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第73話『カルルージュ街の本領』

 モンスターの群れが出現し、地獄絵図と化すカルルージュ街。

 街の時計台を3体の巨大なモンスターが押し倒すさまを見ながら、街のみんなは悲鳴を上げ逃げ(まど)う。

 だがその中で、リェルだけがひとり厨房へと戻って行くのを、ドルフィンは追いかける。

「待ちなさい、リェル!」

「すみません!絶対に必要なものがあるんです!」

 リェルは厨房の倉庫を(あさ)り続けた。

「あっ…見つけた!」

 リェルは見つけたそれをポケットに大切に仕舞いこんだ。

 すると、突如ギルドの天井が壊れ、そこからバイス·グレムリンが現れた。

「…」

「ひっ…!」

 リェルは、バイスの峻厳(しゅんげん)な瞳に見据えられ後ずさる。

 だが彼女の前に、ドルフィンは立ち塞がった。

「逃げなさい…!リェル!」

「いいから逃げるの!」

 ドルフィンはリェルを逃がし、バイスと互いに睨みあう。

 そしてしばらくして、戦いが始まった。


 フェイルは、残った敏腕の冒険者とモンスターに挑んでいたが、そのプレッシャーに足がすくんで動かなくなっていた。

 あちこちから、モンスターが建物を破壊する音や、逃げ惑うみんなの悲鳴が聞こえてくる。

「もう、やだよ…!」

 フェイルはこの状況に涙すら流した。

 この街は終わりだ──ゲバブルドもいない。

 それでも、フェイルは助けを求めていた。

「助けて…!」

 フェイルの涙が垂れ落ちたその時だった。

 彼女の肩を何者かが叩いた。

「待たせたな、フェイル!」

 フェイルにとって親しみの多いその声に、彼女は振り返る。

 そこには、ゲバブルドが立っていた…間違いない、ゲバブルドだった。

「ゲバブルド!嘘!本当にゲバブルドなの!?」

 フェイルの前の彼は、彼女ににっこりとして語りかけた。

「ああ!この通り、完全復活だ!」

 フェイルは、涙ながらにゲバブルドを抱き締めた。

「怖かった!怖かったよぉ…!」

「大丈夫、もう安心さ!こっちには力強い味方がいる!」

 すると続けざまに、後ろに新たに味方が現れる。

 戦うみんなの表情に、安心の色が見えた。

「カルルージュ街の危機だ。私も放ってはおけまい」

「援護しますよ…みなさん!」

 エデルガルトとエルフォレストである。

 元はカルルージュ街の驚異となっていた二人が、今やカルルージュ街のヒーローとなっている。

 フェイルは笑顔になり、勇気を得た。

「みんな!」

 カルルージュギルドのみんなも、ビッグファングのみんなも、そこには全員がいた。

 フェイルは涙を拭いて、モンスターに向き直った。

 ──何も怖くない、自分達には頼るべき仲間がいる。

 そして街中ではエイヂル等の子供たちが、馬車に乗って戦いに向かない全員を避難させていた。リェルなどのカルルージュギルドのスタッフは、全員の避難誘導を行っている。

 冒険者が、自信たっぷりにモンスターを取り囲む。

 3体のモンスターが悲鳴をあげ、次々とボロボロになってゆく。

 ゲバブルドとフェイルそしてエデルガルトとエルフォレストを筆頭に、その場にいる全員が戦っていた。

「いきますよ!エデルガルト」

「ああ!」

 エデルガルトの攻撃は、さらにモンスターを追い込む。エルフォレストも援護(えんご)魔法でみんなをアシストしていた。

「俺たちも負けてられねえな!フェイル!」

「ええ!いくわよ!」

 フェイルとゲバブルドは、絶妙なコンビネーションでモンスターを圧倒していた。

 全員が戦っていた…カルルージュ街にいる全員が、今まさに戦っていた。


 ドルフィンは、バイス·グレムリンと渡り合っていた。

 バイスはボロボロであったが、さして戦力は下がっていないはずだった。

「なんというパワーだ…!」

「許さないわよ。私たちの街を(こわ)したこと…──」

 バイスは、ドルフィンに現れるとてつもないパワーを感じ取った。

「みんなの居場所を壊したあなたを!」

 ドルフィンは、ボロボロになったカルルージュギルドに目を潤わせ、バイス·グレムリンに殴りかかった。

「私たちカルルージュ街の力を、思い知りなさい!」

 ドルフィンのパンチは、バイス·グレムリンの鳩尾に叩き込まれた。



「ふっ…!」

 今のところ、托生は優勢だった。

 彼の攻撃はボスを(ひる)ませ、そしてボスの攻撃は全て避けきっていた。

 そして今や、托生の燃える4連を受け、ボスはその巨大化を解かれてしまっていた。

「なっ…!?」

 ボスのインパクトも消えた。このままいけば、托生の勝利である。

 托生は、さらにボスに追い討ちをかけようとした。

 ボスは、絶体絶命の窮地に歯を食い縛った。

 だがそのとき、托生にも変化が起きた。

 瞳の銀色が点滅したとき──…

「…!」

 すると、托生の変身は途絶え、力を使いきった彼の体はそこに倒れてしまう。体は、ピクリとも動かなくなっていた。

 ──時間切れだ。

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