第06話『ツーペア同士の組み手』
「正直、お前ら二人の実力は知りたいと思っていた」
托生は、目の前で戦いを望んでいる様子の二人に言った。
対人戦はかなり久しぶりだ。二人は正直緊張していたが、托生はそこで大きく話を切り出した。
「あと、なんかお前らの関係複雑そうなんだよ」
それを聞いて、はじめて二人に変化が起きる。
「…気のせいでは──」
ラトカがそこまで言いかけて、ソータが新しく出る。
「特にそこのカトラさん。几帳面ですが、逆にそれが裏目に出て損をしている。でも、どこかラトカさんに気を配っているようにも感じられるんです」
当のカトラはというと、少し表情が歪んでいた。
「…正直、そう思う節もあります…」
「お姉様」
そこで、托生とソータは新たな発見をする。
カトラは、ラトカをお姉様と呼んだ。
「へえ、お前らやっぱり姉妹だったか。どうりで息が合うわけだ」
続ける托生に、ラトカは少し声をあげた。
「何が狙いですか。仮にそれが真実でも、あなた方には関係はないでしょう」
ラトカの問いに、二人は笑みを浮かべて答えた。
「「人助けだ」」
怪訝そうなカトラとラトカの表情に、そのとき変化があらわれた。
ラトカは、セインに声をかけた。
「王子さま。ただいまより組手を始めます」
「托生さまとソータさま。ご覚悟を──」
ラトカとカトラの瞳が鋭くなり、二人を見据えた。
そして托生とソータは臨戦体勢に入る。
「「手加減は不要です。こちらも、全力で戦わせていただきます」」
「「…!」」
間違いなく、その瞳は本気だった。
「インテンスバレット!」
カトラの掌からあらわれた小さなエネルギー弾が15発、托生に襲いかかる。
「ハイガード!」
その攻撃を、むしろ托生は迎え撃つ。
「オラァアアアッ!!」
托生は何とも豪快に、自分の防御力を上げて腕でエネルギー弾を弾き返していく。
空気を切るように、バババババッ──と音は絶え間なく響く。
そして全て弾き返すと、托生の腕はかなりボロボロになった。
エネルギー弾が全て弾かれクリアになった視界には、ラトカどころかカトラもいなかった。
「何っ!──…はっ!」
托生は気配を感じとり、後ろからの攻撃を回避した。
後ろでは、カトラがこちらに飛び蹴りを放っていたのだ。
避けたまではよかったが、カトラはそこから回転し、容赦なく托生を足蹴にした。
「ぐっ…!効かねえよ畜生っ」
托生はカトラの足を掴み、振り回して投げ飛ばした。
だがカトラは焦らずに着地し、再び托生のもとに走っていった。
「ウィンドボール!」
ソータが投げた6つのウィンドボールは、彼女にたちまち接近するラトカを襲う。
だが、それは全て回避され、そしてラトカとの接近戦がはじまる。
だがそれにすごまず、ソータは余裕だった。
だがラトカはもろともせず、インテンスバレットを放った。
「うあっ!」
12発をうければ、ハイガードをつけていたソータでもたまらなかった。
攻撃が晴れると、そこではソータがやっと息を切らしていた。
──離れたところで見守るチェヴィルは、ハイスピードな攻防戦に息をのんだ。
「どうですか?防衛戦士のパワーは」
「……」
セインの質問に、チェヴィルは一言も返せなかった。
「…ふぅ。やっぱ、すげえわお前ら」
托生はソータと並んで、息を切らしながら笑って言った。
だがラトカとカトラは、その様子にやけに不機嫌そうだった。
「…托生さん、ソータさん。私は本気で戦ってほしいと言ったはずです。…托生さんは防御スキルしか使っていないし、ソータさんに至ってはわざと避けれるように細工している。いい加減にしてください」
そこまで聞いて、托生とソータの表情から笑みが消えた。
「私たちはお互い、実力は互角に近い。そちらが100%でやってくれないと──」
「じゃあ、お前らは100%を受け止めらるのか?」
「…?」
托生の質問に、ラトカの眉根がひそめられる。
「いいぜ?フルパワーでやってやるよ。でもその代わりに、着替えさせてくれよ」
「はい?」
「部屋で着替えてくる。戦いのユニフォームにな。すぐに戻るさ」
「…なるほど」
カトラがはじめて会話に入る。
「やりましょうお姉様…徹底的に叩きのめします」
「カトラ…」
ラトカはその時、カトラの瞳が怒りに燃えていたのを見た。
「!…わかったわ。──…托生さん、逃げはありませんよ」
「ああ」




