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第01話『2人は王国防衛戦士』

 しばらくして馬車は止まり、二人は王城の前に下りた。

「よっと…おおっ」

 超弩級の王城に圧倒されていると、すぐに挨拶(あいさつ)が来た。

 どうやらそれは二人らしく、その装飾からわかる通りメイドのようだ。

「お待ちしておりました」

「私たちはガルシェット王城専属メイドの、ラトカと──」

「カトラでございます」

「ど、どうも…」

 托生とソータは、ラトカ,カトラと名乗る二人のメイドに会釈(えしゃく)した。

 二人は托生の2年下くらいの少女で、落ち着いた態度を保っていた。

「城の奥にて国王らがお待ちです」

「同行お願いします」

 国王に待たれるなんてすごい待遇だなと、托生の胸の奥は緊張でキリキリしていた。



「カルルージュ街からの防衛戦士、ご到着です」

 二人は、王城のホールのような場所に呼び出された。

 周りにはナイトのような兵が、乱れることなく整列していた。

「すごいな…──ん?」

 レッドカーペットを歩きながら唖然とする托生は、奥の方の一際大きな純金製のイスが3つあることに気付いた。

 ソータと同じくらいの(とし)の、ドレスを(まと)う少女。腰にサーベルを(たずさ)える、14歳ほどの獅子色の(かみ)の少年。そして温厚そうな表情を浮かべ、派手な服をまとい(かんむり)(かぶ)る老人であった。

 ソータが止まったタイミングで、托生もそこで立ち止まった。

「托生さん。国王の前です」

「王様?…あっ、やべっ」

 ソータが(しず)かに(ひざ)をつくので、托生もそれを見よう見まねでトレースした。


遠路(えんろ)はるばる御苦労(ごくろう)であった。私は、グレイス=ガルシェット。ガルシェット王国の国王である」

 国王は、その温厚そうな表情に似合った素振(そぶ)りだった。

「すまんのう、私は人に頭を下げられるのは(きら)いなのじゃ。どうか頭を上げてくれ」

 托生とソータは意外に思いながらも、その頭を上げ、立ち上がって国王を見た。

「さて、ここに来てもらった理由は他でもない。この王国の姫でもある我が(むすめ)(ねら)(やから)がおるのだ。托生とソータには、チェヴィルを守ってほしい」

 托生チェヴィルという姫の方を見る。

 何回見ても12歳にしか見えず、彼女の顔は不機嫌そうにも見えた。

「おじいさま。あの青年は本当に防衛戦士なの?さっきから私ばかり見てきて、変態みたいで虫酸(むしず)が走っちゃうわ」

 チェヴィルの一言は、開口(かいこう)一番辛辣(しんらつ)な物言いだった。

「これチェヴィル。これからお前を守ってくださるんだ。(あやま)りなさい」

「ふんっ、弱そう」

 謝る気はないらしくそっぽを向くチェヴィルの代わりに、グレイスが謝る。

「すまないな托生」

「いえいえ…」

「だが安心してくれ。チェヴィルはこのように素直(すなお)ではないが、きっとお主を頼っておるはずだ」

 当の本人はえらく青筋を立てていたのだが。


 グレイスは気にせず続けた。

「当然のことだが、お主ら二人だけに任せるつもりはないぞ。ここに集まっている騎士達は、全員がlv30以上の精鋭ばかりだ。そちらのメイド二人も互いにlv45。そしてそちらの王子は──」

 王子は席を立って、托生とソータの前に出た。

 彼は胸に手を携え、落ち着いた物腰(ものごし)で話した。

「お初にお目にかかります。ガルシェット王国の王子セインと申します」

「「ど、どうも…」」

 セインに頭を下げる二人に、なぜかチェヴィルは鼻を高くしていた。

「ふふんっ、あなたたち、レベルは?」

「42だ」「39です」

「へぇ、まあやるじゃない。けど、セインはもう56よ。この場にいる全員の足元にも及ばないわ」

「よさないか。チェヴィル」

「はいはい」

 自慢気に語る彼女をグレイスはたしなめるが、チェヴィルはその笑みを(くず)さなかった。

「そうよね!セイン」

誇張(こちょう)はありますけど、大体は合ってますかね」

 セインはそう語ると、托生とソータは驚いたように目を見合わせた。

「お(ぬし)らがいれば、防衛はうまくいきそうだ。期待しておるぞ」

 グレイスが手をパンパンと叩くと、騎士一同と共に全員が解散した。



「すげえ…」

 二人専用の個室へとやって来ると、托生とソータはその内装に目を向いた。

「すごく広いです!」

 大きなフカフカのベッドに高い天井、そしてフレグランスのいい香りがする。窓を開けると、王国の様子が一望(いちぼう)できた。


「ご満足いだだき光栄です」

「ご自由にお使いください」

 案内してくれたカトラらは、喜ぶ托生に淡々と応答した。

「こちらからディナーをお持ちします」

「すげえVIP待遇(たいぐう)…」


 ラトカが部屋を出ていこうとする。

 すると、カトラが彼女を止めた。

「それには及びません。私がお持ちします」

「…そう」

 少しうつむいた様子で、ラトカは頷いた。

 そのやりとりに疑念を持ちつつも、3人は彼女の背中を見送った。


 その後、ラトカによって夕飯が持ってこられた。

 その美しい料理に、二人は目を(うば)われた。

「以上でございます」

「お風呂やシャワーはお部屋にありますのでご自由にどうぞ」

「明日は朝からお二人の実力試験に向かいます」

「lvの高いモンスターと戦うことになりますので、しっかり食べて、心の準備をお願いします」

「おう」「はい!」


 二人が部屋から戻っていくのを見送ると、ラトカが振り返った。

「あっ、シーツが汚れますので、夜は(さか)らないでくださいね」

「するかよ!」

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