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第11話『ドーラ=グォンク』

※休暇2日目の朝が来た


 十分に休憩をとった托生とソータは、疲れが一気に吹き飛んでいた。

 二人はピンと背筋を伸ばし、爽やかに庭に出てくる。外では、カトラとラトカが朝の点検をしていた。

「「おはようございます。お二人様」」

「おはよう」「おはようございます」

 カトラとラトカに挨拶を返す二人は、いかにも元気そうだった。

「お体の調子はいかがですか?」

 ラトカの質問に、二人は元気そうに答えた。

「もうバッチリさ」

「体のどこも痛くないですしね」

 二人の体力は、完全に回復していた。托生にいたっては、あの5連コンティニュエス·スマッシュも4回は打てそうな体力があった。

「3日間の休暇ですから、このお城の内部を探検してもかまいませんよ」

「お二人を知らない者はいないはずですし、色々と案内もしてくれるでしょうし」

「──そうだな…ソータ、どうする?」

「まあ、色々と知りたいことも多いですしね」

 托生とソータの目的は、この広い城をまわるということで決まった。



「こんなに広い城じゃあ、 一体まわるのに何時間かかるんだろうな」

「ええ…」

 二人は城の中を歩きながら、そうもらした。

「托生さん、今日は何をするんですか?」

 ソータは托生に聞く。だが、托生は表情を変えて言った。

「…俺たちは今から、騎士団の方に行きたい」

「…?」

「俺が用があるのは、騎士団長ドーラ=グォンクだ」

「え!?」

 ソータは驚きのあまり、そこで立ち止まった。

「チェヴィル姫を狙っているという、あの…」

「ああ。だが安心しろ、ソータを襲おうものならぶっ飛ばしてやる」

「…ですが、なぜ彼に?」

「あいつが怪しいってんなら一度は会っとくべきだろ?それに顔も知らないヤツは疑えないし」

 托生は騎士団のある方を探しに、廊下を歩いていた。

 するとそこに一人の男が通りかかった。

「おはようございます!」

 男は通りかかった二人に、自衛隊のように洗練された敬礼をしてくれた。

「おう、おはよう」「おはようございます」

 托生はその男を呼び止め、騎士団のいる場所について聞いた。

「私共は、現在から二時間にかけて、地下一階のジムで集会であります」



 地下一階に向かうと、そこでは男の号令が響いていた。

「敬礼!」「ハイッ!」

 100人ほどの騎士団はそこに集まり、乱れのない整列をおこなっていた。

 ジム内に入ると、全員はこちらの存在に気づき、礼をした。

「おはようございます!!」

 この城で托生とソータの名を知らない者はいない──ラトカのいうことは正しかったらしい。

 二人の姿を見た騎士団からは、「すごい、あのお二人か」と声が聞こえる。スーパースターにでもなった気分だ。

「托生さまとソータさま。よくいらっしゃいました」

 托生は辺りを見渡して、ここには特に目立つ人物はいないとわかった。

「なあ、ドーラっていう騎士団長はいるか?」

「…!ぁー…ドーラさんは今、城を巡回中です」

 どこか団員の様子が辿々しかったが、二人は食いつかなかった。


「じゃあ、ドーラってのがどんな人物なのか知ってるか?」

 托生の質問に、団員の一人が答える。

「ドーラさんは、托生さんに匹敵するほどの体術の持ち主で、その体は筋肉だらけで身長は230cm、カトラさんもラトカさんも二人がかりでないと手が出せないそうです。ですが、最近は見ないことが多いですね」

「え…?見ないってどういうことだ」

「何かよく王城付近の森に出向くんですよ。アングワーナってわかります?」

「…詳しく聞いていいか?」

 アングワーナとは、視界を遮る霧で有名な森なのだという。そして、その森は絶対に抜け出すことができない。人呼んで、“デビル·グリーン·クレイドル”。

「そんな場所に頻繁に訪れるというのは、なんともおかしな話だな」

「それだけじゃないんです」

「ん…?」

「そこに出現するモンスターは平均レベル28、そんなのがうじゃうじゃいるんですよ?そんな場所に頻繁に現れて、無事なわけないじゃないですか」

 レベル28がうじゃうじゃと──デビル·グリーン·クレイドル(悪魔の緑の檻)とはよく言ったものだ。猛獣の檻に入れられ鍵をかけられれば、ただ猛獣に食われるのを待つことしかできない。

 そんな森に幾度となく通い、無事に生還してくる。どう考えても常人ではない。

「なるほどな…」

 だが托生は、ドーラという人物がますますわからなくなってきた。



 托生とソータは廊下を歩きながら、そこで仕入れたデータに頭を悩ませていた。

「アングワーナに足しげく通い帰ってくる…カトラとラトカも怖れる実力か」

「そんな人間がチェヴィルさんを狙っているとなると恐ろしいですね…」

 チェヴィルが疑うのも無理はない。相当の実力を持つと聞くセインを横に置く理由にも納得がいく。

「ですが、かなりいいデータはとれたはずです」

 ソータは自信たっぷりに言う。

「いずれそのドーラという男に会えれば、今よりももっと多くの情報が仕入れられるはずです」

「ドーラという人物がどれだけのものなのかは知らないが、俺たちもレベル上げが必要みたいだな」

「ええ…──はっ!」

 托生が張り切っていると、ソータが突然動きを止める。

「どうした…?」

 ソータはひどく焦っていた。

「今、ドーラさんは廊下を回っていると聞きましたよね…」

「ああ…そうだが」

 ソータはものすごい剣幕で托生に叫んだ。

「カトラさんとラトカさんは、今庭の点検中です!チェヴィルさんが危ないですよ!」

「なっ!?」

 二人は焦ってチェヴィルの部屋に走った。

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