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チート能力は主人公?  作者: 穴原昌二
プロローグ
1/43

脇役が主人公

久しぶりに連載式の小説を書きました。前回書いた時はすぐに書くのをやめてしまいましたが、今回は書きやすい内容だと思うので、頑張って完成を目指したいと思います。


 みんなは主役と言う物をどう思っているんだろう。やっぱりカッコイイとか、憧れたりするのだろうか。


 それなら逆に悪役はどうなのだろう。いやな奴とか、ひどいことを平気でするなとか思うのだろうか。


 けれど俺の経験上、人に好きなキャラクターは?と聞かれたら、出てくるのは主役かヒロイン、もしくは悪役のどれかだろう。


 けれど俺の好きなキャラクターは主役や悪役ではなく、とても目だたないモブに近い脇役だった。


 まあ、高校生の俺にも主役にあこがれたことがあったが、ある日主役が人を助けている時、主役が一番仲良くしているの回りの人間が不幸な目に会っていることを主役は知らなかった。


 その時からだろう。人のために自分の大切なものを失う主役より、目立たないが常に回りの気を配っている脇役をかっこいいと思ったのは……。


 そうして脇役にあこがれた俺は、その日から友達を作った時は表情を気にしたり、暇そうにしているときはなるべく話しかけたり、困っているときは自分の出来る範囲で手伝ったりした。


 結果として、俺の友達は会話の中心人物になったり、学校の委員や生徒会に入ったりと出世しているが、そんな友達に時々相談されたりするのが嬉しかった。


 結局何が言いたいかと言うと、大切なものを大切にしない主役より、関係ない人を巻き込んで自分の目的を達成する悪役より、目立たないモブの様な脇役が良いのだ。


 そんな生き方をしていたから、異世界なんて言う非日常的な場所に送られた俺、佐藤和樹は主役や悪役、さらには自分の理想の脇役にも届いていない最低は人間だと言うこと思い知らされるのであった。






「う~ん。もう朝か」


 一般家庭の部屋の一室。携帯のアラーム機能で目を覚ました佐藤和樹は、夏休みが終わったことで不健康な生活を送っていたため学校初日の朝がとても辛かった。


 眠い。今日から学校か、もっとゴロゴロしてたかったなぁ。


 眠いのを押し殺し、学校の制服に着替えると階段を下りる。1階のリビングからは両親の声が聞こえてくるが、和樹はリビングには入らず先に洗面台に向かい身仕度をした。


 リビングに入ると父は椅子に座りコーヒーを飲みながら新聞を読み、母はリビングで料理をしている。


「おはよ」

「起きてきたか」

「和樹、朝ご飯出すから少し待ってて」


 和樹はいつものように両親に挨拶をすると、席に座り朝ご飯を食べる。和樹の家族は口数がとても少ないが、家族仲はとてもよかった。


 小さい頃両親はやることが多くて忙しそうだが、和樹は嫌な顔をせず両親の手伝いをしていた。


 特に母親は料理を手伝った時、父親はビールを注いだ時がとても嬉しかったらしく、和樹はその後も手伝いを続けている。


 和樹が両親を好きなように、両親も和樹のことが好きだった。だからなのか、和樹の好きにはとても重い意味があり、今まで家族以外にその言葉を言ったことはなかった。


 和樹が食事をしている途中。父が仕事に行く父には『いってらっしゃい』を、食事が終わり登校しようと家を出る時には母に『いってきます』、と言ってお葬式の様な静まり返った家を出ていった。





 夏休みが終わり、久しぶりの登校だが、夏の残暑が厳しくとても暑い。学校には登校日以外は近寄らなかったため、歩いて行く景色はとても懐かしかった。


 それにしても眠い。夏休み中不規則な生活をしてたせいで、ものすっごく眠い。そして暑い。


 年々上昇し続ける異常な気温に、和樹は必死に耐えながら登校しているため、汗がものすごく出ており、教室に入る頃には全身が汗だくになっていた。


 教室の中はエアコンが効いており、外よりも大分涼しい。和樹が教室に入った時間はホームルーム開始15分前なのに、教室にはかなりの生徒が来ていた。


 教室の中には日やけをしている者や、久しぶりに会ってはしゃいでいる者、一人で退屈そうにしている者などさまざまだったが、その中でも特に目立っていたのは結城明、鬼塚真央、星野玲、天野桜の4人だ。


