第10話『カルルージュ街の仲間』
「で…どうなったんだ…?」
「結果は…」
ラトカに真剣な眼差しをおくる托生とソータ。
3人は庭のポストの方に向かい、ある伝達を期待していた。
ラトカはポストの中を見た。
手紙は1通も入らないはずの日にも関わらず、ポストの中には手紙が1枚。
「…」
ラトカはその手紙を手に取り、その差し出し人をチェックする。
「宛先…ガルシェット王国王城、アラシマルタクセイ、ソータ=ルベルス·レスティーム·キュベル」
「「…!」」
托生とソータの表情が期待に揺らぐ。
「差し出し人…──」
「「…ゴクリ」」
ラトカはその手紙の封筒を裏返し、そこに書いていた名前を見せる。
「カルルージュギルド一同」
「「やったぁーっ!!」」
二人は喜びのあまりハイタッチをする。
托生はその手紙を受け取って、ソータと跳び跳ねていた。
「朝っぱらから賑やかね…」
二人の後ろに現れたのは、チェヴィルと彼女につくカトラだった。
「前いた街の友人が手紙をくれてな。ちょっと騒いじゃった」
「ちょっとどころじゃないわよ」
托生は時計に目を向ける。
「チェヴィルさん、結構起きるの早いんですね」
「朝は早く起きるようにしてるの。夜は大体早く寝るわ」
「「健康的…」」
二人がチェヴィルの1日のサークルに感心していると、またさらにセインがやってきた。
「おはようございます、みなさん」
「おはよう。王子の朝も早いなぁ」
「5時には起きてますよ」
「えっ、マジ?」
ラトカとカトラは、托生とソータにひとつ伝えた。
「托生さんとソータさんには、5日間の休暇を与えようと思います」
「え?何で?」
「昨日は色々と大変でしたでしょうし、」
「なるほどな。でも筋肉痛も何ともないぜ」
「そうですか?托生さん、ソータさん、背筋を伸ばしてみてください」
二人は背筋に力を込める。
──バキッ!
托生とソータの絶叫が響いた。
これはしばらく休養をとった方が良さそうだ。
※
托生ら二人は部屋に戻り、ベッドに横になった。
「俺たちの筋肉痛こんなひどかったの!?」
「一度背筋を伸ばすだけで…バキバキ──ぁあっ!」
これだけの疲れが溜まっていたことに驚きつつ、托生は朝にもらった手紙を手に取る。
「今後もあいつらと連絡がとれると思うと御の字だ」
「ええ、3日会えないだけでこうも寂しいものなんですね」
托生が封筒を開くと、なんと手紙が7枚も入っていた。
「いろんなやつらが、一人ずつ手書きで書いてくれたみたいだな」
托生はそれを順番に読んでいき、ソータはそれを聞いていた。
「1枚目は…ドルフィンからか」
『タクセイちゃんとソータちゃん、手紙ありがとー♡そこでも元気にやれてる?』
「できてますよー」
ソータも返事をする。
『こっちはすごく元気よ!ギルドもあらかた修理できたし、みんなで集まって眠れば雨も凌げるわ!…多少ぽたぽた落ちてくるけどね。あっ、そうだ!それはさておき、ソータちゃんとの関係はどう?タクセイちゃん、彼女は頑張ってあなたについてきたんだから、その期待に答えなきゃダメよ!がんばってね!返事はいずれ、それじゃあね☆ ──ドルフィンより』
「なんというか…すごくあの人らしい手紙だったな」
「托生さん!頑張りましょうね!」
「お…おう(?)」
「2枚目は…エイヂルか!」
『タクセイさんとソータさんから手紙がきたと聞いて、ボクも手紙を書いてみようとおもいます』
「よくできた手紙だな。あいつ本当に子供か?」
『今やタクセイさんとソータさんは、子供たちの間でもヒーローのような人ですよ。ボクも本当にそう思ってます。二人を慕う子供たちの代表として、書かせていただいた手紙です。そちらからの朗報も待ってます、がんばってくださいね! ──エイヂルより』
「スーパースターにでもなった気分だ」
「ええ、すごいいい気分ですね」
「3枚目は…エルフォレスト!」
『二人とも手紙をくれて、とても嬉しいです。とても恩があるお二人なので、私も書いてみようとおもいます』
「エルフォレストさん…私のライバル…」
「何を言ってるんだ?」
『スカビオールは賠償金は払えないとのことで、懲役20年が決定しました。エデルガルトとの関係は順調ですよ、いずれは子供も産もうかなと考えてます。ソータちゃん、托生さんとキスはできましたか? ──エルフォレストより』
「…ぁぁあー!!」
「ちょっソータ、落ち着いてくれ!」
「4枚目は…リェルからだ」
『王城での生活はどうですか?気になったので、私も手紙を送らせてもらいます』
「リェルさんの料理、うまかった」
『食糧調達ではたらく冒険者達も多くなって、私も料理の腕が鳴るというものです。ギルドのみならず、街は笑顔であふれています。街の復興もそう遠くはないでしょう。托生さんとソータさんをいつでも出迎えられるように、私たちはがんばっています ──リェルより』
「ほんとすごいな、強い女性だ」
「同性ながら惚れちゃいますね」
「5枚目は…フェイル!」
『二人の防衛戦士としての功績は、街の新聞でも大見出しだったよ。がんばってるみたいだね』
「案外あっちにも、活躍は伝わってるみたいだな」
『仲間としてすごく鼻が高いよ。そして私も、ゲバブルドと一緒によりハイレベルな冒険をはじめて、レベル30も目の前まで来てるわ。二人にずっと負けているのも癪だしね。お互いがんばろうね! ──フェイルより』
「案外、矯慢の鼻を伸ばせる暇はないかもな」
「あの二人ですからね。きっとすごいスピードで追い上げて来ますよ」
「6枚目は…エデルガルト」
『二人から受けた大きな恩を胸に、ここに手紙を記しエールを贈りたいと思う』
「いかにもアイツらしい文だな」
『托生もソータも、かの戦いの時よりも格段にパワーアップしていると聞く。再び拳を交えれば確実に私の負けだろう。だが私も負けてはいられまい、街や友のために、愛する妻のために、私は鍛練を続ける。いずれは、托生と肩を並べる力を持つつもりだ。 ──エデルガルト』
「あいつならあり得そうなのが怖いな…」
「街に戻ったら彼が一番怖いですね」
「さあ、最後の7枚目は…ゲバブルド!」
『タクセイとソータちゃんを思い出すたびに、いっつもギルドは何かと大騒ぎだ。お前らも、俺やフェイルのようなムードメーカーだったんだなって、今になって思う』
二人も、この手紙を見て自分達もあのギルドの一員だったと深く実感した。
『すげえな、お前らは戦士として最高で、カルルージュ街の誇りとして自慢できるやつだってみんな言う。だが俺とフェイルやみんなにとっては、二人はただただ大切な仲間だ。二人の活躍を願って、俺たちも冒険に性を出してるよ。これからも頑張ってくれ! ──ゲバブルドより』
7人全員の手紙を読み終えて、二人は実感した。
カルルージュ街のみんなが自分達を応援してくれているということが、嬉しくてたまらなかった。




