第70話『新たな絶望』
※その一方、カルルージュギルドでは…
空全体を支配する暗雲は、稲妻を轟かせていた。
托生とミィらを送り出したギルドには、どこか不安そうな雰囲気が漂っていた。
療養のギルドスタッフにゲバブルドを預けるフェイルにも、焦燥が強く顕れていた。
「大丈夫なんでしょうか…」
リェルは、不安そうに窓の奥を見やっていた。
「しかし、私たちは待つしかないわ…」
ドルフィンはリェルを落ち着かせるが、彼女自身も不安感を隠せない様子だった。
何かよくないことが起きそうだ──ギルド全体は静寂に沈んでいた。
だがその時、その沈黙を突き破るものがあった。
バンッと大きな音をたてて、ギルドのドアが開かれた。
「みなさん!すぐにここから出てください!」
エイヂルは息を荒げながら、ものすごい剣幕で必死に訴えかけた。
「どうしたの!」
フェイルはエイヂルに歩み寄る。
「カルルージュ街の防壁が破壊されています!」
「「「!?」」」
全員が外に目をやると、街を覆うようにある石の壁が破壊され、そこには巨大な穴が出来てしまっていた。
「こっ…これは!」
その時、街が地震のように大きく震え出した。
ギルドの食器や瓶が震えで落ちる。
ガンガンガンッ──街全体に警鐘が鳴り響く。
『警報!街にモンスターの群れが出現!繰り返す──』
モンスターの群れ──それに驚く暇もなく、街からは巨大な轟音が聞こえた。
「ヴォオオオオッ!!」
突如響くモンスターの咆哮は、危険を知らせるには十分すぎる情報だった。
『ジャイアント·ディアー(lv22)』
『サーベッジ·グリズリー(lv24)』
『バーバリアン·タイガー(lv25)』
さらに、それらを従える人影があった。
「ここなら、暴れ甲斐がありそうだな…」
ボロボロではあったが、それは確かにバイス·グレムリンであった。