 4人は学校の中でもかなりの有名人で、いわゆるクラスの中心人物である。4人とも容姿が整っており成績優秀、さらにはそれぞれ別の部活に入っているのにレギュラーを張っているらしい。


 一方和樹は顔も成績も普通で、唯一の自慢は友達が多いことだが、特別とても仲が良い友達はいなかった。


 それはいじめられているのではなく、友達を増やしながらいろいろと話しているうちに、回りの和樹への対応が自然とこうなっていったのだ。


 和樹自身このことで学校生活では不自由はなく、暇な時間は読書やゲーム、暇そうな友達と話しなどをしている。そんな立ち位置のせいか、友達から話を振ってくれるのはかなり稀であり、友達と話すときは自分から話しかけるのが普通なのだ。


 なので、人気者の四人と話すときは自分から声を掛けている。


「おっす」

「あ、和樹おはよう」

「お、和樹じゃん」

「佐藤君おはようございます」

「佐藤君久しぶり」


 和樹が明に挨拶すると、他の3人も挨拶をしてきたので、彼らにも返事をした。


 これはまた珍しい。明以外いつも軽く会釈とかで済ませてるのに、今日は楽しいですって顔に書いてある。槍でも降るのかね?


 いつもは起きないイベントに和樹は驚き、4人は和樹への挨拶が終わると、すぐに自分たちの輪を作り話し始める。


 この4人は和樹以外の人間が挨拶をしても、すぐに自分たちの輪を作るため、特別和樹が嫌われているというわけではない。


 和樹は他の友達にも挨拶をすると、机の上に鞄を置いてそれを枕にするように頭を寝かす。その後もぞくぞくと教室にクラスメイトが入って来ては、カズキは顔を起こし挨拶をする。


 久しぶりの学校だけど、そんな簡単に人間関係が変わるわけないよな。


 しばらくすると学校のチャイムが鳴り、担任の安井先生が教室に入ってきた。


 学校初日だからなのか普段は着ないスーツ姿で登場しているが、やはりとても暑い様で汗はだらだらと流れているのが見てとれる。


 彼女は教宅の前に立つと、持ってきた出席簿を置き朝礼を始める。


「みんなさん、おはようございます。今年も出席確認を行った後に、修業式の放送が流れますのでトイレに行きたい人は出席確認が終わったら済ませてください。それでは出席確認をします。相沢さん」

「はい」


 安井先生に次々と名前が呼ばれいくと、途中で遅刻者が3人ほどやってきて、クラス全員がそろう。3人はブレザーのボタンを全て外し、ワイシャツをズボンから出しており、第一印象はいかにも不良と言う感じだった。


「3人とも、その服直しなさい」

「チッ」


 安井先生に怒られると、3人はチッと舌打ちをして席に座る。カズキは3人が先生と話し合っている声で、目が覚め顔を上げる。3人と目が合うと、彼らは和樹から視線をすぐに外した。


 あー遅刻常習犯の不良トリオか。他の奴らと違って話しかけ辛いんだよなー。ま、話しやしたいことがあるわけじゃないんだけど。


 朝礼が終わると安井先生は教室を出ていき、始業式までの自由時間がやって来る。各々が自由に行動する中、和樹は寝不足のため朝来た時のように鞄を枕にして寝ている。クラスの中はとてもにぎわい、お祭り騒ぎだ。


 安井先生が教室に戻って来ると、クラスの全員が椅子に座っていた。始業式が始まり、校長先生と理事長先生のありがたいお話を教室内の放送で聞かされるため、クラス全員好き勝手している。それはクラスの中心人物の明、真於、玲、咲の4人も例外ではなく、彼らは彼らで携帯ゲームをする始末。そんな和樹も寝不足気味なので寝ることにした。





こんなどこにでもある夏休み終わりの最初の学校だったが、この日俺達2-Bは全員が予想もしていなかった異世界転移を経験するのだった。


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