第03話『成長した2人のパワー』
「ボゥアアアッ!」
まずはバルクサウルスが突進してくる。ターゲットは托生だ。
「おうしっ!ハイ·ガード!」
バルクサウルスは3tの体重をのせ腕を降り下ろす。すると托生はその腕を受け止め、地面に亀裂が入る。
「ぐっ…ぅおおーっ!!」
その時、観客全員が目を疑った。
「おうらあっ!!」
托生がバルクサウルスの腕を押し返し、その巨体を相撲のごとくひっくり返していた。
「スマッシュッ!!」
「バゥアアアッ!?」
腕に力をこめて、腹にスマッシュを叩き込むと、やつは絶叫をあげ、衝撃波に3mは吹っ飛んだ。
ソータはサーベッジタイガーと戦う。
やつはソータに食らいつこうとするが、ソータは軽々とそれを回避していた。
「ストリーム·レーザー!!」
「…ガアアアッ!!」
6本の風の光線を直に受け、サーベッジタイガーからは血が吹き出した。
『なんという激しい戦いだあ!強力なモンスターも完全に遊ばれている!!』
戦況を見ながら、実況はウキウキ、観客も大盛り上がりだった。
チェヴィルは、セインの二人の実力に舌を巻く様子に驚いていた。
「想像以上ですね。彼らの実力は…」
「セイン…あれは本気なの?」
「…いいえ、まだですよ」
チェヴィルはセインのいう、二人がまだ奥の手を隠しているという事実にさらに驚いていた。
「ギュウエエエーッ!!」
ジェーハドゥムラは鳴き、大きく響き渡る。そして爆風が吹き荒れ、観客席の全員にも風がふく。
「久しぶりだな、この感覚」
「はい!」
吹き荒れる爆風で、モンスター2体は怯んでいたが、二人はウキウキしていた。
セインはそれを見て、どうすると期待していた。
「どうする?ソータ」
「…突っ込みます!」
「よし来た!」
ソータはハイ·スピードをうけてさらに前進した。いや、むしろ特攻といっていい。
すると彼女はヤツに手をかざして叫んだ。
「インテンス·サンダー!!」
するとジェーハドゥムラの体に高圧の電流が走り、まばゆい光が点滅した。ソータの新スキルである。
15秒後にそれは消えたが、やつは体が麻痺して動かなくなっていた。
「すごいスキルだ!ソータ」
「ありがとうございます!」
そして托生は、腕に大きな力を溜めていた。
「托生さん!やっちゃってください!」
「おう!」
托生はその拳を、ジェーハドゥムラの腹にめがけてお見舞いした。
「Cスマッシュ!!」
腹へのダメージは、いつものスマッシュと変わらなかったが、次に恐ろしいことが起きた。
「1…!」
再び衝撃波が走り、ジェーハドゥムラは吹っ飛ぶ。向こうの方には、伸びているモンスターらもいた。
「2…!」
衝撃波はモンスターらを巻き込み、ジェーハドゥムラにさらなるダメージを与えていた。
「3!」
最後の衝撃波によって、三体のモンスターは見事に撃破された。
「やったぜソータ!」
「はい!」
最後のグータッチで、場内は湧きに湧いた。
『試合の決着はわずか7分!その短時間で、圧倒的な勝利をおさめたァーッ!!』
セインとグレイスも満足そうに手を叩き、チェヴィルの表情には強い驚きが見えた。
戦いの終わりを確認して、カトラとラトカが出てくる。
二人は托生とソータの戦いぶりに言葉を失っていた。
「すばらしい戦いでした…」
「正直、驚いております」
「どうも、俺も力を試す機会ができて助かった」
ラトカは息を切らさない托生に内心恐怖すら抱きながら、二人を防衛戦士としての採用した。
「…ん?」
その時、ソータは異常を察知した。
「…?どうかしたk──」
托生がソータに問うと、彼女はすごい剣幕で忠告した。
「気を付けてください!何か来ます!」
すると、場内に地響きが起こる。
『なっ…何なんだこの地響きは!?』
実況もわかっていないらしい。
「──バァォオオオーッ!!」
長耳類らしき鳴き声が響くと、闘技場のゲートが轟音とともに破壊され崩れた。
するとその奥には、13mはあろう巨大なマンモスが立っていた。
『バトル·マンモス(lv42)』
バトル·マンモスは、4人めがけて思いきり突進してきた。
その巨体を4人は紙一重で避けたが、その奥にいた三体のモンスターの残骸の形が変わるほどの衝撃が入り、壁にヒビが入った。
衝撃に場内が震えた。
「何てパワーだ!…んっ!?」
驚く托生は、マンモスがカトラを狙っているのがわかった。
「まずいぞっ!カトラァ!!」
カトラは不意をつかれ、攻撃をうけた。
深いダメージを負い、壁に吹き飛ばされる彼女は、意識が遠退くのを理解した。
ラトカは助けに行こうとしたが、距離が遠すぎた。
だが、カトラを救うものが現れる。
「…!」
絶体絶命の危機のカトラの前に、托生が立ちふさがる。
「ぐっ…!」
ヤツの降り下ろす巨大な腕を、托生はスキルを使って受け止めた。
「ハード·シールド!!」
ケィとレィの防御スキルをそっくりそのまま使い、托生はその攻撃を防ぎきった。
「食らいやがれ!」
托生は腕にさらなる力をこめた。
「Cスマッシュ!!」
その攻撃をうけ、5連続の衝撃を食らったバトルマンモスは、壁の方に吹き飛ばされ闘技場の壁は崩れた。
「バァアアアアーッ!?」
バトルマンモスは倒れ、托生はカトラを守り抜いた。
「大丈夫か!カトラ!」
「はっ…はい」
カトラの体には、目立った外傷はないらしい。本人も大丈夫そうだ。
托生がカトラに手を差しのべると、彼女は立ち上がった。
「ソータ。カトラの傷を治してやれ。今日のはアクシデントなんだろ。もうやめておこう。帰るぞ」
「ちっ…失敗か」
解散する四人を見て、ゲートの向こうで舌打ちをする影があった。
「まあいい。いずれ俺の野望は成就される。くくく」




