第16話『目の前に現れるドーラ』
2人は、目の前に現れた衝撃の人物に目を見開く。
「…ふふ、どういたしました?托生さん、ソータさん」
ドーラの独特な微笑みに、二人はなぜか言葉が出なかった。
「…いえ…別に何も」
ソータがなんとか一声あげる。
それによって空気が変わり、托生もなんとか声を出せるようになった。
「何か用でもあるのか?」
「いえ?二人の活躍はよくお聞きしておりますもので、ぜひ一度お話をする機会があればなと思っていたものでねぇ」
ドーラはその笑みを少しほころばせ、托生の質問にごく自然に返す。
「お話ができてとても嬉しい限りです…またいずれお会いしましょう…フフ」
お話とは言ってもただの挨拶のようなものだが、彼はそこで満足し、笑いながら帰っていった。
「恐ろしいやつだったな…」
「なんと言うか…なめ回す感じの目でしたね」
二人は、チェヴィルがドーラによって狙われているということを思い出す。
思い込みはよくないが、今回彼に会ってみてその疑惑は大きくなったと言わざるを得ない。
だが、危険はチェヴィルだけではない。
「レベル40以上の二人だからか、俺たちに手を出すことはなかったが、あいつがこうやって自由に歩き回っている以上、ソータも一人で歩き回るのは危険だな…」
だが、ソータは嬉しそうに笑う。
「じゃあ、いつも通り托生さんと一緒ですね!」
「えっ!」
「托生さんが一緒なら、きっと大丈夫ですから!」
「そ…そうかなぁっ」
托生は頭をかきながら、「困っちゃうなぁ」とでも言いたげに笑った。
※日は暮れ始め…
托生とソータは、部屋に戻っていた。
「ドーラには会ったし、あとはもう一人──ベレントに会うだけだな」
「はい。国王も期待しているくらいですから、きっと素晴らしく頭の冴える人なんでしょう」
二人が話していると、ドアがノックされる。
「「托生さん、ソータさん、私たちです」」
ラトカとカトラの声。
托生とソータは、その二人だと安心して、ドアを開ける。
「どうした?二人とも。夕食までまだ早いだろう」
カトラが、そういう托生に返す。
「いいえ、客人が」
「「…?」」
誰だろうかと目を見合わせる二人。
すると、ラトカとカトラの後ろから、恭しく華奢な男が現れる。
「二人に紹介します。この人は、この王城の直属のバンカーである──」
「ベレント=ガーフィスさんです」
「「…!」」
ベレントは、その目の眼鏡を指先で上げ、その手を差し出した。
「グレイス国王からのご勅礼を受け、お邪魔させていただきます、ガルシェット王城金融管理部第一部課長──ベレント=エボル·ガーフィスと申します。以後お見知りおきを」
なんという知識人だ。
グレイス国王の認める国家権力のトップ──間違いなく、その呼ばれは大袈裟でもなんでもない。それはこうやって目にしてわかる。
托生とソータは、その男の手を握った。
「托生さん、ソータさん。急に押しかけてきて大変恐縮ではございますが、ご同行願います」
「え?唐突…」
「それで、どこに…?」
ソータがそう質問すると、ベレントは続いて答える。
「地下1階、シークレットの会議室です」




