異世界に飛ばされるのも、戦争の道具にさせられるのも。


「だから接触していろいろと話をしようと思ってのだけど、接触できたのがたまたま寝ていたあなただけだったから、他の人たちにはすごい天命を与えて送り出しました」

「なに?そのすごい天命って」

「そうねぇ。例えば勇者とか魔王とか簡単には死なないようなスキルを得られるのにしたわ」


違う、そうじゃない。


全く見当違いの解答が来たので、カズキは訂正を入れる。


「また分けわからんこと言いだした。そのスキルってなんだよ?」

「えっ、スキル知らないの?スキルとは行動を起こし自分が身に着いたときにステータスに表示される資格みたいなものよ。………そっちとこっちじゃいろいろ違うのね」


 次々と出てくる謎ワードがゲームに出てくる設定に似ているため、カズキの頭の中はさらに現実から夢の世界へと離れていく。


 アッウン。何かゲームの言葉が出てきたせいで、これが夢の中だって可能性が強くなったよ。


「ミサは神様なんだよなあ、それなら勇者召喚ってやつなかったことにして元の世界に戻してくれよ」

「勇者召喚であっちの世界に行った人たちを戻すためにはせめて元の世界に送るスキルか術式がいるのだけど今はそれがないわ。何せこんな事態が起こることなんて想定がいだもの」

「神様仕事しろよ」

「知らないの。神様って人間が滅びようが星が滅びようが基本傍観しかしないのよ」


 ですよねー。うちの世界の居るかどうかわからない神様も何もしないもんね。むしろこうやって相談してくれること自体あり得ないもんね。


「それに今から術式やスキルを作っても今すぐにはできないわ。さらに元の世界に戻ったとして、勇者召喚はまだ残っているからまた召喚されるかもしれないし」

「つまりここで俺たちを戻しても、また呼ばれるかもしれないってことか?けどさすがに2回連続で俺たちってことはないでしょ」


 そんなカズキの能天気な質問を、ミサはあっさりと切り捨てる。


「いいえ。一度召喚に成功してこちらの世界に干渉してしまったから、他の人達よりあなた達が呼ばれる可能性が大きいわよ」


 なんだよそれ、異世界召喚自体壊さないと永遠に戦争の道具かよ。


「だからあなたには他の人達にも今のことを伝えて勇者召喚を壊してほしいの。そうすれば元の世界に戻すことと、異世界召喚が出来ないようにするのはこっちでやっておくわ」


「元の世界に戻れるや異世界召喚の消滅は良いけど、何で俺もあっちに行かなきゃいけないんだ?ミサが他の人に伝えて俺はここで待っておけばいいじゃん」


 カズキが異世界に飛ばされた場合、確実に他の人達と出くわすことは極めて低い。そして最悪カズキが死んでしまい、他の人達に伝えず全員死んでしまうと言う可能性がある。


 なのでカズキはこの状況において最も速く、そして確実に状況の説明が出来る方法を提案した。………けしてカズキ自身が面倒臭く、そして死んでしまう可能性にビビっているわけではない。


 しかしミサは見透かしているのか、カズキの提案に乗ることはなかった。


「はぁ、あなたねぇもう少し自分でどうにかしないと一生脇役よ」

「俺は別にそれでもいい。自分に出来ることだけやるから」


 ミサは深いため息を吐くと、何やら高速で指を動かし、カズキに触る。カズキには痛みなどは無いが、カズキの全身は一瞬光り静まっていく。


「そんな他力本願なあなたに、神の試練としてこの天命と異世界旅行をプレゼント」


 ミサがそう言うと今度は上から光が差し込み、カズキは見上げるといきなり浮遊感が襲ってきた。


「っちょ待て、何これ」

「残念ながらそろそろ持ち場に戻らないのよね。ま、その調子じゃあすぐ死んで会うことになると思うけどけど、がんばってねー」

「ふざけんなー!!人の話を聞けー!!」


 カズキは叫びながら天高く光の中へと昇って行く。


 クソ。こんな変な状態に巻き込んだ挙句、俺を戦争の道具に使おうとしたこと絶対に後悔させてやる。………ついでに俺の意見聞かず、お願い押しつけて異世界送りにしたミサは今度会ったら殴っておこう。


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