第02話『防衛戦士の実力』
王国の朝──。
托生とソータは、王国の闘技場に集められた。
高さ34mの壁に900平米の砂地。何やら大きなことが始まりそうな空気だ。
さらにそこの観客席には多くの観客が集まっており、とてもウキウキした様子である。
「どういうことだこれ…」
準備室の窓からそれを見て、困惑する托生とソータ。
すると、彼らの前のカトラとラトカが話し出した。
「昨夕にお話しした通り、今日は実力試験です」
「今回の試験で解析したお二人の実力にあわせて、今後の任務の組み立ては決まりますので、是非頑張ってください」
「頑張って──って…」
淡々と言うラトカに困惑する托生。
だが二人にとっては、試験よりもこのたくさんの観客が気がかりだった。
「周りのこの観客たちは…?」
質問するソータ。
「これだけたくさんの人たちがいたら、お二人もきっと気を張れるでしょうからね」
カトラのスパルタ式理論に困惑するソータ。
「このスパルタさ…俺がソータとレベル上げに行った時を思い出すな…」
「托生さん…?」
※
托生とソータが戦闘服に着替える。托生のはゲバブルドとフェイルにもらったものを、戦いからの修復がてらに黒タイプにカスタムしたものである。またソータのものは新しく、托生の戦闘服のスカートタイプである。
「よく似合ってるぜソータ。何だか大人っぽいというか…」
「托生さんのも、また違ってかっこいいですよ」
「そ…そうかな?」
「戦いの前だと言うのに呑気ですね」
「ごめんって…」
溜め息をつくラトカに、托生はたびたびブルーになった。
「そろそろですよ。みなさんお待ちです」
──準備室を出て闘技場に出ると、観客の拍手喝采に包まれた。
「おびただしい人数だな」
「3000人は優にいるんじゃ…」
今さら緊張してきた二人。
すると場内全体に、盛大にファンファーレが鳴り響いた。
『本日はお集まりいただきありがとうございます!カルルージュ街からやって来た期待の防衛戦士の実力やいかに!必見です!』
プロレス会場のようなアナウンスに、観客らの熱は最高潮である。
『本日はなんと、実力をこの目で見たいと、グレイス国王さま、チェヴィル姫さま、セイン王子さまがお越しくださいました!』
「「えええっ!!?」」
托生とソータは、それに驚いたらしい。
特別観客席には、その3人が目立っていた。
どうやらグレイス国王も、今か今かと開催を待ちわびているらしい。それはチェヴィルとセインも同じだった。
『さあ、防衛戦士は二人!嵐丸托生!ソータ=R·L·キュベル!そして、今回の実力を知ってもらうための、今回の戦いの相手はぁーっ!』
すると、闘技場のゲートが開き、托生とソータは次の光景に目を疑った。
3体の10m級の巨大なモンスターが、勢いよく現れたのである。
「──ボゥアアアーッ!!」
『強靭な腹筋をもつ肉食恐竜、バルクサウルス!レベルは35!』
「35…ソータいけるか!」
「はい!」
自信たっぷりのソータに、托生も笑みを浮かべた。
「──ゴロロロ…」
『森の獰猛な大食漢、サーベッジタイガー!レベルは36!』
「あいつ相当腹空かせてるな…」
これでも二人の表情には余裕がうかがえた。
だが次に、二人は驚愕した。
「──ギュアアアーーッ!!」
『南から来た岩場の疾風、ジェーハドゥムラ!レベルは38!』
「ジェーハドゥムラだって!」
「確か生態上、南にいる際はまだ未成熟らしいです!私たちが戦ったのは、確かその未成熟の時期です!」
「未成熟であれだけのパワーか…」
3体の強力なモンスターの勢揃いに、会場の熱気はさらにアップする。
──そのころ一方、王族3人はというと
「全員がlv35程度…それもほとんどが、有名なモンスターばかり…」
チェヴィルは真剣に戦況を見ていた。
「この試験の突破ができなければ、防衛戦士としての採用はできない…厳しいルールです」
セインの言葉に、チェヴィルは驚いた様子だった。
だがグレイスは、いかにも面白そうに言った。
「ワシが招集した戦士だ。この程度でやられてはつれないからな…」
彼は期待のまなざしを浮かべ、コロシアムを見やった。
『それでは…、試合開始ぃいっ!!』
ゴングが鳴り響くと、モンスターは一気に動き出した。




