第20話『チェヴィルの思い』
「絶対いかない!」
「「ええ…」」
托生とソータの休暇は終わり、チェヴィルをモンスター討伐に連れていくという約束の日がやってきた。
だが、連れていこうとした矢先、これである。
「何でだ?」
「決まってるでしょ!まだあの議題が全く解決してないじゃない!こんな状況じゃいけないでしょ!」
チェヴィルのその言葉は、全くもってその通りだ。反論の余地などありはしない。
「確かにそうだな…」
「でしょ?」
チェヴィルはそうしていかないと続ける。
だが、托生もそれを一切否定しなかった。
「正解だ。しかも、解決してないというか、この事態は最悪のところに向かってる」
ソータもそれに頷く。
「色んな人の行動がややこしく絡み合ってて、私でもときにわからない時がありますから」
「お前がそこまでこの計画に真剣なのはすごく嬉しいさ…」
「…」
だが托生は、それを踏まえて言う。
「でもだからと言って、修行を欠かせていい理由にはならない」
「…どういうこと?」
「体力で足りないところが多すぎるんだ。いざ自分の身を自分で守ろうって時に絶対に守りきれないぞ」
「!」
はっきりとそう言いきってみせた托生。
その言葉の真意とは…──
「無力というのは脆く弱い、きっといずれすぐに何かを取りこぼしたり、力あるものに弾圧されてしまう。力がなくて取りこぼしてしまうものなんていくらでもある」
「…」
「お前は一人でドーラに襲われて戦えるか?逃げれらるか?守ってもらうのは楽だが、決して確実じゃないんだぞ」
そこでソータも言う。
「そうですよチェヴィルさん。私も托生さんに何度も救われて、思うんです。私に力が足りないと、托生さんに手を負わせることになるりますし逆もそうです。なお問題は、二人で力を合わせても勝てない場合です」
「…?」
「それを避けるために、私たちは二人で強くなると誓ったんです」
「二人で…?」
「守られることを考える前に、守れるものを守れるように、強くなることを考えなくてはならないのです」
「…」
チェヴィルには、その意味がわかった気がした。
それがどうしてなのかは、また別の話になるのだが…──。
「わかった、行く!」
「チェヴィル…!」
二人は、様子を変えたようなチェヴィルに笑った。
「元から、弱くあるつもりなんてないから」
「よく言ってくれた!」
──グレイス国王と庭を回る回るカトラとラトカ。
カトラとラトカはいつものように振る舞っていたが、少し昨晩のことが気になっている様子だった。
かなり突然のことだったので驚いているが、二人には国王に仕えるメイドとしての地位もあり、聞くのは避けていた。
その沈黙を、グレイスが絶つ。
「そう言えば、今日はチェヴィルは托生とソータについてレベル上げに行くらしいのぉ」
「「…はい」」
「チェヴィルは今までどうなのだ?レベル上げについての気構えは…」
「…気が進んでいるとは思えませんが、素質がありますので、一回のレベル上げでもかなり期待できます」
もちろん素質だけでは、たくさんのモンスターを切り抜けるのは困難だ。
だが、優秀なコーチが2名いる。
「まずはチェヴィルの気分からかのぉ」
「…おや?」
下りてきた托生とソータに、ラトカが気づく。
二人が連れるチェヴィルの様子が、どこか変わっていることに気づいた。
「チェヴィル様…何か様子が」
カトラがそれにはじめて気づいて、二人もその変わりように驚く。
そしてあちら側の3人も、こちらに気づいたらしい。
「「おはようございます、姫様」」
「変わったのう、チェヴィル」
「そ…そう?」
しみじみとする様子に、チェヴィルは釈然としない様子だったが、チェヴィルはそのまま二人と一緒に向かうことになる。




